木曜日, 4月 30, 2026
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クリプト法案 審議前進に楽観論も、3つの難題が年内成立を阻む

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トランプ政権とクリプト業界が年内成立を望む市場構造化法案「Clarity Act」。審議前進の鍵を握るティリス議員の発言で期待感が高まるが、倫理条項・DeFi開発者問題・銀行の反発が複雑に絡み合う。市場の期待は低下しつつある。

Clarity Actは、暗号資産をめぐるSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄権を法的に確定する市場構造法だ。どの資産を誰が規制するか、暗号資産の法的地位が明確になることで、機関投資家が制度的に参入できる条件が整う。2025年7月に下院を通過し、現在上院銀行委員会で審議が停滞している。

【今週ボトムライン】

上院銀行委員会のキーメンバーであるトム・ティリス議員が審議前進への楽観論を示した。ただし3つの重要な課題は未解決のまま。それぞれの問題が委員会審議、その後の本会議のスケジュールに障壁となる。5月末が事実上のデッドライン。 予測市場の年内成立オッズ(Polymarket)は45%。2月時点では80%超、4月中旬に50%を割り込んだまま低調に推移している。

Tillis発言:何が変わり、何が変わらなかったか

今週、上院銀行委員会のトム・ティリス議員はレポーターとの会話で、同委員会で停滞しているClarity Actの審議について楽観的な見通しを示した。

特集コーナー

「銀行側の懸念については多くが対処されたと思う。もう少し詰めるべき点はあるが、誠実に協力する姿勢があれば前進できる。そうでなければ、委員長にマークアップを進めるよう促すつもりだ」(ティリス議員、4月29日

修正法案テキストの公開については「ヒアリングの少なくとも4〜5日前に、ステークホルダーが先に確認できるよう調整する」とも述べた。しかし、マークアップ(委員会審議)の正式な日程はまだ発表されていない。

3つの残存課題

①司法委員会の介入――委員会スケジュールリスク

DeFi(分散型金融)のソフトウェア開発者を金融ライセンス取得義務から一部免除する規定をめぐり、上院司法委員会のチャック・グラスリー委員長が「犯罪組織の抜け穴になる」として管轄権を主張している。 問題は委員間段階のスケジュールを複雑にする。銀行委員会でのマークアップが完了しても、司法委員会での別途審議が必要となれば、本会議に上程できるタイミングが後ろ倒しになる。

②倫理条項――本会議段階での超党派票確保の条件

民主党側は、トランプ一族のクリプトビジネスへの関与(関連資産が10億ドル超増加との報道)を背景に、公職者・大統領・家族が在任中に暗号資産を保有・利益を得ることを禁じる倫理規定の導入を求めている。 倫理条項は銀行委員会の管轄外であるため、委員会が承認する法案には含まれない見込みとされる。しかし、銀行委員会のルーベン・ギャレゴ議員(民主党)は、マークアップまでに「どの段階でどう盛り込むかの道筋を示すべきだ」と要求する。つまり争点は条項の中身だけでなく、本会議でどう組み込むかというプロセスそのものだ。

ティリス議員も倫理条項への理解を示しており、「条項がなければ反対票を投じる」と語ったとされる(Politico報道)。仮に条項が盛り込まれた場合、トランプ大統領が拒否権を発動するリスクも残る。

③銀行のステーブルコイン利回り反対――根強い業界圧力

背景として、2025年7月に成立したGENIUS Actはペイメント型ステーブルコインの発行体による利回り提供を禁止した。ただし取引所や仲介業者が提供する利回りサービスについては明確化されておらず、Clarity Actでその空白を埋めようとしている。銀行側はこの「抜け穴」が預金流出につながるとして抵抗。審議の停滞を招いていた。

ティリス発言では「銀行側の懸念の多くに対処した」とされ、この問題は一定の進展があったとも読める。しかし全米独立地域銀行協会(ICBA)は今週、ペイメント型ステーブルコインへの利回り提供を認めれば地銀全体で1兆3,000億ドルの預金流出につながると試算を示し(業界団体による試算)、取引所や仲介業者にも利回り提供を禁止するよう求めた。楽観論との温度差は依然として大きい。

成立までの5ステップ

下院通過 ―― 完了(2025年7月)
上院銀行委員会マークアップ ―― 現在ここで停滞中。司法委員会の介入次第でさらに遅延も
上院本会議可決 ―― 60票以上が必要。倫理条項の道筋が見えなければ民主党票が得られない
下院通過版との最終統合 ―― 修正が多いほど両院協議のコストが増大
大統領署名 ―― 倫理条項が盛り込まれた場合、拒否権リスクあり

5月末デッドライン

Barney Moreno議員は「5月末までに通過できなければ無期限停滞の可能性がある」と警告している。

今年は11月に中間選挙を控える。夏の議会休会と秋以降の政治日程を踏まえると、このウィンドウを逃した場合、2026年内の成立は著しく困難になる。 ティリス議員の楽観的な発言は前進のシグナルではある。しかし今回明らかになったのは、残存問題が「委員会」と「本会議」の進捗に重くのしかかるという状況だ。司法委員会の介入が委員会段階のスケジュールを圧迫し、倫理条項の処理が本会議での票読みを左右する。

市場関係者からは、年内成立が暗号資産トークン、とりわけXRPやSolanaといった規制当局と係争を抱えたアルトコインの上昇の触媒になるとのも聞かれる。法的不確実性の解消が機関投資家の参入条件を整えるからだ。しかし期待値は決して高くない。市場が示す45%というオッズは、その現実を正直に映している。

*本稿は公開情報をもとにした立法動向の解説であり、特定の暗号資産への投資推奨や助言を目的とするものではありません。