ポルノ呼ばわり?深まる右派インフルエンサー内部抗争

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Daily Wireの大幅な人員削減をめぐり影響力の「衰退」を指摘されたベン・シャピーロは、16日配信の番組で反撃に出た。

同社の規模縮小は、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・マガジン、Puckといった大手メディアが相次いで報じ、MAGA陣営内で対立するカールソン、ケリー、オーウェンズらも批判に加わっていた。

死の報告は大げさ

まず彼が持ち出したのは数字だった。

「Podtracによれば、われわれのポッドキャストリーチは月間4100万人。世界6位だ。4位のパラマウントは145番組を持つ。われわれは11番組でそれに迫っている。1番組あたりでは完全に勝っている」

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13%の人員削減については事実としつつ、「50%削減」というオーウェンズらの主張は「デタラメ」と一蹴。さらに、一連の報道を「ヒットピース(政治的思惑が絡んだ中傷報道)」として退けた。マーク・トウェインの言葉を借りて、「われわれの死についての報告は大げさだ」と続けた。

新左派か、ウォーク右派か——敵を再定義

その上で、批判者たちを再分類する。

シャピーロは、カールソン、ケリー、オーウェンズ、フエンテスらを一括して「ウォーク右派(woke right)」「新左派(new left)」、左右の極端が接近する「馬蹄型右派 (horseshoe right)」として片付け、「陰謀論的で、不満にまみれた、狂気じみたポピュリズム」であり、「彼らの目的は伝統的な保守派の支持層を食い尽くすことだ」と非難。「インターネットのアルゴリズム的な狂気によって歪められた右派の未来は、スロピュリズムだ」と嘆いた。(低品質な大量生産またはAI生成のゴミのようなコンテンツを指す蔑称「スロップ」とポピュリズムの造語)

一方で、自らは伝統的保守主義の擁護者と位置付け、「私は保守主義の理念を大切にする。自由市場を大切にする。私有財産を大切にする。法の下の平等、権力分立、そして憲法を大切にする。金のために嘘をつくつもりはない」と宣言した。

さらに、数字競争を否定。「あの種のゴミにはYouTubeで常に大勢の視聴者がいる。でも正直に言って、ポルノにも膨大なオンライン視聴者がいる。彼らには説教が必要だ」と語った。

これはカールソンやケリーらが「有権者が求めているものを見ろ」「視聴数が答えだ」と主張してきたことへの直接的な反論と読める。数字は正当性の根拠にならない。原則が根拠だというわけだ。

カールソンーーAIデーターセンターに警鐘

シャピーロの指摘は根拠がないわけではない。

カールソンは先週、ユタ州北部における大規模データセンター建設計画に対する抵抗の声に加わった。

これは、マンハッタンの2倍以上の面積に達する巨大プロジェクトで、地元の反対の声を押し切って郡委員会が承認を与えた。ユタ州全体の電力消費量を上回る9ギガワットを必要とするとされ、水資源や生態系の破壊といった環境問題が指摘されている。

同プロジェクトの推進者は、ベンチャー・キャピタリストでリアリティTV番組のスター、ケビン・オレアリー。カールソンは、彼をゲストに招いた配信回で、同プロジェクトが税制優遇措置を受ける点を挙げ「納税者にとって、金持ちに富の移転の強制されるようなもの」と主張。ユタ州知事を「支配階級の象徴だ」と批判した。さらに、AIによって仕事や生きる目標が奪われることに強い懸念を示し、「私からすれば文字通り地獄だ」と語った。

カールソンは地球温暖化に懐疑的で、エネルギー増産自体には反対していない。しかしながら、階級闘争的な論調は、左派・進歩派と共通する。

制度か視聴数か——数字が示す冷淡な現実

シャピーロが持ち出したもう一つの軸が「制度的影響力」だ。ホワイトハウス記者証、Podtracランキング、保守系ドキュメンタリーのヒット——これらは視聴数とは異なる次元の影響力を示すものとして提示された。

だが、今週のYouTubeデータはこの主張に対して必ずしも追随していない。

今週最大の伸びを見せたのはショーン・ライアンで、週間視聴数は4,014万回に達した。イラン戦争の進展——CENTCOMのイラン軍事施設85%破壊報告、トランプの中国訪問——という具体的なニュースが軍・退役軍人系コンテンツへの関心を急激に高めている可能性がうかがえる。

その中で、シャピーロは607万回。カールソン(1,313万回)の半分以下にとどまり、ライアンの約15分の1という水準だった。保守派内部のイデオロギー論争は相対的に伸び悩みを見せている。

主要インフルエンサー今週の数字

チャンネル       登録者数  前週比  週間視聴数(推計)
──────────────────────────────────────────
ショーン・ライアン   618万人  +2万人  4,014万回
タッカー・カールソン  560万人  +1万人  1,313万回
キャンディス・オーウェンズ 599万人 ±0   956万回
メーガン・ケリー    414万人  −1万人  839万回
ジョー・ローガン    2,090万人 ±0   747万回
ベン・シャピーロ    704万人  −1万人  607万回
マット・ウォルシュ   341万人  ±0   503万回
ティム・ディロン    118万人  +1万人  186万回
ティムキャスト     147万人  ±0   51万回
※5/18測定。週間視聴数は総視聴数の前週差分で算出

「原則か視聴数か」

この対立は、単なるメディア戦略の違いではない。MAGA言論空間における正統性の定義そのものをめぐる争いである。もっとも、選挙が測るのは原則ではなく動員だ。シャピーロの選択がどの程度現実の政治的影響力に接続するのか——その答えは、中間選挙の結果の中で初めて具体的な形を取ることになる。