バルバドス 英俳優ら元農園所有主の子孫に「補償」求める可能性

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カリブ海の島国バルバドスでは、英俳優ベネディクト・カンバーバッチ氏ら、かつての農園所有者の子孫に、補償を要求する可能性が浮上している。

「和平と統合のためのカリビアンムーブメント」のデビッド・デニー事務総長は30日、テレグラフに対し「カンバーバッチ家を含む、奴隷貿易の恩恵を受けた白人の農園所有者の子孫は、補償の支払いを求められるべきだ」と主張した。

賠償の全国委員会を統括するデビッド・コミッショング副委員長も、補償を求める動きは「まだ初期段階で、始まったばかり」だと述べつつ、補償が支払われれば、地元の病院や学校、インフラ、住宅の建設などに充てられるべきだと語っている。

デイリービーストによると、バルバドス政府は先月、先祖から農園を相続した英保守党のリチャード・ドラックス(Richard Drax)議員に対し、補償を求める計画を発表した。政府は、島最大の農園「ドラックス・ホール」を返還するよう求めているが、ドラッグス氏が拒否した場合、国際仲裁裁判所に提訴する可能性を示唆している。勝訴した場合、現在の農園所有の有無にかかわらず、カンバーバッチ氏などにも、補償の要求が及ぶ可能性があると指摘されている。

なお、先のコミッショング氏は、Barbados Todayに寄せた論説で、補償は「特定の家族ではなく、国や企業の法人に対して求められるだろう」と主張している。

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100年にわたり農園を所有

カンバーバッチ家は1728年、バルバドスのクレランドに砂糖農園を購入した。1834年に同国で奴隷制が廃止されるまで、約100年間にわたり250人の奴隷を所有した。一家は現在、農園を所有していないが、奴隷制度が廃止された際、現在の推定金額で約120万ドルの補償金を受け取っていたという。

ちなみにカンバーバッチ氏は、2007年のニューヨークタイムズのインタビューで、母で女優のワンダ・ヴェンサム氏から、奴隷補償の標的になるのを避けるため、俳優活動では本名を使用しないよう促されたことを明かした。

2013年に公開された映画「それでも夜は明ける」(12 Years a Slave)では、奴隷を所有していた農園のオーナーを演じたが、奴隷所有者の子孫という罪悪感から、その役を引き受けたと語っている。

バルバドスでは2020年、英国の君主制を廃止し、昨年11月から共和党制へと移行した。チャールズ皇太子(当時)は首都ブリッジタウンで開催された式典に出席し、王室メンバーとして初めて「奴隷制による恐ろしい残虐行為」があったことを認めたうえ、「われわれの歴史に永久に汚点を残す」と語った。