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インテル株暴落で米政府の114億ドルが消えた──それでも含み益は196億ドル

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米半導体大手Intel(NASDAQ: INTC)の株価は10月30日(米国時間)、前日比28.58%安の65.76ドルで取引を終えた。前日に発表した10-12月期(Q4)の業績見通しが市場予想を大きく下回ったことが嫌気された。AP通信などは、1974年以来最悪の1日だったと報じた。

米商務省は2025年8月、Intel株4億3,330万株を1株20.47ドル、総額約89億ドルで取得した。当時の発行済み株式の約9.9%にあたる。10月30日の終値で計算すると、この持分の評価額は約285億ドルとなり、前日終値92.07ドル時点の約399億ドルから1日で約114億ドル減った(当サイト試算)。それでも取得額に対する含み益は約196億ドルあり、評価額は取得額の約3.2倍を保っている。

決算のポイント

7-9月期(Q3)は会社の見通しを上回ったが、10-12月期の見通しが市場予想を大きく下回った。

  • Q3売上高:165億ドル(前年同期比21%増)
  • Q3 EPS:GAAPで0.60ドル、非GAAPで0.52ドル
  • Q3粗利率(非GAAP):44.1%
  • Q4売上高見通し:150億〜160億ドル(市場予想は171億ドル、LSEG集計)
  • Q4 EPS見通し:GAAPで0.10ドル、非GAAPで0.25ドル(市場予想は0.43ドル)
  • Q4粗利率見通し(非GAAP):38%。うち約2ポイントはイスラエル工場の影響

部門別では、データセンター向け(DCAI)が前期比10%台半ばの増収を見込む一方、PC向け(CCPG)は前期比20%超の減収を見込む。リップブー・タン(Lip-Bu Tan)CEOは決算説明会で、製造の供給不足、かつてないメモリー不足、それに伴うPC需要の弱さを当面の課題に挙げた。

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なぜ売られたのか

株価を押し下げた主因は、イスラエル工場の事故とPC需要の低迷だ。そこにサーバー向けの供給の制約も重なっている。

イスラエル工場の事故:10月上旬、Intelのイスラエル工場(Fab 28)で爆発事故が起き、作業員2人が死亡、1人が重傷を負った。タンCEOは「不幸で悲劇的な事故」と述べた。工場は約2週間止まり、10ナノメートル品、主にサーバー向けチップの出荷に影響が出ている。最高財務責任者(CFO)のデビッド・ジンズナー(David Zinsner)氏は、10-12月期の影響を売上で約3億ドル、粗利率で約2ポイントと説明した。1-3月期にも同程度の売上影響が残る見通しで、2四半期の合計では約6億ドルになる。ただし会社は、まだ初期の評価だとしている。

PC需要の低迷:メモリー価格の高騰と供給の逼迫を受け、PC市場はここ2カ月で急速に冷え込んだ。ジンズナー氏は、2026年のPC出荷台数が約12%縮小し、下半期は20%超の減少になると説明した。2027年も約10%の減少を見込み、顧客の在庫調整は10-12月期と1-3月期に集中するという。米調査会社Moor Insights & Strategyのアンシェル・サグ(Anshel Sag)氏は、PC部門はまだIntelの収益の大きな柱で、影響が短期的でも当面の業績には響くとの見方を示した。

供給の制約:Intelは、Intel 3の生産の立ち上げに加え、EMIBパッケージングに使う先進的な有機基板の業界全体での不足も、生産拡大の制約になっていると説明した。タンCEOは、今四半期は強い顧客需要に応えられなかったと述べた。

18Aと外部顧客

最先端プロセス「Intel 18A」は、PC向けとサーバー向けの自社製品で量産が進んでいる。18Aの歩留まりは四半期で2桁の率で改善し、ウェハーの生産量も想定を上回った。コストは1-3月期から約40%下がったという。

外部からの受託生産では、改良版の18A-Pで「非常に戦略的な顧客」数社と協議を進めている。タンCEOは、今後2四半期以内に顧客数社を発表できるとの見通しを示した。ただしこの発言は、先端パッケージングの説明の中でのものだった。発表されるのが18Aの受託顧客かどうかは、はっきりしない。次世代の14Aについては、10月に一部の顧客へ設計キット(PDK 0.9)を提供済みだ。

アナリストの反応

D.A. Davidsonは投資判断を「買い」から「中立」に引き下げた。「まだ直っていない」と題したレポートで、弱さがこれほど大きい中では現在の株価水準を正当化しにくいと指摘した。Morningstarのブライアン・コレロ(Brian Colello)氏は、Intelの適正株価を105ドルから85ドルに引き下げた。CPU需要の弱さに加え、メモリー価格の上昇がPCの購入を抑えている点を理由に挙げている。

株価は52週高値の142.35ドルから53.8%低い水準まで下がった。2024年8月の決算翌日にも約26%下落し「1974年以来最悪」と報じられたが、今回はそれを上回った。

政府持分はいくらになったか

時点株価政府持分の評価額
取得時(2025年8月)20.47ドル約89億ドル
52週高値142.35ドル約617億ドル
10月29日終値92.07ドル約399億ドル
10月30日終値65.76ドル約285億ドル

※評価額は4億3,330万株×株価で計算した当サイトの試算。

52週高値からの目減りは約332億ドルに達する。

なお、政府の持分比率は取得時より下がっている。Intelは2026年8月に230億ドルの株式を追加発行し、10-12月期の希薄化後の株式数を54.4億株と見込む。単純計算では、政府の4億3,330万株の比率は約8%になる(当サイト試算。政府が増資に応じたかは未確認)。

政府はこのほか、Intelがファウンドリー事業の51%以上を保有しなくなった場合に、最大2億4,100万株を1株20ドルで取得できるワラントを持つ。ただしIntelは、このワラントは現在行使できず、今後も行使できるようになる見込みはないとしている。【関連記事】米政府が持分を取得した企業リスト

逆向きの会計:Intelには評価益

今回の暴落は政府の持分を大きく目減りさせた一方で、Intelの会計上の利益は押し上げる可能性がある。

政府が取得した株式の一部は、Intelが「Secure Enclave」(国防向け半導体の事業)の資金を受け取るたびに政府へ引き渡される仕組みになっている。まだ引き渡していない株式は「エスクロー株式」として預託され、Intelは将来渡す義務をデリバティブ負債として時価で評価している。

そのため、株価が上がれば負債が膨らんで損失、下がれば負債が縮んで利益になる。2026年7-9月期には、エスクロー株式の時価の変動で約10億ドルの利益を計上した。一方、1-9月の累計では株価上昇の影響が大きく、約126億ドルの損失となっている。

9月26日時点で、引き渡していないエスクロー株式は1億3,200万株、関連する負債の時価は137億ドルだった。このうち6,600万株は発行が確定した扱いで、基本EPSの計算に含まれている。残る6,600万株は商務省によるSecure Enclaveの資金支払いを条件としており、条件を満たすまでEPSの計算から除かれている。

10月30日の終値65.76ドルが年末まで続けば、エスクロー株式の負債はさらに縮み、Intelの10-12月期のGAAP利益を押し上げる計算になる。ただし、四半期中に政府へ引き渡す株式の数や年末の実際の株価によって、金額は変わる。本業の見通しが悪化しても、GAAPの利益が見かけ上よくなる可能性がある点には注意が必要だ。

NVIDIAと半導体株への波及

Intelに出資したNVIDIAも影響を受けた。NVIDIAは2025年9月、Intel株2億1,500万株を1株23.28ドル、総額50億ドルで取得する契約を結び、同年12月26日に払い込みを終えた。10月30日の下落で、NVIDIAが持つIntel株の価値は約57億ドル減った計算になる(当サイト試算)。

売りは半導体株全体に広がった。TheStreetによると、VanEck半導体ETFは取引時間中に約8%安、AMDは約12%安、NVIDIAは約5%安となった。S&P 500のテクノロジー部門は5%近く下げた。AP通信によると、ナスダック総合指数は2.9%安、S&P 500は1.8%安で、S&P 500は6月以来の大きな下げとなった。

同じ週にはAlphabetやAmazonの決算も嫌気された。AI投資の回収を疑う見方が広がるなか、Intelの弱い見通しが半導体・AI関連株の売りを加速させた。

今後の注目点

  • エスクロー株の評価損益:12月末の株価次第で、10-12月期のGAAP利益が大きく変わる
  • 外部顧客の発表:タンCEOは2四半期以内に数社を発表できるとした。18A-Pの外部受託を獲得できるかが焦点
  • イスラエル工場の再開:会社は週末までの生産再開を見込むが、1-3月期にも約3億ドルの売上影響が残る
  • 政府・NVIDIAの対応:株主としての発言や関与に動きがあるか
  • キャッシュフロー:ジンズナーCFOは、2027年は設備投資を大きく増やすため、フリーキャッシュフローはプラスにならない可能性が高いと述べた