トランプ有罪評決 専門家は検察の「法的問題」を指摘

74

不倫関係を持ったポルノ女優に支払われた「口止め料」を違法に処理したとして有罪評決を受けたトランプ氏は31日、マンハッタンのトランプタワーで会見を開き、上訴する計画を明確にした。

「我が国の国民は、これがでっち上げだと知っている。彼らはそれを理解している。ご存知の通り、彼らは本当に賢い。それはもう、なんだかすごいことだ。だからわれわれはこの詐欺を上訴するつもりだ」。

4月15日からマンハッタンにある刑事裁判所でスタートした裁判は、28日に最終弁論を終えた。29日の評議開始から2日目にして、12人の陪審員は34の「業務記録を改ざんした罪」すべてについて有罪を認める評決に達した。トランプ氏は米国大統領経験者として初めて被告人となり、初めて有罪評決を受けた。

量刑は7月11日に決まる予定。CNNによると、トランプ氏はそれから30日以内に控訴を通知しなければならない。典型的なケースでは、弁護側は通知後、控訴意見書や裁判記録など関連文書の提出といった手続きに6ヶ月間を要する。弁護側の手続きが完了すると、検察側には、回答するために30日間が与えられる。その後、5人の判事からなる下級審の控訴部が双方の口頭弁論を聞き、書面による判決を下す。これには期限がなく、数ヶ月間を費やす可能性があるという。控訴部がトランプ氏の申し立てを棄却し、陪審の評決を維持した場合、トランプ氏はニューヨークの最高裁に相当する控訴裁判所に訴えることができる。

マンハッタン地区検察は有罪評決を勝ち取ったものの、当初から難解な法理論の組み立てに問題点が指摘されていた。一部の専門家から、一審の判決が控訴に耐えうるか疑問視する声が上がっている。

Advertisement

ロヨラ大学のロースクール教授でMSNBCのコラムニスト、ジェシカ・レビンソン氏は31日のコラムで「マンハッタン地区検事のアルビン・ブラッグの事件は曲がりくねっている」とし、有罪評決は「ラッキー」と評した。

レビンソン氏によると、検察は、それ自体は軽犯罪である業務記録の改ざんを重罪に引き上げるために「(トランプ氏には)騙す意図と別の犯罪を犯す意図があり、その犯罪を隠蔽するために」改ざんしたことを陪審に認めさせる必要があった。

その「別の犯罪」として検察が持ち出したのは、「違法な手段」によって選挙を促進してはならないとするニューヨーク州の選挙法だった。さらにその「違法な手段」については、元弁護士がポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏に支払った金額が、連邦選挙法に違反したというものだった。検察はこの点について、当時トランプ氏の弁護士だったマイケル・コーエン氏がダニエルズ氏に支払った金はトランプ陣営に対する寄付とみなされ、連邦選挙法が定める上限を超えたとした。

レビンソン氏は、検察は陪審員に「法の森」を抜けて有罪というゴールに明確に導く必要があったが、彼らが示した道は「きれいでも整頓されたものでもなかった」と批判。連邦選挙法違反をニューヨーク州法に基づく”違法な手段”として利用できるかは疑問があるとし、トランプ氏は上訴に際してこうした「実際の法的問題」を持ち出すだろうと予想した。

元連邦検察官でCNNのリーガル・アナリスト、エリー・ホニグ氏は、ニューヨーク・マガジンへの寄稿でバイアスやデュープロセスの問題を示唆するなど、検察の手法に否定的な見解を示した。

ホニグ氏は、ニューヨークでは業務記録の改ざんは、菓子の万引きと同程度のクラスに分類される軽罪であることに加え、その時効は2年間だと述べつつ、これを重罪に「膨らませ」、「電気ショック」を与えて時効から復活させるために、検察は「別の犯罪を犯す意図」の存在を主張したと説明。

続けて、検察は「別の犯罪」について、連邦選挙法への違反を組み込んだニューヨーク州法違反としたが、違法な手段が実際に何であるのか特定を拒み、判事も「最終弁論の直前まで検察に強制することを拒否した」と指摘。「公判前に被告人に告発内容を通知するという憲法上の義務」の履行に疑問を呈した。

また、裁判を担当したフアン・マーチャン判事が2020年選挙で民主党およびバイデン氏の選挙運動に35ドルを寄付していた点にも言及。「ニューヨークの判事に対してあらゆる選挙献金を禁じるルールへの露骨な違反」としたほか、2022年にマンハッタン地区検事に選出されたブラッグ検事についても、当時トランプ氏を100回以上訴えたと誤って主張するなど「トランプ狩りの能力」を豪語していた点に触れた。

ホニグ氏は、マンハッタン検察の職員らは、起訴について「奇怪な訴追メカニズムを含む、さまざまな法的欠陥」があることから、「ゾンビ事件」と呼んでいたとも説明。「最終的にはその作成者を攻撃するかもしれない」と今後の展開について考えを語った。