NY市ライカーズ島刑務所2026年までに閉鎖へ。市議会で可決

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ニューヨーク市議会は18日、ライカーズ島(Rikers Island)内にある刑務所を2026年までに閉鎖する決議案を賛成多数で可決した。今後、ブルックリンやマンハッタン、クイーンズ、ブロンクス地区の4カ所に新たな矯正施設を建設する。

市の発表によると、ライカーズ島の施設には現在7,000人が収容されているが、犯罪率の減少に伴い、被収容者数を縮小できるとしている。同刑務所は1930年代に最初の施設をオープン。ニューヨークタイムズによると90年代のピーク時の被収容者は、2万3,000人に達した。

ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長は、「進路を変え、人々が長い間見落としてきたコミュニティーや個人の尊厳を認識すべき歴史的な機会だ。」と述べた。

劣悪な環境や過酷な処遇

同刑務所は、これまでに劣悪な施設の環境や、精神的および肉体的な暴力など、被収容者に対する過酷な処遇がたびたび問題視されてきた。

2010年に16歳で窃盗容疑で拘束されたカリーフ・ブラウダー(Kalief Browder)さんは、裁判が行われないまま、3年間拘留された。その間に、精神疾患を発症し、少なくとも6回の自殺未遂を図った。不起訴により施設から釈放されたが、2015年、22歳の時に自殺した
2014年に、米連邦検察局のプリート・バララ(Preet Bharara)検事の調査により、職員による10代の被収容者への暴力など、人権侵害が行われていることが明らかとなった。
2019年6月には、トランスジェンダーの女性レイリーン・ポランコ(Layleen Polanco)さんが独房に監禁中、てんかんの合併症で死亡した。ポランコさんは、500ドルの保釈金が払えなかったため、拘留されていた。

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近年は刑事司法制度の改革の一環として、刑務所の閉鎖を求める声が拡大しており、2017年にデブラシオ市長は同刑務所を閉鎖する方針を示した

反対の声も

マンハッタンなど4箇所に設ける矯正施設では、合計3,000人が収容可能だという。市によると「より安全で小規模、人道的」な施設となり、職業訓練や、メンタルヘルスサービス、教育機会も提供するという。

現在の被収容者を半数以下に削減する市の試算が、現実的でないという意見や、80億ドル(約8,700億円)のプロジェクト費用に異議を唱える声も上がっている。現在の施設を修繕する方がはるかに安上がりだと指摘する人もいる。新施設付近の住民らは、生活の質の低下を懸念し、反対している。

施設建設を反対する団体「No New Jails NYC」は、当日の議会で抗議活動を行った。資金は近隣の住民サービスに充てられるべきだと非難している。