2026年7月10日、ステーブルコイン大手Circle(NYSE: CRCL)は、米通貨監督庁(OCC)から国法信託銀行の設立認可を取得した。暗号資産企業が自前の銀行機能を持つ流れが本格化する一方、既存銀行との対立は新たな局面に入りそうだ。
何が認可されたのか
認可を受けたのは、正式名称「First National Digital Currency Bank, N.A.」、通称「Circle National Trust」。開業当初はCircleグループ向けのデジタル資産カストディ業務を担い、将来的には銀行やデリバティブ清算機関など機関投資家向けサービスへ拡大する計画だ。さらにUSDC準備金の管理機能を同信託銀行へ移管することも視野に入れている。
申請は2025年6月に行われ、同年12月に条件付き承認を取得。今回、本承認に至った。Circleは2015年に業界で初めてニューヨーク州のBitLicenseを取得し、2024年にはグローバル発行体として初めてEUのMiCA規制にも対応するなど、規制順守を経営戦略の柱としてきた。
市場は好感、ARKも買い増し
株価は発表前日に直近3カ月安値をつけていたが、認可発表を機に反発した。時間外取引で13%前後急伸し、通常取引でも5%近い上昇で終えている。発表前日にはARK Investが約1370万ドル相当のCircle株を買い増していたことも明らかになっており、機関投資家の一部が今回の展開を先読みしていた可能性がある。
なぜ重要なのか
今回の認可が持つ意味は、大きく4つある。
準備金管理を自社で担える
最大のポイントは、USDCの準備金管理体制が変わる可能性だ。
これまで裏付け資産は第三者銀行に預けられてきたが、自社の連邦規制下にある信託銀行で管理できるようになれば、2023年のシリコンバレー銀行破綻時のような、取引銀行の経営問題による準備金凍結リスクを抑えられる。
収益構造の改善につながる
財務面での意味も大きい。
Circleの2026年第1四半期決算では、総収益6億9,413万ドルのうち、Reserve Income(準備金運用益)は6億5,251万ドルと約94%を占めた。現在の収益は、ほぼ準備金運用益に依存している。
準備金管理を自社の信託銀行へ取り込めば、これまで第三者銀行と分け合っていた運用益をより多く自社に取り込める可能性がある。信託銀行の取得は、安全性だけでなく、収益性の向上にも直結し得る。
「規制順守」の優位性が高まる
OCCの直接監督下に入ることで、オフショアを拠点とするTetherなどとの差別化も進む。
USDCの市場シェアは約23%で、依然として首位Tetherに次ぐ2位だ。米国でステーブルコイン規制の枠組みが整備されつつある中、Circleは、規制順守を競争力へと転換する戦略をさらに前進させたと言える。
業界全体へ波及する可能性
今回の承認はCircleだけの話ではない。RippleやPaxos、BitGoなど暗号資産関連企業も信託銀行免許の本承認に向けた手続きを進めている。Circleが先行事例となったことで、今後は同様の申請や認可の動きが加速する可能性がある。
業界は反発
一方で、伝統的な銀行業界は暗号資産企業の銀行業務への参入を強く警戒している。
Circleが条件付き承認を取得した2025年12月には、銀行ロビー団体のBank Policy Institute(BPI)が「未解決の論点が数多く残されている」と懸念を表明。Independent Community Bankers of America(ICBA)も、信託銀行制度の本来の趣旨を逸脱しているとして、「OCCは秩序だった破綻処理が困難な機関を生み出している」と批判した。
フィンテック企業と既存銀行の間で続く「規制裁定」をめぐる対立は、今後も政策上の争点となりそうだ。
今後の注目点
今後の焦点は、Circle National Trustの開業時期に加え、USDC準備金の管理機能がいつ信託銀行へ移管されるかにある。これが実現すれば、Circleはステーブルコインの発行だけでなく、その裏付け資産の管理まで自社で担う垂直統合型のビジネスモデルへ一歩近づくことになる。同時に、他のステーブルコイン発行体への認可の進捗、そして既存銀行業界の反発が規制当局の判断にどう影響するかが注目される。

