米国防総省の小型攻撃ドローン大量調達計画「Drone Dominance Program(DDP)」で、選抜競技「Gauntlet」の第2ラウンド(Gauntlet II)の結果が 9月15日、公開された。国防イノベーションユニット(DIU)によれば、8月にコロラド州フォートカーソンで実施された今回の競技は「これまでで最も過酷なテスト」となり、19社・23機種が 1,858回の飛行評価を受けた。長距離部門で評価対象となった11機種はすべて15km到達に成功しており、これは第1ラウンド(Gauntlet I)で10km到達を果たした機体がわずか24%だったことと比べると、半年での性能向上を示す数字だ。国防総省はこの結果を受け、上位入賞企業から計約6万機規模のドローンを発注する計画としている。
Drone Dominance Programとは
DDPの起点は2025年6月6日、トランプ大統領が署名した大統領令14307「Unleashing American Drone Dominance」にさかのぼる。同大統領令は商業用ドローンの国内生産拡大と並行し、国防総省に「低コストかつ高性能な米国製ドローンを調達・統合・訓練する能力」の整備を求めた。これを受けヘグセス国防長官は7月、2026会計年度末までに陸軍の全分隊へ小型片道攻撃ドローンを配備するよう指示。DIUが主管するDDPは今年2月に始動し、総額11億ドル・4フェーズで2027年までに20万機超のAI 搭載ドローンを調達する計画を掲げている。
DDPの特徴は選抜方式にある。企業に実機を飛ばさせ、公開リーダーボードで性能を比較したうえでそのまま発注先を決める。第1フェーズ「Gauntlet I」は今年2〜3月にジョージア州フォートベニングで実施され、25社が参加、1億5,000万ドルで3万機(1機あたり約5,000ドル)の調達枠を争った。第2フェーズは6月にミシガン州キャンプ・グレイリングで予選(49社・約79機種)を行い19社に絞り込んだうえで、8月にフォートカーソンで本戦(Gauntlet II)が実施された。単価は長距離打撃型(Deep Strike)が 1 機 4,500 ドル、近接市街地型(Close Quarters Battle、CQB)が1機3,500ドルの固定価格となっており、最終フェーズでの目標単価3,000 ドルに向けて段階的に切り下げる設計だ。
Gauntlet II の上位企業一覧
Deep Strike(長距離打撃型)と CQB(近接市街地型)の各上位5社は以下の通り。
表1:Gauntlet II Deep Strike 上位5社
| 順位 | 企業名 | スコア | 概要 |
|---|---|---|---|
| 1 | Perennial Autonomy | 80.1 | 2023年設立。Google元CEOの エリック・シュミットが創業した対無人機・攻撃ドローン企業。迎撃機 Merops、偵察ドローン Bumblebee、攻撃ドローン Hornet を展開。 |
| 2 | Hyperscale | 70.9 | 詳細非公開の注目企業 |
| 3 | Neros | 69.8 | 自律化 FPV ドローン「Archer AI」と対無人機迎撃機「Bandit」を手がける。Gauntlet I・II の両リーダーボードに載った唯一の企業。 |
| 4 | Skycutter | 66.6 | 英国籍のドローン企業。ウクライナの SkyFall社と共同開発した光ファイバー操縦式FPV「Shrike 10-F」で Gauntlet Iを圧勝したが、IIでは4 位に転落。 |
| 5 | Swarm Defense Technologies | 66.0 | 2024年8月にFirefly Drone Showsからスピンオフした米国の防衛テック企業。ライトショーで培った大量のドローンを同時制御するスウォーム運用技術を軍事転用。 |
表2:Gauntlet II CQB 上位5社
| 順位 | 企業名 | スコア | 簡単な説明 |
|---|---|---|---|
| 1 | Neros | 88.1 | 自律化 FPV ドローン「Archer AI」と対無人機迎撃機「Bandit」を手がける。Gauntlet I・II の両リーダーボードに載った唯一の企業。 |
| 2 | ORQA US | 82.8 | 米国のドローン企業。Gauntlet IではFirestorm Labsと共同開発した「Firestorm Squall」にFPV技術を提供する形で参加。欧州戦線で実戦検証済みのUAS技術を持つ。2026年5月、米By Light社と合弁でOrqa U.S. LLC(カリフォルニア州)設立。中国製部品を排除した100%米国製ドローンを供給。 |
| 3 | XTEND Reality | 80.2 | イスラエル発祥、米国本社の防衛ドローン企業。2026年9月にNYSE 上場(ティッカー:XTND)。120機の STRIKER システムを納入・実演。 |
| 4 | Vector | 78.2 | 2024年設立。ユタ州に製造拠点を構え、Hammer/Mace などのドローンプラットフォームを展開。 |
| 5 | ModalAI | 74.3 | 米国の自律飛行ドローン企業。小型・軽量なAI 搭載ドローンを手掛け、Gauntlet Iでも上位入賞。 |
注目企業——Gauntlet I と II をまたいで見えてくる顔ぶれ
Gauntlet IIのリーダーボードでは、Deep StrikeでPerennial Autonomy、Hyperscale、Neros、Skycutter、Swarm Defense Technologiesの上位5社が、CQBでNeros、ORQA US、XTEND Reality、Vector、ModalAI の上位5社がそれぞれ発注対象となった。このうち Gauntlet I から続けて名前が挙がる 3 社の動きが興味深い。
Neros は唯一、両ミッションのリーダーボードに載った企業だ。Gauntlet I では2位(87.5点、首位の Skycutter と約12点差)、Gauntlet II では CQB 首位(88.1 点)・Deep Strike 3 位(69.8 点)となった。Gauntlet I受注分の Archer型ドローン 2,400機はすでに全量納品・検収済みで、実行力の高さが評価と重なっている。8月11日には、Sequoia Capital と American Strategic Technology Fund が共同主導する2億5,000 万ドルのシリーズ C(評価額25億ドル)を発表しており、出資者には Thiel Capital、Spark Capital、そして Figma CEOのディラン・フィールド氏も名を連ねる。自律化FPVのArcher AIと対無人機迎撃機 Bandit、「年間100万機生産」という目標も同時に打ち出した。
Perennial Autonomy は Gauntlet II で Deep Strike 首位(80.1 点)となった。2023年設立で、Google元CEO のエリック・シュミット氏が創業した企業だ。5月19日には統合対無人機タスクフォース(JIATF-401)経由で国防総省と3年・上限5億ドルのIDIQ契約を締結しており、迎撃機 Merops、偵察用クアッドコプター Bumblebee、中距離攻撃ドローン Hornet が対象となる。すでに欧州・中東(Operation EPIC FURY、CENTCOM 支援)での実戦投入実績がある。
今回の上位には、Sequoia CapitalやThiel Capital、Eric Schmidtらシリコンバレーの資本・人脈とつながる企業も並んだ。防衛ドローンが、政府調達だけでなく民間資本を呼び込む領域になっていることがうかがえる。
対照的なのがSkycutterだ。Gauntlet Iでは99.3点で圧勝し、「無名の英国企業が米国勢を出し抜いた」とも報じられた。ウクライナのSkyFall社と共同開発した光ファイバー操縦式FPVドローン「Shrike 10-F」で長距離・市街地の両ミッションを制し、2,500機超を受注。米国内(アトランタ)での製造拡大も表明していた。
ところがGauntlet IIではDeep Strikeで4位(66.6点)に後退し、CQBは圏外となった。さらに、Gauntlet Iの受注分について納品が進んでいないとの報道もある。ただし、過去の納品実績と今回の順位の関係は明らかになっていない。前回の圧勝からわずか半年で順位が大きく入れ替わったことは、この競技の競争の激しさを示している。
次の注目点
DIUは来月、再使用型の攻撃ドローンを対象とする「Gauntlet 2.5」(Mission C、予算約3,000万ドル)を開始する予定だ。Gauntlet 3はGauntlet IIから約半年後、最終ラウンドのGauntlet 4はさらにその半年後を見込む。
次の焦点は、Gauntlet 2.5以降でどこまで単価と量産能力を引き上げられるかだ。DDPはGauntletごとに競争を繰り返しながら、最終的に1機3,000ドルという価格水準を目指す。つまり米国防総省が試しているのは、単に「優れたドローンを選ぶ」仕組みではない。実戦で使える性能、米国内での量産能力、そして低価格を同時に満たす企業を競争によって絞り込む調達モデルそのものだ。






