「おかしな二人」や「裸足で散歩」などの名作で知られる米劇作家のニール・サイモン氏（Neil Simon）が26日、肺炎の合併症のため、マンハッタンにある病院で亡くなった。91歳だった。
サイモン氏は、20世紀を代表するアメリカ喜劇作家の一人。自身の体験に基づき、都会で懸命に生きるミドルクラスの人々を題材に、数々の名作を世に送り出した。
これまでにトニー賞4回、1991年の「ヨンカーズ物語」(Lost in Yonkers)でピューリッツァー賞、ケネディ・センター名誉賞(1995)、アメリカ脚本家組合賞、米喜劇生涯功労賞など多くの賞を受賞。
1983年にはサイモン氏の功績を讃え、ブロードウェイのアルヴィン劇場が、ニールサイモン劇場(Neil Simon Theatre)へと改称された。
生涯で30作品以上の劇の脚本を手がけており、「おかしな二人」や「裸足で散歩」、「サンシャイン・ボーイズ」など多くの作品は、映画やテレビ作品にもなった。
とりわけ半自叙伝とされるブライトン・ビーチ3部作(「思い出のブライトン・ビーチ」(Brighton Beach Memoirs) 「ビロクシー・ブルース」(Biloxi Blues)「ブロードウェイ・バウンド」(Broadway Bound)はサイモン氏のベスト作品と称される。
ニール・サイモン氏 伝説の劇作家
1927年7月4日、独立記念日にニール・サイモンはブロンクスで生まれ、ワシントンハイツで育った。大恐慌時代に、労働者階級のユダヤ系家庭で主に母親と兄のダニー(Danny)に育てられ、生活は決して豊かではなかったという。
ニューヨーク大学とコロラド大学で学び、従軍した後に、1940年代に兄とラジオ劇の執筆をスタートする。その後、テレビ番組の脚本を手がけた。
兄弟は、1950年代にコメディスターのシド・シーザー(Sid Caesar)出演の「Your Show of Shows」の脚本チームに加わる。共同脚本を手がけた中には、若きウディ・アレンもいたという。
1961年に「カム・ブロー・ユア・ホーン」(Come Blow Your Horn)でブロードウェイデビューを果たす。
1963年に上演された「はだしで散歩」(Barefoot in the Park)は、最初の妻ジョアンさんとの出会いを元に描かれた。同劇は、ロバート・レッドフォードとエリザベス・アシュレイ(Elizabeth Ashley)の主演で1970年に「裸足で散歩」として映画化された。
1965年のコメディ劇「おかしな二人」(The Odd Couple)は、性格が全く異なるスポーツライターと、フォトグラファーが、離婚問題を抱えながらルームメイトとして暮らす物語は、兄の経験をもとに描かれた。ウォルター・マッソー(Walter Matthau)とアート・カーニー(Art Carney)を主役に起用し大ヒットを記録。トニー賞の作家賞(同賞は、現存しない)を受賞した。
同劇は、マッソーとジャック・レモン(Jack Lemmon)の共演で1968年に映画化が実現した。また1970年から1975年にかけてテレビ化されている。2005年には、マシュー・ブロデリック(Matthew Broderick)とネイサン・レイン（Nathan Lane)を主役にブロードウェイで再演され、再び大ヒットを記録した。
1966年から1967年の間には、「はだしで散歩」のほか、「おかしな二人」、「スイート・チャリティー」(Sweet Charity)、「スター・スパングルド・ガール」(The Star-Spangled Girl)の4作品が同時期に上演されるなど、売れっ子劇作家として活躍した。
1997年公開のマンハッタンを舞台とした映画「グッバイガール」(The Goodbye Girl)では脚本を手がけている。
「ヨンカーズ物語」(Lost in Yonkers)では、トニー賞とピューリッツァー賞を受賞するなど成功を収めた。
その後の「ジェイクの女たち」(Jake’s Women)「23階の笑い」(Laughter on the 23rd Floor)、「求婚－プロポーザルズ－」(Proposals)などが興行的には成功に至っていない。1995年にはオフブロードウェイで「ロンドン・スイート」(London Suite)が上演されたが、短期で上演は終了した。2003年の「ローズのジレンマ」(Rose’s Dilemma)は、プレビュー中に主演が降板させる事態も起きるなど、ヒットに恵まれない時期が続いた。
私生活では生涯で5度結婚している。20年間連れ添った最初の妻Joan Baimさんをガンで亡くした後は、女優のMarsha Masonさん、Diane Landerさんと2度結婚している。