ゾウは「人にあらず」NY州裁判所

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ニューヨーク州控訴裁判所は14日、ブロンクス動物園のゾウ「ハッピー」は違法に拘束されており、より自然に近い環境に移すべきだとする動物保護団体「Nonhuman Rights Project(NhRP)」の主張を5対2で退けた。

同法廷のディフィオーレ長官は多数派の意見書で、裁判所に提示された問題は、NhRPがハッピーに代わって人身保護令状による救済をもとめることができるかどうかだと説明。ゾウは知的で、思いやりを受けるべきだが、ハッピーは「”人”ではない非人間の動物」で、人間の自由権の保護を目的とした人身保護令状請求権は適用されない、と理由を述べた。

長官はまた、人身保護令状請求権を認めた場合、「現代社会を不安定にする巨大な影響を与えるだろう」と指摘。「そのような決定は、ペットの所有権や介護動物の使用、その他の形式の仕事への動物の使用の根底にある前提に疑問をなげかけるものだ」と述べた。

一方、ニューヨークタイムズによると、反対にまわったウィルソン判事は、法廷には、自由を請願するハッピーの権利を認める義務があると主張。「ハッピーは野生動物であり、本来はケージに入れられて展示されるものではない上に、われわれが他者に与える権利は、社会としてわれわれが何者であるかを定義するからだ」と意見を述べた。

同じく反対したリヴェラ判事は、ハッピーは彼女にとって不自然な環境に置かれ、自己決定的で野生の自律したゾウとしての本来あるべき生活を送ることが許されていないと指摘した。

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ニューヨークの最高法廷で敗訴したものの、NhPRは、カリフォルニア州フレズノにある動物園で飼育されている3頭のゾウに関しても、人身保護令状による救済を認めるよう求めているという。

ハッピーは1970年代にタイで生後まもなく捕獲されたため、野生としての生活をほとんど経験していない。ハワイの動物園で数ヶ月間飼育された後、1973年にフロリダの動物園に移動。そこで他の6頭とともに「白雪姫と7人の小人」のキャラクターにちなんだ名がつけられた。ブロンクス動物園がハッピーと、このうちの一頭であったグランピーを獲得したのが1977年。2頭は当初年上の雌象「タス」と象家で生活し、トリックや子供を載せることや、コスチュームを着て人間と綱引きをする芸をしこまれた。

その後、現在のワイルド・アジアという敷地に他のゾウとともに移された。タスが2002年に死亡。その数ヶ月後、グランピーがパティとマキシンという他の2頭から攻撃を受けて死亡してしまう。これをきっかけにハッピーは2頭から隔離された。2006年に新たなつがい「サミー」がやってきたが、到着後まもなくして死亡している。