ホームニュースクライム・事故違法な工作活動で起訴 ロシ...

違法な工作活動で起訴 ロシア二重国籍の女性の正体は?

ニューヨーク南部地区連邦検察局は8日、ロシアと米国の二重国籍を持つ女性を、ロシア政府の工作員として国内で違法に活動したとして、起訴したことを明らかにした。

起訴されたのはエレナ・ブランソン被告(Elena Branson 61)。外国代理人登録法に違反したほか、ビザ詐欺、偽証罪など6件の罪に問われている。

発表によると、エレナ被告は少なくとも2011年初頭から、米国内でロシアの利益を促進するため、ロシア政府や政府高官の代理人としての活動を行なった。活動に関連して、プーチン大統領に連絡をしたこともあった。

エレナ被告は2012年、ロシア政府の高官の承認を得て、マンハッタンに「ロシアセンターニューヨーク」と呼ばれる組織を設立。運営開始にあたって、当時首相だったプーチン氏に手紙を送ったほか、ロシア政府高官と面会していた。

センターの運営資金として、ロシア政府から数万ドルを受け取っており、政府高官の指示の下、イベントを主催して、ロシアのメッセージを広める活動をしていた。この中には、ロシア語を話す若者をターゲットに開催した年次フォーラムなども含まれる。

活動全体を通じて、首都ワシントンにあるロシア大使館やロシア政府から資金を受け取り、ロシア政府高官や政府関連組織からの任務に従事したが、これらのつながりを意図的に隠して活動を続けた。仲間らにも、外国代理人登録法の義務違反と指摘されないよう、活動の表記を工夫するよう指示していた。

2019年には、ハワイのカウワイ島にあるロシアの要塞跡で、州立公園に指定されている「ロシア・フォート・エリザベス州立歴史公園」の改称を阻止するためのロビー活動を実施。州高官らにロシア政府のメッセージを届けるとともに、関係者をモスクワに招き、ロシア政府高官との会談を組織するなどした。

先述のロシアセンターニューヨークに加えて、エレナ被告は、ロシア政府関連の組織が出資する「米国ロシアコミュニティ協議会」の議長を務め、「I LOVE RUSSIA」と呼ぶキャンペーンや、米国の若者に、ロシアの歴史や文化をプロモートする集会を開催するなどしていた。

FBIは2020年9月にブランソン被告に聴取を行ったが、この際、ロシア政府高官による指示ではないと話すなど、虚偽の証言を行なった。現在は米国を離れ、ロシアに逃亡している。

エレナ・ブランソンとは?

エレーナブランソン被告 Russian center new york FBページより

ニューヨークポスト紙によると、エレナ・ブランソン被告は1990年代後半に、23歳年上のプリンストン大学で経済学を教えていたウィリアム・ブランソン教授と結婚した。ウィリアム氏は2006年に咽頭癌で他界している。

ウィリアム氏は国際経済学の専門家で、世界銀行のコンサルタントを長年つとめ、リチャードニクソン元大統領の大統領経済諮問委員会にシニアエコノミストとして参加した。このほか、国際通貨基金、連邦準備制度理事会、財務省のコンサルタントを務めた。

エレナ被告とは知り合ったのは、国際通貨基金の会合だった。紹介したのは、通訳として働いていたエレナ被告の兄弟だった。

グリーンカード目当ての結婚か

ウィリアム氏は前妻との間に3人の子供がいるが、このうちの一人、エミリー・ブランソン氏はポスト紙に、父親は「若くて魅力的」なエレナ被告に「騙されていた」と話した。二人が結婚するまで、親子は「非常に近かった」が、「父はみんなを切り捨てた。彼女に夢中だった」と振り返った。

エミリー氏によると、ウィリアム氏の愛情は一方通行で、一緒に過ごす機会はなく、エレナ氏はブランソンの性を名乗ることすらしなかったという。「彼女はスパイというより、グリーンカードか金のために結婚したのだと思っていた」と述べ、「彼女が父と一緒に過ごすことは全くなかった。いつも旅行に出掛けていて、父のお金を使い果たしていた」と語った。

エレナ被告には当時、ロシアから連れてきた10代の娘がおり、ウィリアム氏は養子として受け入れた。現在、42歳となった娘は、歯科医と結婚してメリーランド州に暮らしているという。

夫婦は2001年、セントラルパーク西側に面した高級マンションの一室を購入した。エレナ被告は昨年95万ドルで物件を売却し、これを元手に2011年に組んだ24万ドルの住宅ローンを完済したという。

エレナ被告は、昨年ロシアの国営テレビ「RT」のインタビューに答え、2020年9月に30人のFBI捜査官が家宅捜索をしたと明かし、これがロシアに戻るきっかけになったと答えた。

トランプ氏にも接近

起訴状によると、エレナ被告は2016年の大統領選挙期間中、トランプ氏をロシア関連の集会に招待したことがあった。さらに当選後、トランプ氏の顧問の一人にメールを送り、トランプ氏を世界チェス選手権に招待していた。会場では、エレナ被告はロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官と記念撮影をしていた。

なお、トランプ氏がイベントにも参加したことを示すものはないという。

TOP STORIES