米アマゾン・ドット・コム(Amazon)、米電力大手アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)、小型モジュール炉(SMR)を開発するX-energyは10月19日、インディアナ州の旧石炭火力発電所の跡地周辺に小型炉12基(合計96万kW)を置く計画を発表した。巨大テック企業が原子力の買い手として名乗りを上げてからおよそ2年。各社の計画は立地と資金・契約の枠組みを伴う段階に進んだが、米国では商業運転するSMRはまだない。
Amazonが資金を出し、電力も買い取る
X-energyとAEPは共同開発契約を結び、X-energyの小型炉「Xe-100」(1基8万kW)を4基ずつ3グループ、計12基置く計画の実現可能性を調べる。候補地はAEP子会社インディアナ・ミシガン・パワー(I&M)が持つ旧ブリード発電所の跡地周辺(サリバン郡)だ。同発電所は出力約45万〜50万kWとされる石炭火力で、1990年代初めに閉鎖された。隣接するワバッシュ川の浅瀬化により石炭の船便輸送が困難になったことが閉鎖の一因とされる。
Amazonは節目ごとに開発資金を出す。AEPの発表によると、建設に進めば長期契約で電力を買い取り、設備と運営の費用を契約期間中にまかなう意向だ。電力は地域の送電網向けに供給される。Amazonのジョシュ・ワイスマン(Josh Weissman)副社長は、費用は全額自社で負担し、ほかの需要家に転嫁しないと述べた。
この線引きは、隣の計画と比べるとわかりやすい。I&Mは跡地の隣で出力91.8万kWのガス火力の取得を計画し、4月に州の規制当局へ承認を申請した。こちらは需要家の電気料金で費用を回収する従来型の電源だ。
一方、事業費、原子力規制委員会(NRC)への申請時期、運転開始の時期は示されておらず、最終投資決定もまだ下りていない。
「既存の原発で今」「SMRで2030年代」の二段構え
2年前、AmazonはX-energyの約5億ドルの資金調達を主導し、2039年までに500万kW超の新設を目指すと表明した。ロイターは当時、テック企業の一連の契約を、原子力業界にとってこれまでで最もはっきりした需要の合図だと評した。インディアナ計画は、ワシントン州のCascadeに続く2件目にあたる。
| 企業 | SMRの主な相手 | 規模・時期 | 関与の形 |
|---|---|---|---|
| Amazon | X-energy | 2039年までに500万kW超。ワシントン州(Cascade)とインディアナ州の2件 | X-energyに出資。Cascadeは建設許可の申請準備中、インディアナは共同調査の段階 |
| Kairos Power | 2035年までに50万kW。初号機「Hermes 2」(5万kW)は2030年の運転開始が目標 | KairosとTVA(テネシー川流域開発公社)の電力購入契約を通じて調達。出資より電力の買い取りが主軸 | |
| Meta | TerraPower、Oklo | TerraPower:「Natrium」最大280万kW(初号機は早ければ2032年)/Oklo:最大120万kW(第1期は早ければ2030年) | TerraPowerに開発資金、Okloに電力の前払いと開発資金(2026年1月発表) |
| Microsoft | なし(SMRの電力購入・出資契約は未発表) | ― | 既存原発の再稼働が軸 |
足元の電力は、4社とも既存の原発から確保している。Amazonはタレン・エナジーのサスケハナ原発から約190万kW、Metaはビストラの既存原発から約260万kWを買い、Microsoftはスリーマイル島1号機の再稼働に賭ける。SMRはその先、2030年代の電源として「予約」している段階だ。
ボトルネックは「1号機」と「燃料」
米国では商業運転するSMRはまだない。TerraPowerは3月、軽水炉以外の商用炉として初めてNRCの建設許可を得たが、運転には別の許可が要り、完成は2030年の見込みだ。X-energyがダウのテキサス州化学工場向けに進めるXe-100初号機プロジェクトは建設許可の判断が2027年前半になる見通しで、まだ着工していない。ハイパースケーラー向けの案件は、どれもこうした1号機の成否を前提にしている。
一方、規制審査は以前より速くなっている。NRCはNatriumの安全審査を予定より約8カ月早く終えた。
より重い制約は燃料だ。多くの先進炉は、濃縮度5~20%の高純度低濃縮ウラン(HALEU)を使う。TerraPowerは2022年、唯一の商業供給元だったロシアから調達できなくなり、運転開始を2028年から2030年に遅らせた。
X-energyはHALEUの濃縮でセントラス・エナジーと長期契約を結んでいる。そのセントラスの新たな生産能力が動くのは早くても2029年で、当初の年産は約12トン。エネルギー省が見込む2030年の先進炉向け需要(年40トン超)の約3割にとどまる(関連記事「トランプ版『マンハッタン計画』前進も、原子力供給網はなお道半ば」)。ロシア産ウランの輸入を例外的に認める措置は2028年1月に終わる。各社の「2030年稼働」は、この燃料の空白期間をまたいで組まれている。
1号機の費用を誰が払うか
1号機の費用とリスクを誰が負うかも、契約の焦点になっている。Googleの案件では、TVAのドン・モール(Don Moul)CEOが、Googleが費用とリスクの一部を引き受けることで、一般の需要家に開発費を負わせずに済むと説明した。AEPのビル・フェールマン(Bill Fehrman)CEOも今回、資本面の保護と財務上の安全策が原発計画を進める条件だと強調した。ハイパースケーラーは資金と長期の買い取り約束で電力会社のリスクを肩代わりし、SMRの順番待ちの列に並んでいる。
X-energy株、2カ月で半値以下
市場の見方は厳しい。X-energy(ナスダック:XE)の株価は10月19日、前日比7%近く高い11.07ドルで寄り付いたが、上げ幅の約4分の3を失い、終値は10.54ドル(1.7%高)だった。Piper Sandlerは同日、投資判断「Underweight」を維持したまま、目標株価を9ドルから8ドルに下げた。8月13日には決算発表とエネルギー省の追加資金を受けて22.73ドルまで買われたが、その後2カ月で半値以下に下げ、4月のIPO価格(23ドル)も大きく下回っている。
2026年1〜6月期の売上高・補助金収入(9,800万ドル)のうち約9割はエネルギー省からで、民間からの収入はまだ小さい。
答え合わせは2030年前後
今後の主な日程は次のとおり。
- 2027年前半:X-energyの1号機(テキサス州)の建設許可の判断
- 2028年1月:ロシア産ウラン輸入の例外措置が終了
- 2028年前半:X-energyの燃料工場TX-1が商業運転を開始する予定
- 2029年以降:セントラスの新しいHALEU生産能力が稼働
- 2030年:Hermes 2とNatriumの運転開始目標
積み上がった巨大テックの「予約」が実際の電力になるかどうかは、1号機の稼働と国内の燃料生産の立ち上がりにかかっている。




