X-energy、小型炉の安全審査を突破も株価は「IPO価格の半値割れ」

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X-energy(ナスダック:XE)は10月30日、小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」について、米原子力規制委員会(NRC)の安全審査が完了したと発表した。審査の対象は、化学大手Dowがテキサス州で建設を計画しているLong Mott発電所だ。

会社によると、NRCは最終安全評価報告書(FSER)で、この発電所と立地には、連邦規則10 CFR Part 50に基づいて建設を始めるための安全上の根拠があると結論づけた。5月には環境影響評価も終え、「重大な影響なし」との判断が出ている。建設許可に必要な安全と環境の2つの主要審査は、これでそろった。

それでも同日、X-energyの株価は6.58%安の10.93ドルで引けた。4月のIPO価格23ドルの半値を下回る水準である。規制面では大きな前進だが、市場はまだ事業の実現までの長い道のりと資金負担を織り込んでいる。

Xe-100とは何か

Xe-100は、水の代わりにヘリウムガスで炉心を冷やす高温ガス炉だ。燃料はTRISO-Xと呼ばれる小さな粒子状燃料で、これを球状の「ペブル」に収め、炉心に多数積み上げて使う。

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この燃料は、高温でも放射性物質が外に漏れにくい多層の被覆で守られている。会社は、この安全設計により、万一の際に住民の避難や防護をあらかじめ計画する「緊急時計画区域」を約400メートルにできるとしている。従来型の軽水炉では、米国の基準上、原則として約16キロメートルが必要となる。

このため、通常なら原発専用の広大な敷地が必要になる所を、Dowの巨大な化学工場の中に設置できるとしている。化学工場は電力だけでなく、高温の蒸気も必要とするため、高温の熱を取り出せるXe-100と相性がよいという。

Long Mott発電所の概要

  • 場所:テキサス州カルフーン郡、Dowのシードリフト工場敷地内
  • 事業主体:Dowの完全子会社Long Mott Energy
  • 設備:Xe-100(電気出力8万キロワット)を4基
  • 出力:合計で熱出力80万キロワット、電気出力32万キロワット
  • 用途:Dow工場向けの電力と高温蒸気
  • 資金:米エネルギー省の先進炉実証プログラム(ARDP)の対象

X-energyは、この計画を「米国史上初めて産業施設の中に置かれる系統規模の先進炉」と位置づける。ここでいう系統規模とは、工場内の小さな自家発電設備ではなく、電力会社の発電所に匹敵する規模という意味だ。

また、この申請は、高温ガス炉として初めて、NRCの性能重視型の許認可枠組みを使ったものでもある。この枠組みは、細部をすべて一律に確認するのではなく、事故の起きやすさや影響を分析し、リスクが高い部分に規制の力を集中させる方式だ。

ただし、SMRとして初の建設許可は、すでに9月29日にテネシー川流域開発公社(TVA)が取得している。X-energyの計画も、先進炉の許認可で重要な前例になる。

許可までに残る手続き

安全審査が終わっても、建設許可が出るまでにはまだ手続きが残る。主なものは2つだ。

  • 意見を聞く公聴会:地元住民などが意見を述べる機会。争点のない公聴会は9月22日にテキサス州ポートラバカで開かれ、書面での意見受け付けは10月6日に終わった。
  • 争点がある場合の審理:地元の環境団体San Antonio Bay Estuarine Waterkeeperが、事業を運営する会社が資金面で事業を担えるかを争っている。NRCの審判機関は1月に同団体の審理参加を認めたが、6月25日にはこの主張を退けた。ただし決定に対して上訴が出ており、問題はまだ完全には終わっていない。

つまり、技術面の大きな審査は通過したものの、許可の判断、地元での異論、資金面をめぐる争いという不確実性は残る。

許可はいつ出るか

NRCが建設許可を出す日程は、まだ確定していない。NRCの案件ページでも、判断時期は「未定」のままだ。

X-energyは8月の第2四半期決算説明会で、建設許可の最終審査は2026年後半に終わり、許可は遅くとも2027年第1四半期に出るとの見通しを示していた。今回の安全審査完了は、その見通しが現実味を帯びてきたことを示す。

審査の進み方も速い。NRCは2025年6月に審査日程を示し、最終安全評価の完了を2026年11月と見込んでいた。会社は10月30日に完了を発表しており、当初予定の11月より早い。申請は2025年3月31日に行われ、NRCが詳細審査に受理したのは5月12日だった。ただし、NRCとの事前協議自体は2018年から続いている。

過去の事例を見ると、安全審査の完了から建設許可までには約3か月かかっている。TerraPowerのKemmerer 1号機は2025年12月に安全審査を終え、2026年3月4日に許可を得た。TVAのClinch Riverも6月に安全評価を終え、9月29日に許可を得た。同じペースなら、X-energyの許可も2027年初めになり得る。

政府資金が事業を支える

X-energyの事業を支える最大の柱は、米エネルギー省の先進炉実証プログラム(ARDP)だ。これは政府と企業が開発費用を半分ずつ負担する仕組みで、X-energyは2021年に採択された。これまでの配分額は約11億ドルに達する。

さらに8月、クレイ・セルCEOは、エネルギー省から協力協定に最大10億ドルを追加するとの通知を受けたと明らかにした。追加分にも同じ半額負担の条件がつく。これにより、エネルギー省の負担額は最大21億1,500万ドルに膨らむ。

資金はすでに動いている。6月末までに、X-energyがエネルギー省から償還を受けた額は5億4,700万ドルに達した。現時点の売上高の大半は、この制度の下でのXe-100の設計作業だ。ただし、償還の対象はXe-100の設計と、テネシー州オークリッジの燃料工場TX-1に限られる。2号工場TX-2や研究開発センターは対象外のため、支出のすべてが半額で戻るわけではない。

規制改革も追い風

規制の側も動いている。大統領令14300は、NRCに対し新型炉の審査を18か月以内に終えるよう求めている。NRCは10月、関連する2つの規則を最終化した。

  • 10月22日:エネルギー省や国防総省の実証炉で得た解析・試験データを、商用炉の許可申請に活用できるようにする規則
  • 10月30日:争点のある審理を原則1年程度、単純な案件は約6か月で終える規則。ただし、施行後に始まる審理が対象で、Long Mottの係属中の案件に直接適用されるわけではない

政府が開発資金を支え、規制当局が審査期間の短縮を求める。原子力分野では、規制の運用が事業の行方を左右する構図が鮮明になりつつある。

好材料の日に株価は下落

10月30日のX-energy株の終値は10.93ドルで、前日比0.77ドル(6.58%)安だった。時間外取引では11.00ドルまでやや戻した。

IPO価格23ドルと比べると、終値は52.5%低い。上場来高値からは70.5%下落している。X-energyは4月、仮条件の上限を4ドル上回る23ドルでIPOを実施し、約10億2,000万ドルを調達していた。

下落の一因とみられるのが、IPO後のロックアップ(主要株主などの売却制限)解除だ。会社の開示によれば、役員や既存株主の大半に課された制限期間は、安値をつけた10月20日に終わる予定だった。売り圧力が意識されるなか、安全審査の完了という好材料だけでは株価を押し上げられなかった。

11月12日にQ3決算

X-energyは11月12日、米国市場の取引開始前に第3四半期決算を発表する。同日、東部時間午前8時(日本時間午後10時)から決算説明会を開く。

前回の第2四半期は、売上高と補助金収入の合計が5,460万ドルと、前年同期の2.5倍に拡大した。一方、営業損失は約1億1,000万ドルで、営業活動による現金流出は9,730万ドルだった。手元の現金と投資は19億ドルあり、借入はない。

今後の注目点

  • 建設許可の時期:「遅くとも2027年第1四半期」という見通しを維持できるか。安全審査の完了を受け、前倒しの余地があるか。
  • 次の大型案件:セルCEOは8月、大手電力会社との1GW規模の案件が最終段階にあると述べていた。10月19日には、電力大手American Electric Power(AEP)とインディアナ州で96万キロワット(Xe-100を12基)の計画を検討する共同開発契約を発表しており、これが予告された案件にあたるとみられる。ただし現時点では実現可能性を調べる段階で、確定した発注ではない。Amazonが開発資金を出す。
  • 燃料工場TX-1の進捗:6月末時点で建屋工事は約8割まで進み、第3四半期中の完了を目標としていた。予定どおり内装工事に移れたか。
  • 資金の減り方:設計作業や人員拡大で支出が増えるなか、19億ドルの手元資金がどの程度のペースで減るかは、株主にとって最大の関心事の一つだ。

このほか、Amazonと進めるワシントン州のEnergy Northwest案件は、2027年上期の建設許可申請を目指している。会社によると、商用案件の計画総量は約11.5ギガワットに上る。

許可は「建ててよい」だけ

建設許可が出ても、炉を動かせるわけではない。燃料を装填して運転するには、別途NRCの運転許可が必要だ。

X-energy自身も、今回の発表で複数のリスクを列挙している。

  • 顧客のDowが、実際に建設へ進むと決めるかどうか
  • 事業の資金調達と採算性の確保
  • 許可後の設計変更により、追加審査が必要になる可能性
  • 初号機ならではの想定外の不具合や、遅れ・費用増大
  • 先進原子力に対する政府の政策や資金支援の変化

ARDPの資金は、政府が大統領令で原子力拡大を後押しするなかで積み増された。だが裏を返せば、それは政策の風向きに左右されやすい収入でもある。安全審査の完了は、Xe-100にとって確かな前進だが、許可の先には建設、燃料供給、運転、採算という、いまだ実績のない段階が待っている。株価がIPO価格の半値を割り込んだのは、市場が「規制の通過」と「商用化の成功」を別のものとして見直しているからかもしれない。