ウクライナ戦争をめぐる発言で、トランプ大統領がこれまでの姿勢を一転させるような主張を行い、さまざまな憶測を呼んでいる。
9月23日、国連総会に合わせてゼレンスキー大統領と会談した数時間後、トランプは自身のSNS「Truth Social」に投稿し、「NATOの支援が続けば、ウクライナは元の国境を取り戻すことが十分可能だ」と主張した。ロシアの3年半にわたる戦争を「無目的」と切り捨て、ロシア軍についても「張子の虎のようだ」と酷評した。さらに国内の混乱にも言及し、「プーチンとロシアは経済的に大きなトラブルに直面している。今こそウクライナが行動を起こすべき時だ」と述べた上で、「NATOが望む限り武器の供給は続ける」とウクライナ支援の継続を強調した。記者会見でもゼレンスキーを「勇敢な人物」と称賛し、ウクライナの戦いぶりへの敬意を表した。
こうした発言は、これまでのスタンスから見れば明らかな方向転換だ。トランプは今年2月、ホワイトハウスでの会談でゼレンスキーに「あなたにはカードがない」と冷たく突き放す一方で、8月のアラスカ米ロ首脳会談ではプーチン大統領をレッドカーペットで歓迎。ウクライナの領土割譲を前提とした包括的な和平合意を支持する考えを示し、停戦の即時実現を否定するなど、ロシア寄りと受け止められる発言を重ねていた。
米紙ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズは、プーチンが和平交渉を進めないことへの苛立ちが背景にあるとの見方を示す。複数の欧州関係者は、トランプが和平仲介の役割から手を引こうとしているとの見方を示しているという。
過去ロシア寄りの発言から「プーチンのアセット」疑惑も囁かれたトランプ大統領。突然のタフな姿勢変更にSNS上では憶測が次々と飛び交っている。「夜にはまた態度が変わるだろう」「最近会った人の話をそのまま繰り返しているだけだ」といった冷ややかな声がある一方、「ウクライナ側が何かを握っているのではないか」とする陰謀論的な投稿も少なくない。「ロシアのルーブルがついに底をついたのか」「ブダノフ(ウクライナ情報機関トップ)がエプスタインのファイルを入手したのか」「ゼレンスキーがトランプに何かを見せたのは確実だ」「チャールズ国王が国賓晩餐会でトランプと私的に話した可能性が高い」など、根拠のない推測も広がっている。
「プーチンが自分を弱くて冗談のような存在だと思っていると、ようやく気づいたのではないか」「トランプは常に自分を侮辱した相手に報復する」など、プーチンへの苛立ちが転換の背景にあるとする見方もある。その一方で、「トランプはプーチンと同じ嘘つきだ」「彼がプーチンを裏切ることはない」と懐疑的な声も根強い。さらに、「薬を変えたのでは」「認知症が進んでいるのでは」といった健康面への憶測も散見される。