ヘンリー王子

米連邦最高裁のサミュエル・アリート判事は、ノートルダムロースクールがローマで開いた会合で行ったスピーチで、人工妊娠中絶の権利をめぐる最高裁判決を批判したヘンリー王子やジョンソン英首相らをジョークにして、会場から笑いを誘った。

最高裁は先月24日、女性の人工妊娠中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド」判決を破棄する判決を下した。判決を支持した保守派のアリート判事は、意見書で、州には中絶を規制または禁止する権限があり、憲法はこれを禁じていないと説明。ロー判決は権限を不当に扱ったものだとし、「これらの判決を覆し、この権限を国民と選出された代表者らに返還する」と述べた。

アリート判事が出席したのは「宗教の自由サミット」と銘打った会合で、開催は今年が2回目。スクールはホームページで「宗教の自由に関する思想的指導者らの年次集会」と会合を説明している。

アリート判事はスピーチの中で、信仰を拒否する人口の割合が著しく増えており、これが信教の自由に重大な影響をもたらしているとした上で、信教の自由の保護の重要性を人々に説くことが困難になりつつあると主張。また、宗教または、一部の分野で優勢な、新たな道徳コードに反する伝統的な宗教的信念に対して敵意が高まっているとも語った。

さらに、法学者の間では、宗教が特別な保護に値しないという見解が支配的だと説明。自由社会において、スポーツや趣味などの追求は自由であるべきだと述べる一方で、これらが宗教と同等の保護に値するのだろうか、と疑問を投げかけた。

その後、先日の中絶判決に言及。「アメリカの法律に口出しをしても良いと考えている一連の外国指導者らから非難を受けた史上唯一の判決」と振り返った上で、「このうちの一人が、ボリス・ジョンソン英首相だが、代償を払わされたようだ」と、今月辞任に追い込まれた首相を冗談めかした。

続けて、マクロン仏大統領とトルドー・カナダ首相の名を挙げつつ、「何よりも傷ついたのは、サセックス公爵が判決をロシアのウクライナ侵攻と比較したことだ」と、ヘンリー英王子に触れると、会場から笑いが起きた。「誘惑はあるが、私は他国の問題については話すつもりはない」と皮肉を述べ、「ますます世俗化する社会において、宗教の自由を守る戦いに勝利するためには、実定法以上のものが必要になる」と締めくくった。

ヘンリー王子は先日、マンデラ国際デーの国連総会で演説した際、気候変動などの諸問題に触れる中で「ウクライナの恐ろしい戦争からここ米国における憲法上の権利の後退。民主主義と自由に対する世界的な暴力を目の当たりにしている」と警鐘をならした。「憲法上の権利」は妊娠中絶の権利を指したもので、演説後、保守派を中心に、英国君主の子孫が米国で民主主義に言及したことや、国内問題を批判したことに反発する声が上がった。