米防衛テック企業クラトス(Kratos Defense & Security Solutions、KTOS)が11月5日に発表した2026年第3四半期(9月27日まで)決算は、受注が売上高の2.2倍に達し、受注残は過去最高の26.5億ドルに積み上がった。
同時に初めて示した2027年の見通しは売上高21億〜22億ドル。ただし、つなぎ予算(継続予算決議、CR)が少なくとも2027年第1四半期まで続くことを前提としており、エリック・デマルコ(Eric DeMarco)CEOは「社内予測はこれをかなり上回る」と、意図的に保守的な数字であることを強調した。発表2日前の中間選挙で民主党が上下両院で多数派を奪還した。来年1月からスタートする新議会の下で国防予算がどう動くか、不透明感が増している。
株価は、選挙結果が判明した11月4日から決算発表当日の5日までの2日間で約19%下落していた。決算翌日の6日は一時5%強下げた後に切り返し、5.1%高の35.10ドルで引けた。
ハイライト
売上は35.7%増、調整後EBITDAは会社見通しの上限を超えた一方、GAAPベースでは赤字に転じた。
| 項目 | 2026年Q3 | 比較 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4億7,180万ドル | 前年同期比35.7%増(既存事業23.2%増) |
| 純損益 | 20万ドルの赤字 | 前年同期は870万ドルの黒字 |
| 調整後EBITDA | 5,090万ドル(利益率10.8%) | 前年同期3,080万ドル、会社見通し4,000万〜4,500万ドル |
| 調整後EPS | 0.24ドル | 前年同期0.14ドル |
| 受注 | 10.37億ドル(受注÷売上2.2倍) | 前期(Q2)4億9,220万ドル |
| 受注残 | 26.50億ドル(過去最高。うち資金手当て済み20.67億ドル) | Q2末20.84億ドル(うち資金手当て済み15.72億ドル) |
| 案件パイプライン | 155億ドル | Q2末150億ドル |
| フリーキャッシュフロー | 2,940万ドルの流出 | 設備投資3,020万ドルを含む |
見通し
| 項目 | 2026年通期(今回) | 2026年通期(8月時点) | 2027年通期(初提示) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 17.8億〜18.1億ドル | 17.5億〜18.1億ドル | 21億〜22億ドル |
| 調整後EBITDA | 1.76億〜1.80億ドル | 1.73億〜1.76億ドル | 2.30億〜2.40億ドル |
| 営業利益 | 200万〜700万ドル | 1,600万〜2,200万ドル | 未開示 |
| フリーキャッシュフロー | 1.10億〜1.20億ドルの流出 | 8,500万〜1.05億ドルの流出 | 2月下旬に開示予定 |
2027年の売上高は2026年比18〜22%増、調整後EBITDA利益率は中央値で約1ポイント改善する計算になる。
極超音速と宇宙、防空ハードウェアが受注を押し上げ
受注残の増加分(約5.7億ドル)は、ほぼすべて政府向けソリューション部門(KGS)から来ている。KGSの受注残は17.10億ドルから22.92億ドルに増え、四半期のBBレシオ(受注÷売上)は2.5倍だった。
会社が主な受注として挙げたのは、極超音速の試験プログラムMACH-TBの追加資金と宇宙関連の受注だ。買収の影響を除いた既存事業ベースの伸び率では、ロケット・極超音速事業が149%、タービン(エンジン)事業が27.1%に達した。
デマルコ氏は説明会で、KGSを「会社のフライホイール(はずみ車)」と呼んだ。防空、ミサイル、レーダー向けの軍用ハードウェアを大手防衛企業に供給する事業と、衛星地上システムのソフトウェア事業が特に好調だという。極超音速事業はすでに約6億ドルの資金を受注しており、2027年の売上約7億ドルへの道筋は明確だと述べた。
一方、無人機部門(KUS)はQ3の数字では弱かった。売上は8,720万ドルから7,460万ドルに減り、BBレシオは0.8倍、受注残も3.746億ドルから3.574億ドルに減っている。前年同期には無人戦闘機Valkyrieの海外向け出荷1,610万ドルが含まれていた反動もある。
ただし説明会では、ValkyrieがAirbusと欧州で飛行試験を終え、顧客名非開示の低率初期生産(LRIP)契約を受注したとも明らかにした。デマルコ氏は2027年について、無人機部門が最も伸びる部門の1つになるとの見通しを示している。
2027年見通しは「意図的に保守的」
2027年の売上高21億〜22億ドルという見通しは、会社自身が控えめだと説明している数字だ。デマルコ氏は説明会で、社内の予測はこれをかなり上回ると述べたうえで、慎重にした理由を5つ挙げた。つなぎ予算、レームダック(死に体)議会、1月に発足する新議会、議会と政権で多数派が分かれる構図、そしてサプライチェーンの課題だ。
決算発表資料には、見通しの前提が明記されている。
- 現在のつなぎ予算は少なくとも2027年第1四半期まで続く
- つなぎ予算が2027年3月31日を超えて続けば、見通しを見直す
- 政府閉鎖は想定していない
- 2027年第1四半期が最も弱い四半期になり、予算成立後の第3・第4四半期に売上と利益が大きく伸びる
前年度の歳出規模(予算水準)と配分を踏襲するつなぎ予算の下では、国防総省は新規の生産開始や生産ペースの引き上げができない。ただしデマルコ氏は、事業の大半は既存の正式調達プログラムや量産プログラムに紐づき、2026年度予算で資金手当て済みだとして、大きな影響はないと強調している。慎重さの理由は、増産と新規案件の「時期」が読めないことにある。
デマルコ氏はまた、2027年の目標達成に追加の予算調整法案は必要ないとも明言した。根拠に挙げたのは、2027年度国防権限法(NDAA)の総額1.15兆ドルとその内訳だ。
では、予算調整法案が通った場合の上振れはどうか。アナリストにそう問われると、デマルコ氏は、2027年度歳出法が3月末までに成立し、さらに1,500億〜2,000億ドル規模の予算調整法案が通れば、2027年を通じて重要な上振れ要因になり得ると答えた。なお、後述する空軍の低コスト巡航ミサイルFAMMについては、2027年度予算要求に、最大1,000発の購入と生産能力拡大に充てる3億ドルが予算調整法案の資金として計上されている。法案の成否はFAMMの調達ペースにも響く。
人事も変数だ。デマルコ氏は、次の下院軍事委員長に民主党のアダム・スミス議員、上院軍事委員長にジャック・リード議員が就く可能性が高いとの見方を示した。そのうえで、両氏が空軍の無人僚機(CCA)計画の進め方について異なる見方を持つかもしれないと述べている。
エンジン量産へ先行投資
Kratosが最も大きく先行投資しているのが、小型ジェットエンジンの量産だ。ミシガン州の工場で2027年に3,000基を生産できるよう、すでに部品を発注している。
ただし、2027年に顧客へ出荷するのは約1,500基で、大半は第3・第4四半期に集中する。残る1,500基は2028年に出荷する。さらに2027年中に約5,000基分の第2ロットを発注し、主に2028年に製造、2028〜29年に出荷する計画だ。3,000基分の部品調達には自己資金1億3,000万〜1億4,000万ドルを充てる。
部品を多めに発注しているのは、供給網の混乱への備えでもある。デマルコ氏は、部品が2,500基分しかそろわなくても出荷計画の1,500基は確保できると説明した。
エンジン需要の根拠として挙がった案件は次の通り。
| 案件 | Kratosの関与 | 状況 |
|---|---|---|
| JDAM LR(Boeingの射程延長型誘導爆弾) | 小型ターボジェットJ85が動力源に選定 | 空軍がBoeingに7,500万ドルの暫定契約(8月) |
| JASSM(空対地巡航ミサイル) | GE Aerospaceとの共同開発エンジンGEK800が第2エンジン供給源に選定 | 開発(EMD)契約。軍用名称F143-ZZ-100。量産受注ではない |
| FAMM(安価な巡航ミサイル) | 子会社TDIが小型タービンエンジンの開発契約を獲得。会社はエンジン事業の最優先目標と位置づけ | ミサイル本体はAnduril、CoAspire、Zone 5の3社。量産エンジンの契約は年内の見通しで、Kratosの採用は公表されていない |
FAMMは、低コスト巡航ミサイルを大規模に調達・備蓄する国家計画だ。調達数は2027年度の1,000発から2028年度に5,300発へ急増し、2031年度には7,990発に達する。量産エンジンの契約は年内に結ぶ見通しで、Kratosの3,000基生産と2028年の第2ロットは、この本契約と調達数の急増を見越した先行投資でもある。
無人機の本体ではまだ空軍の候補外
なお、空軍の無人機大量配備構想では、Kratosの機体はまだ候補に入っていない(関連記事:米空軍、CCA 500機を2032年までに配備――無人航空戦力を大量化)。
- CCA Increment 1:General Atomics(GA-ASI)とAndurilの2社で量産段階
- CCA Increment 2:9社が検討段階にあるが、社名は非公表。Kratosは参加の意向を示していたが、9社に入っているかは確認できない。空軍は9社以外の企業も後の段階で参入できるとしている
- MMA(MQ-9後継):9月30日に7社に絞り込まれたと報じられた。Anduril、Chaos Industries、GA-ASI、Grid Aero、Otto Aerospace、Shield AI、Swarm Aeroで、Kratosは含まれていない
Valkyrieの主戦場は、海兵隊の正式調達プログラムMUX TACAIRと海外市場だ。一方でエンジンでは、GE Aerospaceと推力1,500ポンド級のGEK1500を小型CCA向けに開発している。空軍がIncrement 2向けに検討している小型エンジン(1,400〜1,600ポンド級)にちょうど重なる。機体で選ばれなくても、エンジンで空軍の無人機構想に入り込む道がある。
キャッシュフローの悪化と希薄化
調整後の指標が上向く一方、キャッシュの見通しは悪化した。2026年通期のフリーキャッシュフローの流出見通しは、8月時点の8,500万〜1.05億ドルから1.10億〜1.20億ドルに拡大した。営業利益の見通しも1,600万〜2,200万ドルから200万〜700万ドルに引き下げている。
売上が急増する中で、未請求の売掛金が膨らんでいる。売上債権の回収日数は、Q2の114日からQ3は125日に延びた。工場や試験施設への投資、エンジンや無人機の在庫積み増しも続く。
投資の原資は株式発行だ。2026年1〜9月に約13.5億ドルを調達し、9月末の現金は14.04億ドルに増えた。その分、Q3の希薄化後の平均株式数は前年同期の1億7,290万株から1億8,880万株に増えている。
デマルコ氏は、当面の増資はなく大型買収も行わないと明言した。キャッシュフローが黒字に転じるのは2029年とみている。量産による入金が投資による流出を上回るのがその頃だという説明で、それまでは成長と引き換えに現金を使い続ける局面が続く。
次の注目点
- 12月11日:現在のつなぎ予算の期限。延長か、2027年度歳出法の成立か
- 年内:レームダック会期での予算調整法案の成否、空軍によるFAMM向け量産エンジンの契約
- 2027年1月:新議会の発足と軍事委員長人事
- 2027年2月下旬:2026年通期決算。2027年のキャッシュフロー見通しと部門別見通し
- 2027年3月31日:つなぎ予算がこれを超えて続けば、Kratosは2027年見通しを見直す
- 2027年半ば:CCA Increment 2の絞り込み(最大6案)




