月曜日, 5月 18, 2026
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議員トレード:ハイテク回帰の兆しと医療機器離れ──今週のSTOCK法開示から

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米議会議員の株取引開示(STOCK法)は、取引から45日以内の報告が義務づけられている。今週の開示を見ると、先週まで続いた流れに対して、小さな変化が見え始めた。

ハイテクに戻る議員がいる一方で、医療機器から大きく手を引く動きも出ている。ディフェンシブ買いは引き続き確認されるが、先週のような「半導体売り・ディフェンシブ買い」という単一方向のシグナルには、ややばらつきが出始めた。

マクガイア議員、アップル・マイクロソフト・エヌビディアを買う
先週の半導体売りの流れに対し、逆方向のポジションを取ったのがマクガイア議員(共和・バージニア)だ。5月13日付の報告書には、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)の購入が記載されている。取引日は5月1日。金額はいずれも1,001〜15,000ドルと小口ではあるが、先週開示されたキャピト議員がアップルを、テイラー議員がブロードコムとラムリサーチを売却した流れとは対照的だ。同議員は下院軍事委員会および監視・政府改革委員会に所属する。

ドナルズ議員、マーベルを買いチポトレを売る
ドナルズ議員(共和・フロリダ)の5月13日付報告書でも、ハイテクへの選別的な回帰が見られる。取引日は4月2日。売却はチポトレ(CMG)とインテュイット(INTU)、購入はイーライリリー(LLY)とマーベル・テクノロジー(MRVL)だ。マーベルはAIインフラ向けカスタム半導体で注目される銘柄で、先週売られたブロードコムやラムリサーチとはやや性質が異なる。「消費・ソフトウェア」から「ヘルスケアとAI半導体」への資金シフトとも読める。

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ベンツ議員、インテルを売却
一方で、半導体売りの流れを引き継ぐ動きも続く。ベンツ議員(共和・オレゴン)は、5月9日付の報告書でインテル(INTC)を売却している(取引日は4月9日)。先週のブロードコム、ラムリサーチに続き、銘柄を変えながら半導体が売られている構図は維持されており、対中規制などのリスク意識が完全に後退したとは言い難い。

ティナ・スミス議員、糖尿病医療機器を大規模売却
今週の開示で最も目を引くのは、スミス上院議員(民主・ミネソタ)の取引だ。5月10日付の報告書によると、インスレット(PODD)とデックスコム(DXCM)をそれぞれ2回、計4件にわたり売却。各取引は10万1〜25万ドルで、合計では40〜100万ドル規模となる。取引日は4月29日と5月7日で、いずれも配偶者名義。

両社は糖尿病管理デバイスの主要企業だが、背景として意識されるのはGLP-1受容体作動薬(オゼンピック、ウゴービなど)の急速な普及だ。長期的にデバイス需要を圧迫するとの見方は市場でも広がっている。医療政策に近い委員会に所属する議員による集中売却は、個別事例ながら注目に値する。

ピーターズ議員、農業から食品へ
ピーターズ上院議員(民主・ミシガン)は、5月11日付報告書でコルテバ(CTVA)を売却し、ペプシコ(PEP)とJ.M.スマッカー(SJM)を購入している(取引日は4月23日)。農業インプット(川上)から食品消費財(川下)へのシフトであり、関税などによるコスト上昇リスクを回避しつつ、内需型ディフェンシブへ寄せる動きと解釈できる。先週の流れとも整合的だ。

チップ・ロイ議員、配偶者に巨額RSU
チップ・ロイ議員(共和・テキサス)の報告書には、配偶者へのRSU(制限付き株式ユニット)付与が2件記載されている。1件は3月30日付で10〜25万ドル、もう1件は4月30日付で500〜2,500万ドル相当とされ、いずれもアトラス・エナジー・ソリューションズ(AESI)の株式だ。雇用報酬としての付与であり投資判断とは異なるが、議員家計とエネルギー産業の結びつきを示す開示として位置づけられる。

今週の開示を総合すると、「半導体売り・ディフェンシブ買い」という先週までの比較的揃った動きに対し、いくつかの逆方向のシグナルが加わった。マクガイアとドナルズはハイテクに戻り、ベンツは半導体売りを継続し、ピーターズはディフェンシブシフトを維持、そしてスミスは医療機器を大きく削減した。

件数や取引規模を踏まえると、明確なトレンド転換と断定するのは難しい。ただ、議員間のポジションの取り方に“足並みの乱れ”が出始めている点は確認できる。これが一時的な逆張りにとどまるのか、それとも流れの変化の前触れなのか。14日のトランプ訪中を経た来週以降の取引が、答えを示すかもしれない。