右派インフルエンサーのなかで、タッカー・カールソンの存在感は確実に増している。イラン戦を境にトランプ批判へと転じた彼は先週、ニューヨーク・タイムズの計3時間におよぶインタビューに応じた。3月のエコノミスト、BBCに続く大手リベラルメディアへの相次ぐ出演は、世の関心の高さを物語ると同時に、敵陣でも主張を貫ける論客という認識を強化させる。
トランプはネタニヤフの「人質」——カールソンの告発
トランプへの語り口は痛烈だ。
イラン戦について、トランプは支持者としての自分との「契約を破った」と述べ、「歴代アメリカ大統領が犯した最も愚かな行為」と断じた。一方でトランプ自身は戦争が「大統領としての終焉」を招くと理解し不本意だったが、「選択の余地」を奪われ追い込まれたとも主張した。背後にルパート・マードック、ミリアム・アデルソン、マーク・レビン、ショーン・ハニティといった献金者やインフルエンサーらの圧力、そしてネタニヤフ首相の影響力があるとした。
「認知症や精神的衰退の兆候はみられない」としつつも、ネタニヤフの「人質に近い」「奴隷状態」と述べ、最高権力者の意思決定が他国に縛られているとの考えを強調した。
カールソンが誰の代弁者たろうとしているかも透けて見える。前回選挙でトランプを支援した理由を、国内キリスト教徒・信仰を持つ人々への「明確な迫害」があり、トランプが「守護者になる」と信じたからだと説明。現状に「ただただ激怒している」と続けた。ベビーブーマー世代を「最も自己中心的で嘆かわしい」と切り捨て、若者が搾取されていると主張。共和党・民主党ともに「忌まわしい」と述べ、自分の立場を「奇妙な非同盟のポジション」と表現した。
ポスト・トランプについては、自ら立党または政界進出する可能性を否定しつつも、JDバンスは「難しい立場」と語った。カールソンは非介入主義者のバンスを副大統領候補に推した一人とされ、2028年出馬の憶測もある。予測市場では共和党候補者になる確率が上昇しており、現在バンス、ルビオに次ぐ3番手につける。
オーウェンズ、泥沼の訴訟へ
キャンディス・オーウェンズをめぐる法的紛争がさらに拡大した。
ニューヨーク・タイムズによれば、チャーリー・カークの元警護責任者ブライアン・ハーポールが5月1日、オーウェンズを名誉毀損で連邦裁判所に提訴した。オーウェンズがカーク暗殺の共謀にハーポールを巻き込んだと虚偽の主張をしたと訴えている。69ページにわたる訴状は、オーウェンズが「意図的かつ組織的な名誉毀損キャンペーン」を展開したと主張する。
オーウェンズは同日のポッドキャストで即座に反論し、「根拠がない」と否定。「訴訟はむしろ情報開示の機会になる」として対抗姿勢を示した。
彼女をめぐっては、フランスのファーストレディ、ブリジット・マクロンからの名誉毀損訴訟がデラウェア州裁判所で係争中であり、先月はトランプ自身が「極めてLow IQな人物」と名指しで批判した。今週は超党派の下院議員2名がオーウェンズを「反ユダヤ的なヘイトスピーチ」を理由に非難する決議を提出した。
昨年のイラン戦をきっかけにいち早くトランプから離反したオーウェンズだが、その人気は衰えない。先週一週間でYouTube登録者を1万人伸ばした。訴訟や対立そのものをコンテンツ化し、関心をトラフィックに変える構造が崩れていない。
主要インフルエンサー今週の数字
カールソンの視聴数は前週の1,225万回から1,221万回へほぼ横ばい。ケリーは910万回から1,157万回へ回復。4週連続の登録者減も今週は±0に転じた。オーウェンズは微減ながら高水準を維持。数週間の視聴数推移を見ると、トランプ批判はリスクでなくなりつつある。軍・退役軍人系コンテンツのライアン(2,381万回でトップ)を除いて、トランプ離反・距離を置く配信者が優位な傾向が固定化している。
チャンネル 登録者数 前週比 週間視聴数(推計)
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ショーン・ライアン 615万人 +1万人 2,381万回
タッカー・カールソン 559万人 +1万人 1,221万回
メーガン・ケリー 416万人 ±0 1,157万回
キャンディス・オーウェンズ 598万人 +1万人 734万回
ジョー・ローガン 2,090万人 ±0 727万回
ベン・シャピーロ 705万人 −1万人 556万回
マット・ウォルシュ 340万人 +1万人 375万回
ティム・ディロン 116万人 +1万人 171万回
ティムキャスト 147万人 ±0 84万回
※5/4測定。週間視聴数は総視聴数の前週差分で算出
カールソンとトランプ支持層の変化
中間選挙を控え、トランプの支持率は就任以来最低水準に低下している。Verasight/Strength in Numbersの調査(4月)によれば、Z世代の純支持率はマイナス54%と、1月から22ポイント悪化。無党派層もマイナス44%まで低下した。共和党内では依然として高い支持を維持しているが、わずかに低下の兆しも見える。
イスラエル支持の世代間ギャップも広がっている。ハーバード・CAPS・ハリス(4月)では、ハマスよりイスラエルを支持すると答えた割合が18〜24歳で54%、25〜34歳で60%にとどまり、65歳以上の89%と大きく乖離している
さらに、若者動員の中核だったTurning Point USAは、チャーリー・カーク死後の再建局面にある。
この文脈で見ると、カールソンの動きは戦略的に見えてくる。リベラルメディアへの出演、迫害された信仰者、ベビーブーマー世代批判、非同盟的ポジション——いずれもポストトランプを見据えたポジション調整とも読める。

