米空軍は、無人航空戦力を大量配備する計画を急ピッチで進めようとしている。
中心にあるのは、有人戦闘機と連携するCCA(Collaborative Combat Aircraft、協調戦闘機)と、MQ-9リーパーの後継として位置づけられるMMA(Massed Modular Aircraft、大規模モジュール式航空機)、そして安価な巡航ミサイルFAMMだ。
500機のCCAと新たな航空戦力
9月14日、メリーランド州ナショナル・ハーバーで開催されたAir & Space Forces Association主催の「Air, Space & Cyber Conference」で基調講演に立ったトロイ・ミンク米空軍長官は、CCA配備のロードマップを示した。
ミンク長官は、高度に自律化されたシステムを大量に導入することで戦闘力を増大させる方針を示し、「2032年までに、我々は今とは大きく異なる戦力を持つことになる」と説明。その上で、2032年までに少なくとも500機のCCAを実戦配備する計画を明らかにした。CCAは、現在有人戦闘機が担っている任務の多くを遂行することが想定されている。
さらに、CCA 2機種の愛称も初めて公表された。General Atomics Aeronautical Systems(GA-ASI)の機体はFQ-42 Vengeance(ヴェンジェンス)、Andurilの機体はFQ-44 Fury(フューリー)と命名された。
両機は試作・開発段階では、それぞれYFQ-42A、YFQ-44Aと呼ばれてきた。米空軍は2025年3月、CCA Increment 1の機体番号としてこの2つの型式を指定している。
空軍はすでに両機を生産ラインに乗せており、ミンク長官は契約締結から初飛行まで18か月以内という、航空機開発として異例の速さを強調した。
CCAとは
CCAは、次世代の有人戦闘機開発計画Next-Generation Air Dominance(NGAD)ファミリーの一部に位置づけられる。
ジェットエンジンで飛行する大型の無人航空機で、有人戦闘機に複数機が「wingman(僚機)」として随伴する。AIを搭載したソフトウェアによって人間のパイロットと連携し、指示を受けながら状況に応じて自律的に行動する。対空戦闘、対地攻撃、電子戦、ISR(情報・監視・偵察)など、複数の任務が想定されている。
背景にあるのは、中国が構築してきた長射程ミサイルや高性能な防空システムなど、いわゆるA2/AD(接近阻止・領域拒否)能力への対応だ。多数の無人機を投入することで、有人機だけでは難しいセンサー、電子戦能力、兵器を大量に戦闘空域へ持ち込むことが狙いとなる。
「安価な機体を大量に作る」
CCAの大きな特徴は、有人戦闘機よりも低いコストを前提としていることだ。
量産時のコストは2,000万〜3,000万ドル程度と報じられている。9,000万ドルを超えることもあるF-35と比べ、大幅に安い水準を目指す。ただし、両者の価格には、エンジン、センサー、兵器、地上管制システムなどをどこまで含めるかによって差が出るため、単純比較には注意が必要だ。
コスト面の利点は機体価格だけではない。
CCAは自律化によって訓練の多くを仮想環境で行えるため、実機の飛行時間を抑えられる可能性がある。飛行時間が減れば、燃料費や整備費、部品交換の負担も軽減できる。
Increment 1は2社、Increment 2は9社
CCAプログラムは、複数の「インクリメント」に分けて段階的に開発が進められている。
Increment 1では当初、Anduril、Boeing、GA-ASI、Lockheed Martin、Northrop Grummanの5社が初期契約を獲得した。その後、量産を見据えた生産代表試験機の開発は、GA-ASIとAndurilの2社に絞られた。
GA-ASIのYFQ-42AとAndurilのYFQ-44Aは設計審査を経て、2025年に初飛行を実施した。現在はカリフォルニア州で開発試験が進められ、ネバダ州ネリス空軍基地のExperimental Operations Unit(EOU)では運用評価が行われている。
カリフォルニア州ビール空軍基地は、将来的な即応部隊の候補地として挙げられている。
一方、次の世代にあたるIncrement 2では、まだ最終的な勝者は決まっていない。
2026年8月、オハイオ州デイトンで開催された「Life Cycle Industry Days」で、空軍高官は9社がコンセプト・リファインメントの段階に入っていると説明した。空軍は2027年半ばごろまでに、その中から最大6案を次の段階へ進める計画だという。
Increment 2のエンジン問題
Increment 2で浮上しているのが、エンジンという目立ちにくいが重要な課題だ。
Increment 1では既存エンジンを転用することで、早期の飛行を実現した。しかし、Increment 2では機体の大きさ、航続距離、兵器搭載量、離陸性能など、より幅広い要求に対応する必要がある。既存エンジンだけでは、すべての設計に対応できない可能性がある。
空軍は現在、推力1,400〜1,600ポンド級の小型エンジンと、5,000〜6,000ポンド級の中型エンジンの開発を並行して進めているとされる。
中型エンジンについては、新規設計だけでなく、商用エンジンを大幅に改修する案も検討対象となっている。
小型エンジンは、巡航ミサイルに近い、安価で消耗を前提とした機体に向く。一方、中型エンジンは、太平洋方面で意味を持つ航続距離やペイロードを備えた、より高性能な機体につながる可能性がある。
つまり、Increment 2では「CCAをどこまで高性能化するか」という設計思想そのものが問われている。安価な消耗型システムを大量に作るのか。それとも有人戦闘機に近い能力を持つ高性能な無人機を作るのか。エンジンの選択は、この二つの方向性を左右する。
MMAも500機
米空軍の無人化・自律化構想はCCAだけではない。
ミンク長官が同じ講演で示したもう一つの柱が、MQ-9リーパーの後継となる「MMA」だ。
CCAが有人戦闘機と連携して戦闘空域で活動するのに対し、MMAはより安価で大量運用しやすい航空機として、センサーや兵器などを運ぶ役割を担う。
背景にはMQ-9の損耗もある。
ワシントン・ポストは、米国とイランの戦争開始以降、米軍がMQ-9リーパーを少なくとも45機失ったと報じている。これは開戦前の米軍保有機約185機の約25%に相当する。機体、センサー、兵器を含めた潜在的な損失額は13億ドルを超えるという。
空軍の最高近代化責任者であるクリストファー・ニエミ中将も9月3日の記者会見で、MQ-9Aをなお十分な数保有している一方、「我々が懸念するペースで機体を失っている」と説明した。
より大型で高性能なMQ-9Bへの更新も選択肢となり得るが、ニエミ中将は、約5,000万ドルのMQ-9Aの損失を問題視しているのであれば、さらに高価なMQ-9Bを失うことはなおさら避けたいという趣旨を述べ、慎重な姿勢を示した。
「8割で十分」な航空機
新しい計画では、MMAの試作機を1年以内に完成させ、2029年までに量産段階での配備を実現する。目標価格は機体単体で1機あたり1,000万ドルとされる。
ミンク長官は、MMAを2029年に100機、2032年には500機配備する計画を示した。
CCAとMMAを合わせると、2032年までに500機ずつ、計1,000機規模の新たな無人航空戦力が加わることになる。
ここで重要なのが、ニエミ中将が示した開発思想だ。
最先端技術を追い求めるのではなく、成熟した技術を使って「8割で十分」といえる水準を狙う。最新の飛行制御システムや特殊なエンジン、目新しい製造工程を避けることで、開発期間とコストを抑える。
公開された構想では、MMAはMQ-9に近い外観となり、長距離飛行に適した高アスペクト比の主翼を備えるターボプロップ機になる可能性がある。地上管制についてもMQ-9Aより自動化を進め、1人のオペレーターが複数機を操作できる体制を目指す。
なお、MMA計画にはMQ-9を開発したGA-ASIも独自設計「Wildfire」で参入を表明している。同社は、WildfireがMMAの要件に対応し、品質を落とさずに他社より数年早く納入できると主張している。
FAMMは「数万発」
さらに米空軍は、航空機だけでなくミサイルも大量化しようとしている。
ミンク長官はFAMMについて、2030年までに「数万発」規模を配備する計画を示した。
CCAが無人戦闘機、MMAが安価な無人航空機だとすれば、FAMMは大量投入を前提とする安価な巡航ミサイルだ。
多数のミサイルを同時に投入し、敵の防空網に対応能力を超える負荷をかけることを狙う。空軍のFY2027予算資料では、今後5年間で約2万8,000発を調達する計画が示されている。生産は2026年秋にも始まる見通しだ。
予算という条件
ミンク長官は講演の質疑応答で、この転換の難しさにも触れた。「今、空軍全体でこれまでで最大規模の近代化を進めている。まったく新しいシステムを配備している最中だ」。
長官によれば、財政調整法(reconciliation)を通じて追加予算を求めている大きな理由の一つが、既存装備と新型装備の「移行期の重複」にある。今使っているミサイルや機体の生産を止めるわけにはいかない一方で、より安く早く量産できる新型システムの立ち上げも同時に進める必要がある。「一方を止めてもう一方に切り替える、ということはできない。この移行の重なりを管理するには、単純により多くの予算が要る」と説明した。
もう一つの論点が、議会との継続的な調整だ。「予算の安定性がこれらの計画にとって非常に重要だ。我々は議会とも政権とも密に協議している。だが予算の安定性、そしてCR(つなぎ予算)が課題になっている」。議会との対話自体は好意的だとしながらも、新規参入企業と従来の防衛大手の双方が、必要な規模・コストで量産できる設備投資に踏み切るには、長期的な予算の見通しが欠かせないと述べた。
特に注目したいのが、CCAの生産能力についての発言だ。「CCAについて言えば、2032年までに500機という数字を話しているが、実際にはそれ以上作ることもできる。このプログラムは当初から、早く安く作れる単純な機体として設計されてきた。今、我々は、買える以上に作れる状況にある」。500機という数字を制約しているのは、製造能力ではなく予算だという趣旨だ。ただし長官は同時に、他のプログラムでは逆に産業側の生産能力そのものが制約になっている例もあると付け加えている。
計画は実現するか
CCAにMMA、FAMMを含めれば、米空軍が進めているのは単なる新型機の調達ではない。
有人戦闘機、無人戦闘機、半自律型航空機、巡航ミサイル、AIソフトウェア、分散基地、通信・整備網を組み合わせた、新しい航空戦力の構築だ。
ただし、計画の多くはまだ開発・試験の途上にある。
Increment 2では9社がコンセプト・リファインメントを進めているものの、最終的な候補企業や機体の大きさ、航続距離、エンジン、兵器搭載量は固まっていない。MMAも、1年以内の試作機完成と2029年の配備という異例のスピードが求められている。
さらに、既存システムから新システムへの移行には、旧型機の維持と新型機の調達が重なる期間が生じる。予算だけでなく、訓練、整備、通信、指揮統制など、運用面での適応も必要になる。
だからこそ空軍は、開発した機体を実戦的な部隊に早期配備し、実際の運用を通じて使い方を固めるアプローチを取ろうとしている。
今後の焦点は、いくつかの具体的な節目に絞られる。Increment 2で9社のうちどの設計が2027年半ばまでに絞り込まれるか。MMAの試作機が、目標通り1年以内に飛ぶかどうか。FAMMが、予定通りこの秋に生産へ入るかどうか。そして、財政調整法を含む予算の安定性が、議会との調整の中でどこまで確保されるか。
2032年に500機、500機、数万発という数字を実際の戦力に変えられるか。今後1〜2年は、その生産能力と予算、そして運用方法が固まっていく期間になる。






