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最低賃金や店のトイレ使用 デリバリーワーカーの権利保護へ NY市で法案可決

ニューヨーク市議会は23日、デリバリーワーカーの最低賃金の確立やトイレへのアクセスを保証するなど、待遇改善を定める複数の法案を可決した。

ニューヨーク市で働くデリバリーワーカーは8万人を超え、この多くは移民だといわれる。パンデミックで屋内飲食が規制される間、日夜消費者に食事を届け、外食産業を支える配達員たちの待遇の改善を求める声が広がっていた。

先日、ハリケーン「アイダ」が市を直撃した際、1人のデリバリーワーカーが冠水した道路で自転車を引きずる姿が撮影された動画には、待遇を問題視するコメントが多く寄せられた。

昨年12月から今年4月にかけて、500人のデリバリーワーカーを対象に実施された調査では、42%が賃金の過少払いまたは未払いを経験し、半数近くが仕事中に事故に遭ったと報告した。このうちの75%は、治療費を自腹で捻出した。さらに54%が盗難にあい、30%が盗難被害の最中に暴行を受けたと報告した。

調査ではまた、市内のデリバリーワーカーの1時間あたりの賃金の中央値は、チップ抜きで7.94ドル、チップ込みで12.21ドルとなり、市の最低賃金15ドルを大きく下回った。

一連の法案には、フードデリバリー企業が配達バッグを無料で提供することや、配達員自らが、企業側によるペナルティーなく配達距離やルートに制限を設けることを可能とする内容が盛り込まれている。

賃金に関しては、消費者および労働者保護局が労働環境を調査した上で、一配達あたりの最低賃金を確立する。同局はまた、賃金の支払いに関して手数料の徴収を禁じるなど、支払いに関する基準も明確化する。

レストランには、ピックアップに訪れた配達員に対してトイレの解放を義務付ける。パンデミックで需要が増加する中、多くのレストランがトイレの使用を禁止し、問題が顕在化していた。

法案は移民のデリバリーワーカーの共同体、Los Deliveristas Unidos (LDU)の働きかけによって作成された。

コーリー・ジョンソン市議会議長は、投票後の会見で、法案は「彼らが受けるにふさわしい権利」と説明。「ニューヨークは、デリバリーワーカーが搾取されないことを確かなものとする全米で初めての都市になる」と述べ「人々が尊厳と敬意を持って扱われ、賃金を受け、大企業によって搾取されないことを確実にする」と話した。

デブラシオ市長は法案を支持しているが、いつ署名するかはまだ決めていないという。

法案通過を受け、デリバリー大手のGrubhubは支持を表明。同社の広報はガーディアンに宛てた声明で、法案は「ニューヨークのレストランと住人のために日夜働くデリバリーワーカーを支援するための、常識的なステップ」と述べ「生活賃金を受けとり、トイレにアクセスできるというのは、良い考えなどではなく、正しいことだ」と発表した。

一方、ニューヨーク市は2つの法案を巡ってデリバリー企業と係争を繰り広げている。

今年8月、手数料の上限規制について、市議会で恒久化する法案が可決されると、Grubhubとドアダッシュ、ウーバーイーツの3社は、マンハッタンの連邦裁判所に市を提訴。規制は「憲法違反」で、最終的に消費価格の高騰とレストランの利益の低下を招くと反発した。

市はパンデミック中の措置として、デリバリー企業が1配達あたりにレンストランから徴収できるの手数料の上限を15%とし、マーケティング費などその他の費用については5%を超えてはならないと定めた。

法案検討に際して開いた公聴会では、デリバリー企業から30%徴収された話や、注文につながらない電話からも料金を取られたといった苦情が寄せられていた。

これとは別に、ドアダッシュは先週、消費者の名前や連絡先などの情報をレストランに共有することを定めた法案についても、訴訟を提起している。

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