ブラック・ライブズ・マター幹部 資金不正流用の疑いで訴えられる

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人種差別への抗議運動ブラック・ライブズ・マターの中心的な組織で、全国から集まる寄付金を管理する「ブラック・ライブズ・マター・グローバル・ネットワーク・ファンデーション(BLMGNF)」の元トップが、1,000万ドル(約14億円)を不正に流用したとして、各地の支部を統括する組織から提訴された。

BLMGNFは、ブラック・ライブズ・マター運動の創始者、パトリース・カーン=カラーズ氏とアリシア・ガルザ氏、オパール・トメティ氏が設立した慈善組織。3人はすでに組織から離れている。原告「ブラック・ライブズ・マター・グラスルーツ(BLMGR)」は訴状で、「寄付金を集め、特定の管理義務を遂行する」便宜上の組織であるにも関わらず、「唯一の取締役で代表、会計係」だったシャロミア・バウアーズ氏が、寄付金の本来の意図に反して、自身の財源に流用し、「バッファロー乱射事件とオハイオ州のジェイランド・ウォーカー射殺事件に対する抗議の間、ブラックライブズマターの現場運動が使用するのを妨ぐための措置を講じた」と主張している。

ちなみに2020年のジョージ・フロイドさん死亡事件をきっかけにBLM運動が世界に広がった当時、BLMGNFには9000万ドル(約126億円)が集まったという。

訴状ではまた、バウアーズ氏を「悪徳管理者」「強奪者に変貌した仲介者」などと呼んで非難し、団体を税務署の調査にさらし、「1年半も経たないうちにBLMに修復不能な損害を与えた」と主張。「ほかのBLM指導者たちや活動家たちが路上で命をかけて抗議行動に励む間、バウアーズは快適なオフィスで詐欺の計画や、献金者と団体間の契約上、暗黙の了解で交わされた内容をどう欺くかということばかり考えていた」などと述べている。

原告のBLMGRのディレクターで同ロサンゼルス支部の共同創設者、メリーナ・アブドゥラ氏は、最近の会見で「私たちが集めた資産や資金、SNSプラットフォーム、そして『Black Lives Matter』という名称が、私たちから奪われ、コンサルタントの手に渡ってしまった」と話していた。

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一方、BLMGNF側は訴えの内容を否定。団体のウェブサイトに今月1日付けで長文の声明を掲載し、「BLMGNFは光を与え、黒人の解放を目指し戦うためにある」「誤解のないように言うと、メリーナ・アブドゥラ氏やBLMGRの訴えは誤りだ。中傷的で非現実的だ」と反論した。

声明ではさらに原告側を「法制度をたきつける有害な論法と社会的暴力で被害者を装っている」などと非難。「彼らはむしろ白人の抑圧者と同じ方法をとり、白人優位主義者がやるように刑事司法制度を利用して(彼ら自身が撤廃しようとしている制度なのに)もめ事を解決しようとしている」と指摘した。

BLMGNFについては、資金の管理や使途をめぐる疑惑が、たびたび浮上している。今年4月、BLM運動創始者の一人で、同組織のエグゼクティブ・ディレクターを務めていたパトリース・カーン=カラーズ氏が、高級物件を次々と購入していたことが発覚。運動関係者から、独立調査を求める声が上がった。カラーズ氏はこの翌月辞任し、バウアーズ氏に指導者の立場を引き継いだ。

ちなみにBLMGNFがAP通信に提供した納税申告書によると、同団体からはバウアーズ氏の会社「バウアーズ・コンサルティング」にも、2020年7月から2021年6月までの1年間に210万ドルが送金されているという。