ファイブポインツのグラフィティ消去のオーナーに7.4億円の賠償命令

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ブルックリンの地方裁判官は、2013年にコンドミニアム建設のため、クイーンズ・ロングアイランドシティ(Long Island City)にある施設、ファイブポインツ(5Pointz)のグラフィティを消去した不動産開発業者のオーナー、ジェリー・ウォルコフ(Jerry Wolkoff)氏に対して、グラフィティーを描いた21名のアーティストに、670万ドル(約7.4億円)の賠償金を支払うよう命じた。

裁判所の資料によると、21人のアーティストの作品45点に対し、個別に7万5千ドルから130万ドルの支払い金額が定められている。
グラフィティが描かれていた倉庫は、2013年にニューヨーク市からコンドミニアムの建設が承認され、2014年に解体された。現在は二棟のラグジュアリーコンドミニアムが建設中となっている。

2013年11月、地方裁判所で民事の陪審員は、ウォルコフ氏が、連邦法によって定められたアーティストの権利を侵害したとの判決を下した。地方裁判所のフレドリック・ブロック(Frederic Block)裁判官は、この侵害に対し、賠償額が生じるとしていた。

今回違反とされた法律は、ビジュアルアーティストライツアクト(Visual Artists Rights Act、 V.A.R.A.)として知られており、他人の所有物にあるパブリックアートは、広く認知された像であるなど、ある種の要件を満たす場合は、アーティストが作品を所有しない場合でも、その法的保護が受けられることとなっている。

アーティストの代理人、エリック・バウム(Eric Baum)弁護士は、「今回訴えを起こしたアーティストだけでなく、わが国全体におけるアーティストの勝利だ。」とCNNに対し、喜びを語った。
「ファイブポインツの文化的重要性と、21人の原告が創り上げたエアロゾルの作品価値は、芸術品として認めらている。この法律は、アーティストの尊厳を守り、アートワークは尊重されるべきだと明確になった。」と述べた。

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ニューヨークタイムズによると、グラフィティとアーティストが、V.A.R.A.の法によって保護されたのは、初めてのケースという。過去には服飾デザイナーが、グラフィティをモチーフにしたデザインを行い、知的財産権の侵害にあたると判決を下した例がある。

アーティストで、ファイブポインツのキュレーションを10年以上務めてきたジョナサン・コーエン(Jonathan Cohen)氏は、今回の判決を受け、「5POINTZZZZZZZZ 4EVERRRRRR!!!!」(ファイブポインツは永久に不滅だ!!!)と喜びのメッセージをインスタグラムに投稿した。

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5POINTZZZZZZZZ 4EVERRRRRR!!!!

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ファイブポインツのグラフィティとは

クイーンズのコートスクエア駅近くにあるファイブポインツは、「ストリートアートのメッカ」として、アーティストだけでなく、多くの観光客や地元住民らに親しまれていた。

倉庫を所有するウォルコフ氏は、1990年代から、20年以上に渡って、壁面を創作の場としてアーティストに解放してきた。世界中より集まったアーティストが、建物全体にグラフィティを描き、観光ガイドにも登場するなど、ニューヨークの文化的ランドマークとして発展してきた。インパクトのあるビジュアルは、映画やドラマ、ミュージックビデオなどにも度々登場している。

2013年8月、倉庫を解体し、ラグジュアリーコンドミニアムを建設する計画が、ニューヨーク市に承認された。

2013年11月19日、ウォルコフ氏は、コンドミニアムと小売の複合施設を建設する計画を明かした数時間後に、グラフィティは突然白いペンキで塗りつぶされた

アートが消去されたことがきっかけとなり、21人のアーティストは、ウォルコフ氏が、作品を保存する努力を怠り、事前予告なしに、「世界一の屋外エアロゾル・ミュージアム」のアートを消去したとして、訴訟が起こされていた。