ホーム ニュース 決算ウォッチ 決算ウォッチ:USDC発行...

決算ウォッチ:USDC発行のサークル、Q3はトークン販売で増益も準備金収入は8%減

7
Circle Q3決算

ステーブルコイン「USDC」を発行する米Circle Internet Group(NYSE: CRCL)が11月4日に発表した2026年第3四半期(7〜9月)決算は、総収入・準備金収入が8.65億ドル(前年同期比17%増)、調整後EBITDAが3.17億ドル(85%増)だった。ただし増分の大半は、同社が9月に本稼働させたブロックチェーン「Arc」のトークン(ARC)先行販売による一時的な収入1.82億ドルによるものだ。これを除くと調整後EBITDAは約2割減り、収入の96%を米国債などの利息(準備金収入)に頼る構造は変わっていない。

ハイライト

本業の準備金収入は8%減ったが、トークン販売が利益を押し上げ、アナリスト予想を大きく上回った。

指標Q3’26前年同期比
総収入・準備金収入8.65億ドル+17%
うち準備金収入6.58億ドル−8%
うちその他収入2.07億ドル(ARC 1.82億ドルを含む)+627%
継続事業の純利益2.26億ドル+5%
調整後EBITDA3.17億ドル+85%
USDC流通残高(期末)739億ドル0%
USDC流通残高(期中平均)733億ドル+8%
準備金の運用利回り3.54%−61bp
米ドル建てステーブルコイン市場シェア(流通残高ベース)27%−183bp

希薄化後EPSは0.84ドルで、市場予想(0.37〜0.42ドル、集計元により異なる)を大きく上回った。通期見通しは数値を据え置いたが、ジェレミー・フォックスジーン(Jeremy Fox-Geen)CFOは、調整後営業費用が当初レンジ(5.7億〜5.85億ドル)の上限寄りで推移しているとした。1〜9月の実績から逆算すると、第4四半期は1.6億ドル前後と、第3四半期(1.39億ドル)から1割強増える計算になる。同社は人員を約5%削減したことも開示し、リストラ費用910万ドルを計上した。

用語メモ:CPNとArc

CircleはUSDCの発行に加え、USDCを使う「場」として2つの事業を育てている。

Advertisement
  • CPN(Circle Payments Network):銀行や決済会社向けの国際送金ネットワーク。加盟機関は自前でブロックチェーンや管理の仕組みを持たなくても、USDCなどを使った送金や決済ができる。9月末時点で205の金融機関が加入し、年換算の決済額は413億ドル。買収予定のシンガポール企業Tazapayは、受け取り側の銀行口座に現地通貨で届ける部分(いわゆるラストマイル)を担う。
  • Arc:Circleが開発したブロックチェーンで、9月16日に本稼働した。金融取引向けに設計され、手数料(ガス代)はUSDC建てで1セント未満、取引は1秒未満で確定する。現在は大手金融機関など11社が「バリデーター」として取引を承認する運営形態で、2027年に、トークンを預けた参加者が承認を担うプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行する予定だ。そのためのトークンがARCで、100億枚が発行され、Circleが25%を保有する。

CircleはCPNの決済をArc上で処理する方針で、CPNの利用が増えるほどArcの取引も増える関係にある。

ARCを除くと減収減益

ARCトークンの先行販売を除くと、Circleの第3四半期は減収減益だった。

指標Q3’26 報告値Q3’26 ARC除くQ3’25前年同期比(ARC除く)
総収入・準備金収入8.65億ドル6.83億ドル7.40億ドル約8%減
RLDC(収入−分配コスト)4.53億ドル2.71億ドル2.92億ドル約7%減
調整後EBITDA3.17億ドル1.35億ドル1.71億ドル約21%減

ARCの寄与は、総収入の21%、RLDCの40%、調整後EBITDAの57%を占める。利益段階に下りるほど比重が大きくなるのは、トークン販売には取引所などへの分配コストがかからないためだ。フォックスジーンCFOも、トークン販売の収入はそのまま利益に乗ると説明している。

先行販売の契約総額は2.42億ドル(1トークン0.30ドル)で、Circleは今期に約75%にあたる1.82億ドルを収入として認識した。

純利益が5%増にとどまったのは、前年同期に法人税の還付益約6,100万ドルや、評価益を中心とするその他収益約7,200万ドルが計上されていたためだ。営業利益は前年同期の0.81億ドルから2.08億ドルに伸びている。

ARCを除くと準備金依存はむしろ強まる

収入に占める準備金収入の比率は、第2四半期の95.3%から76.1%に急低下した。だが低下の原因はARCの1.82億ドルであり、単純にこれを除くと96.3%と直近5四半期で最も高い。ARC以外のその他収入は2,500万ドルで、2四半期続けて減った。フォックスジーンCFOは、ブロックチェーン統合案件の収益化が少なかったためと説明している。

通期見通しから逆算すると、第4四半期のその他収入は約2,800万〜4,800万ドルにとどまる(通期見通し3.1億〜3.3億ドルから1〜9月実績2.82億ドルを引いた額)。準備金比率は9割台に戻る見込みだ。収益構成の変化は一時的に過ぎない。

準備金収入を決める3つの変数

準備金収入は「金利」「残高」「分配コスト」の3つで決まる。第3四半期は、金利と残高がともに増収につながらなかった。

金利:準備金の運用利回りは3.54%で、前年同期の4.15%から61bp下がった。2025年の利下げの影響が残っている。ただしFRBは2026年9月16日に政策金利を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%とした。利回りは前四半期比では6bp上昇しており、金利面の逆風は一巡しつつある。

残高:期中平均は8%増えたが、期末残高は前年並みだった。Circleは複数年で年40%成長という長期目標を据え置いたものの、足元の伸びは目標から遠い。

分配コスト:準備金収入6.58億ドルのうち4.09億ドル(約62%)は、分配・取引コストとしてCoinbaseなどのパートナーに支払われている。手元に残る割合を示す純準備金マージンは37.8%で、前四半期から約80bp下がった。フォックスジーンCFOによると、Hyperliquidとの契約が初めて丸々1四半期分効いたためだ。第4四半期には、9月に5年間更新したバイナンスとの契約も丸々乗る。同CFOはARCを除いた通期のRLDCマージンが当初見通し(38〜40%)の中央付近になるとしており、逆算すると第4四半期はマージンが下がる見込みだ。

CPNとArcは好循環を生めるか

Circleの課題は、CPNとArcが「残高の回復」と「収益の多角化」を同時に起こし、互いを強め合う循環をつくれるかにある。会社は決算資料で、USDC・CPN・Arcの3つが互いの利用を押し上げる構図を描いた。だがQ3の数字を見る限り、その循環はまだつながっていない。

経路①:利用の拡大は残高に結びつくか

Circleの収入の大半は、発行済みUSDCの裏付け資産から得る利息だ。USDCが取引で使われても手数料はCircleに入らない。CPNの決済額は前年同期の15.2倍、USDCの取引量は49%増えたが、期末残高は前年並みだった。つまり、USDCは送金や決済の「通過点」としては使われているが、受け手がUSDCのまま保有し、残高を安定的に押し上げる段階には至っていない。Q3のUSDCの発行・償還額は過去最高の2,080億ドルに達した。アレールCEOはこれを、ドルをUSDCに替えて送り、受け手が再びドルに戻す「ステーブルコイン・サンドイッチ」の経路が機能している証しと説明する一方、受け手にUSDCのまま残高を持ち続けてもらうことを重視すると語った。

残高の増え方も問われる。Coinbaseやバイナンスなどパートナー経由でUSDCを広めれば、その見返りとしてCircleが支払うコストも膨らむ。物差しになるのが、Circle自身のサービス内にあるUSDC(USDC on Platform)だ。この部分にはパートナーへの分配コストがかからない。Q3末は139億ドルと前年同期比36%増え、期末の流通残高に占める比率は19%(前年同期14%)に高まった。CPNやArc経由の残高がこの比率を押し上げれば、残高の回復が利益の改善を伴う。

経路②:利用の拡大は新しい収入源になるか

CPNの手数料は意図的に低く抑えられており、本格的な収益化はTazapay買収が完了する2027年からだ。Arcの利用は立ち上がりつつあり、10月末時点で資産は約15億ドル、1日の取引は約50万件に達した。ただしArcの取引手数料はバリデーターに入るため、Circleが恩恵を受けるのは、2027年予定のPoS移行後に保有するARCをステークして報酬を得る段階になる。フォックスジーンCFOは、このステーキング報酬を「Arcからの経常収入の主軸」と位置づけた。

ARCには注意点が2つある。第一に、今回の1.82億ドルのようなトークン販売は一時的な収入で、保有する25億ARC(先行販売価格で約7.5億ドル、参考値)も売却・配布するまで財務諸表に表れない。第二に、ステーキング報酬はARCで受け取り、その時点の価格でドルに換算して計上する。ARCの価格が下がれば、同じ枚数を受け取っても収入は減る。金利に左右される収入を減らせても、代わりにトークン価格に左右される収入が増えるだけになる可能性がある。Circleはリスク要因として、ARCには証券規制などの不確実性があり、主要なマイルストーンを達成できなければ先行販売の代金を返還する義務が生じうることも開示している。

次の注目点

  • 第4四半期:準備金比率が9割台に戻るか、バイナンス契約によるマージン低下の幅
  • USDCの期末残高と、USDC on Platformの比率(Q3末19%)が上がり続けるか
  • GENIUS法の施行(2027年1月18日):規制されたドル建てステーブルコインとして、企業や金融機関によるUSDCの採用が広がるか
  • 次回決算(2027年初め):2027年の「その他収入」見通しと、CPN・Arc関連の収入の示し方
  • Arcのプルーフ・オブ・ステーク移行時期と、ARCの取引開始
  • Tazapay買収の完了(2027年予定)と後任CFOの人選(フォックスジーンCFOは9月に退任を発表している)

Q3が示したのは利用の拡大であり、残高も収益源もまだ追いついていない。CPNとArcが、パートナーへの支払いを増やさずに残高を回復させ、同時に金利以外の収入を育てられるかが、今後の焦点になる。