米防衛テック企業のAnduril Industriesは9月23日、同社の巡航ミサイル「Barracuda-M」ファミリーについて、米空軍研究所(AFRL)が兵器のオープンアーキテクチャ規格「WOSA(Weapon Open Systems Architecture)」への適合を確認したと発表した。大規模生産に入る兵器としてWOSAの独立検証を完了したのは、Barracudaが初めてだとしている。
WOSAは、ミサイル内部の部品同士を共通のインターフェースでつなぐための空軍の規格だ。シーカー(目標探知装置)、航法装置、ソフトウェア、弾頭などを、ミサイル全体を設計し直さずに個別に更新・交換できるようにする。規格に適合しているかどうかは、メーカーの自己申告ではなく、AFRL内の試験機関「MOATEL」が独立して検証する。
発表によると、検証はAndurilのカリフォルニア拠点で4日間にわたって行われた。対象は、ミッション自律、シーカー、GPS、航法、誘導、自動操縦、弾薬データバス(MDB)など14の領域。部品間でデータをやり取りするMDBについては、Anduril独自の実装と外部の実装の間でも、モジュール性が保たれることが確認された。WOSA準拠のソフトウェアを素早く入れ替えられることを意味し、同じ設計を他の兵器にも展開できるとしている。
もっとも、確認されたのは対象14領域のアーキテクチャであり、将来のあらゆる改修や実戦での性能まで保証したものではない。
Barracudaとは
Barracudaは、Andurilが2024年9月に発表した低コストの自律型巡航ミサイルのファミリーだ。100、250、500の3サイズがあり、射程500海里(約926km)超の構成もある。戦闘機、輸送機からのパレット投下、地上の発射機など、多様なプラットフォームから運用できる。
設計の出発点は、既存の巡航ミサイルでは数が足りないという問題意識だ。Andurilは発表時、既存品と比べて生産時間は半分、必要な工具は95%少なく、部品点数も半分で、価格は平均30%安いと説明した。組み立てに必要な工具は10個以下に抑え、防衛専門の熟練工だけでなく、自動車や家電の製造人材でも生産できる設計だとしている。
同社によると、Barracuda-500の各派生型は部品の90%以上が共通で、同じ生産ライン、同じ技術者、同じ工場で作れる。部品の大半は市販品で、残りは複数ベンダーのオープン設計を競わせることで、サプライチェーンの途絶に備えている。実際に、これまでに4種類のターボジェットエンジンを搭載した実績があり、エンジン供給のボトルネックを回避したという。
ソフトウェア面では、同社の自律制御ソフト「Lattice for Mission Autonomy」で動き、性能や挙動を継続的に更新できる設計だ。「安く作る」「大量に作る」「後から更新する」の3つが、最初から設計に組み込まれている。
Why it Matters
WOSA適合は、ピート・ヘグセス国防長官が進める調達改革と重なる。
ヘグセス氏は2025年11月、防衛産業関係者を前にした演説で、限定的な競争、ベンダーロックイン、コストプラス契約などに特徴づけられた「プライム企業が支配する体制」からの脱却を宣言した。その具体策の一つに掲げたのが、モジュール型オープンシステム方式による「モジュール単位の競争」だ。同氏は、重要な弾薬の部品やソフトウェアをミサイル全体を再設計せずに交換できたらどうか、常識なのにやっていない、と問いかけた。そのうえで、「スピードと量が支配する。我々は競争を促し、モジュール化を取り入れ、あらゆる機会に複数の調達先からの調達を追求する」と語った。
実際、Andurilは今回の発表の冒頭で、この「部品やソフトウェアを交換できたら」というヘグセス氏の発言をそのまま引用した。そして、それから1年足らずで、量産に入る兵器でその考え方を実証したと位置づけている。
同社のパット・モリス副社長は、モジュール化やオープンアーキテクチャを抽象的に語るのは簡単だが、独立した評価で証明するのは難しいと述べた。今回の検証は、機体全体を設計し直さずに新技術を組み込めるようにするというBarracudaの基本設計を裏付けたものだと強調している。
ヘグセス氏も指摘したように、従来の兵器では、部品を入れ替えるたびに再設計と試験をやり直し、何年もかかるのが通例だった。Andurilは今回、政府の第三者検証を得たことで、今日生産するBarracudaが脅威や技術の変化に合わせて更新し続けられるという主張に、公的な裏付けを得た形だ。
What’s Next
Andurilは2017年創業の防衛テック企業で、2026年5月に50億ドルを調達し、企業評価額は610億ドル(約9.6兆円)に達した。上場時期は未定だが、上場の期待もささやかれる注目企業だ。
Barracudaは、同社の成長を支える柱の一つになりつつある。7月には国防総省と、パレット発射型と航空機搭載型のBarracuda-500について枠組み合意を結んだ。7年間にわたり年間数千発の調達・納入を目指す内容で、初回納入は2027年に始まる予定だ。これは空軍の低コスト巡航ミサイル計画「FAMM」の一環で、国防総省はFAMM全体で、各派生型・複数ベンダー合計で最大年8,000発を調達する意向を示している。
5月には、陸軍向けの地上発射型Barracuda-500Mについても、年1,000発を3年間納入する枠組み合意を結んだ。国外では、ポーランドの国営防衛グループPGZと現地生産で合意している。
Barracudaの実発注はまだ 量産できるかはこれから
ただし、いずれも枠組み合意の段階であり、発注そのものではない。FAMMでは試験や認定を経る必要があり、複数年契約には議会の承認も要る。
生産体制の拡大も試される。Andurilは南カリフォルニアに4,000万ドル(約64億円)超を投じた専用工場で生産を始めており、年内にはオハイオ州の約10億ドル(約1,600億円)規模の巨大工場「Arsenal-1」への移管を始める計画だ。同社は、年末までにBarracuda-500の年間生産能力を「数千発台後半」まで引き上げられるとしている。
2027年初頭に予定される初期ロットの引き渡しは、Andurilの設計・生産手法が実際の軍事需要に耐えうるかを示す重要なマイルストーンになる。同時に、米軍にとっても、調達改革のアプローチが妥当かを占う試金石となる。




