ジョージア州の上院決選投票、トランプ氏が共和党の脅威に?

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ジョージア州では1月5日に上院の2議席を争う決選投票が行われる。現職のデビッド・パーデュー(David Perdue) 議員(共和党)とジョン・オソフ(Jon Ossoff)氏(民主党)、21人の候補者が乱立した特別選挙の上位2名、現職のケリー・ロフラー(Kelly Loeffler)議員(共和党)とラファエル・ワーノック(Raphael Warnock)氏が対決する。

11月3日の一般投票の結果、共和党が50議席、民主党が48議席を確保した。共和党はジョージアの1議席を守ると過半数を維持することができる。一方、民主党は2議席ともに勝利すると、上・下両院で過半数(上院では副大統領に議長決裁票が属する)となり、バイデン政権の政策運営がより容易になる。

大統領選挙では、約500万票を手作業で再集計した結果、バイデン氏が約12,000票の僅差でトランプ氏を破った(トランプ陣営は再び再集計を求めている)。同州で民主党候補者が勝利するのは、1992年のクリントン元大統領以来。

ジョージア州はこれまで共和党の基盤とされてきたが、近年、アトランタや民主党寄りの郊外の人口が増加。白人の多い農村地区のほとんどは圧倒的にトランプ氏を支持したにももかかわらず、バイデン氏は、黒人人口の多いアトランタやその周辺地区でこれを覆す大量の票を獲得した。予備的出口調査では、黒人の10人中9人近くがバイデン氏に票を投じた。

これとは反対に、上院選ではパーデュー氏がオソフ氏を49.7%-48%で上回った。特別選挙は、共和党が合計49.3%(ロフラー氏25.9%、ダグ・コリンズ氏19.9%、その他共和党候補者4人が3.6%)、民主党は48.4%(ワーノック氏32.9%、その他民主党候補者7名が計15.5%)で、こちらも共和党が上回った。

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また大統領選を含まない決戦投票は投票率が低く、歴史的に見て民主党に不利だという。州全域を対象にした過去8回の決戦投票のうち、共和党が7回を制している。投票率が大幅に低下する傾向があり、2008年の上院決選投票では、一般投票に比べて43%低下。この時、共和党は得票率を12%を伸ばして勝利している。

なお、米内務省は2007年の調査報告で、1960年代にはじまったジョージア州の決選投票制度(第一回目の投票でいずれの候補者も50%に満たない場合に実施される)は、黒人政治家の影響を低下させ、白人の政治支配力を維持する手段として作られたと報告している。

トランプ支持者 投票ボイコット呼びかけ

トランプ大統領は、選挙で大規模な不正が行われたとの主張を続けており、現在も敗北を認めていない。これまで6つの接戦州で30件以上の訴訟を起こしてきたが、このうちの多くが退けられるか、取り下げるなどしている。いずれの裁判所も不正の事例を一件も認めていない。複数の重要州で選挙結果の認定された現在、結果が覆る可能性が失われている。

ジョージア州では、トランプ氏は、郵便投票の確認手続きに関する誤った主張を続けており、共和党のラッフェンスパーガー州務長官やブライアン・ケンプ知事を攻撃。勝利したのは自分だと主張している。

さらにトランプ陣営の弁護士、リン・ウッド氏は、共和党の両候補者がトランプ氏へ十分な協力をしていないと批判。支持者に投票のボイコットを呼びかけている。

これに対して、共和党では、トランプ陣営のこうした働きかけが、上院の多数を維持する機会を危険にさらしかねないと懸念する声が広がっている。

共和党の世論調査員でストラテジストのFrank Luntzs氏は、選挙が不正操作されているから投票は無意味だと主張し続けるなら、「深刻な結果」をもたらす恐れがあると警告。

トランプ氏の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏も、リン・ウッド氏らの主張を「ばかげている」と否定。「無視しろ」と呼びかけた。

トランプ支持者のFoxニュースの司会者らも、番組で懸念を表明した。

ローラ・イングラハム氏は24日の放送で、民主党はトランプ氏が選挙まで不正の主張を続けることを望んでいると主張。「すでに多くのアメリカ人がそれ(不正)を信じているのだから、トランプ大統領が世論に繰り返し訴える必要はない」と述べつつ、トランプ氏が1月までするべきなのは、ジョージア州の有権者に現状を保つよう説得することだと語った。

タッカー・カールソン氏は、トランプ陣営の主張を否定することを避けつつ、視聴者によく考えてほしい訴えた。

カールソン氏は「一部の共和党員が、共和党議員を敗北させるべきだと言っているのを耳にしていることだろう…。彼らには怒る理由がある。罰せられるべきだ」と前置きした上で、「問題は、残りの我々は罰せられてはならないということだ。だから、投票に行かないことを決断する前に、これが何を意味するの考えるべきだ」と語った。

調査報道が専門のジャーナリスト、Marcus Baram氏は、保守派に人気のSNS、パーラーなどで、投票ボイコットを呼びかける声が拡大していると報告している。

投稿には「投票をするな。汚職に加担するな」「ジョージアの友よ。投票機が不正に操作されているならば、どうして決選投票なんて信頼できるんだ」といったコメントや、ボイコットや、投票用紙に候補者の代わりにトランプ氏の名前を記載することを示唆するハッシュタグがシェアされている。

21日には、大勢のトランプ支持者らがアトランタに集まり「Stop the Steal」と称する集会を開催した。ツイッターにシェアされた動画では、ケンプ知事やラフェンスパーガー州務知事を「裏切り者」と非難するとともに、「これが起きることを許している共和党議員はすべて共犯者だ。われわれがお前たちを終わらせてやる」などと呼びかける様子が撮影されている。