世界はアバター続編、ロシアはあの国産アニメが新記録

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ロシアの国民的キャラクター「チェブラーシカ」のアニメ映画最新作が、ロシア国内で記録的ヒットとなっている。ロシアの英語新聞、ザ・モスクワ・タイムズが伝えた。

映画『チェブラーシカ』は今月1日に封切られ、興行収入は公開週末だけで13億ルーブル(約25億円)を記録。2週間足らずで、36億ルーブル(約69億円)を突破し、ロシアの映画専門サイトによると、現在続編が世界でヒットしている『アバター』(ジェームズ・キャメロン監督)の2009年公開のオリジナル版が樹立した興収記録35億ルーブルをすでに上回ったという。

大きな耳と茶色の毛が特徴の架空のキャラクター「チェブラーシカ」は1960年代、旧ソ連で絵本作品として登場し、1969年にはアニメーターのロマン・カチャーノフ監督がパペットアニメとして映画化した。その後ロシアで国民的な人気者として愛されるようになり、継続的にテレビに登場したほか、2000年代には五輪のロシア代表チームの公式マスコットにも選ばれた。その可愛らしさから日本でも人気が高く、日本版アニメやグッズなどが展開されている。

今回の新作は最新のCG技術をフィーチャーしたリメイク版で、ロシアの小さなリゾート地に連れてこられたチェブラーシカが、新たな仲間たちと出会い冒険を繰り広げる。

ロシアの歴代興行収入で20億ルーブルを突破したのは、『チェブラーシカ』、『アバター』のほか、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017年)などを含む13作。中でも『チェブラーシカ』はわずか5日で20億ルーブル台に食い込んだという。

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昨年2月のウクライナ侵攻以来、ハリウッド各社が相次いでロシアでの新作映画の公開停止に踏み切った。そうした中での『チェブラーシカ』のヒットは、「仮に最新のハリウッド作品との競争にさらされていたとしても、この映画が大ヒットしていたことを示唆している」と、ザ・モスクワ・タイムズは伝えた。

ロシア歴代興収ランキング(Бюллетень кинопрокатчика より)

作品名 / 公開日 / グロス(ルーブル)
1.AVATAR 12/17/09 3,516,796,661
2.KOLOP 12/26/19 3,069,622,747
3.SPIDER-MAN: NO WAY HOME 12/15/21 2,987,157,478
4.UPWARD MOVEMENT 12/28/17 2,968,507,765
5.THE LION KING 07/18/19 2,641,791,506
6.AVENGERS: FINAL 04/29/19 2,594,826,571
7.T-34 01.01.19 2,273,745,807
8.THE LAST BOGATYR: THE MESSENGER OF DARKNESS 12/23/21 2,198,100,803
9.PIRATES OF THE CARIBBEAN: DEAD MEN TELL NO TALE 05/25/17 2,131,816,926
10.ZOOTROPOLIS 03/03/16 2,082,859,518
11.VENOM 2 09/30/21 2,055,360,376
12.THE LAST BOGATYR: THE ROOT OF EVIL 01/01/21 2,049,222,853
13.CHEBURASHKA 01/01/23 2,011,076,420 *1月5日時点

著作権完全無視?海賊版横行の実態も

現在ロシアでは、公式にはハリウッド作品を上映できない傍ら、ロシアの友好国などがら裏ルートで入手した海賊版が公然と上映されている実態があり、これらの興行収入は、公式記録に反映されない。ロシア議会では著作権を得ていない作品の上映などを合法化する案も持ち上がっているという。

一方皮肉にも、チェブラーシカをめぐっては、ソ連崩壊の混乱もあって著作権トラブルが国内外で多発していた。日本との版権トラブルも多く、2020年には「チェブラーシカ」の日本版アニメをめぐり、ロシアの著作権元が、ライセンス契約をしていた日本企業に対して著作権の無効を主張する裁判を起こしている。