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「300×200も計算できない」──“米国で最も嫌われた男”が量子株の空売りをやめない理由

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Abstract visualization of quantum computing
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「世界中の量子コンピューターをすべて試したが、どれでも300×200の掛け算ができない」。かつて抗寄生虫薬の価格を数十倍に引き上げ、「米国で最も嫌われた男」と呼ばれた投資家マーティン・シュクレリ(Martin Shkreli)氏が、ポッドキャスト番組「All-In Podcast」の公開インタビューで、量子コンピューター株を空売り(ショート)し続ける理由を語った(YouTube配信は2026年10月12日、動画)。

同氏は2017年に証券詐欺などで有罪となり、服役も経験している。

「速く解けるのは、ほぼ1つのアルゴリズムだけ」

シュクレリ氏は冒頭、量子コンピューターを「速いコンピューター」と同一視する見方を否定した。同氏によれば、量子の要点は「アルゴリズムが1つしかないこと」にある。数学者ピーター・ショアが示した、巨大な数の素因数分解などを現実的な時間で解く手法だ。

同氏はこれを「オタクにとっては最高の手品」と認めつつ、「ビジネスの人間にとっては、素因数分解を商売にしていない限り、心躍るものはあまりない」と切り捨てた。さらに、量子にはデータを蓄える記憶装置がなく、「NVIDIAの1台にも、100万台にも勝てない」と続けた。

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「パンチカードや真空管を買うか」

量子はまだ現代のコンピューターでいうところのトランジスタ以前の初期段階にあり、いずれ発展するのではないか。そう司会から問われると、シュクレリ氏は、技術が発展しうること自体は「もちろん」と認めつつも、「パンチカードや真空管をロング(買い持ち)するか」と問い返した。初期のコンピューター技術を担った企業の多くは消え、倒産したという指摘だ。

同氏の批判は、事業モデルと時期の「両方」に向いている。GoogleやIBMが量子に年数億ドルを投じる理由を尋ねると「いつか何かが出てくるかもしれない」という答えが返ってくるとし、「それは良い事業とは思えない」と語った。

量子コンピューターは、トランプ政権が米国の優位性確立を目指す戦略投資分野だ。商務省は今年5月、量子関連9社との間で、総額20億ドルの支援に関する意向表明書(LOI)を締結。研究開発資金の提供と引き換えに、米政府が企業の株式を取得するという枠組みで、このうち少なくとも6社との間で本契約が完了している。その交渉が報じられた2025年10月、シュクレリ氏はXの投稿で、「政府はベンチャーキャピタル(VC)ではない」と批判していた。

ショートで「数百万ドルの損失」

ただし、彼の投資戦略は今のところ成功につながっていない様子だ。量子株のショートで「数百万ドル(数億円)を失った」と率直に認め、「妻には、数十億ドル分の洞察を得たと言った」と冗談で会場の笑いを誘った。

「宇宙も原子力も狂気」、本命は光コンピューター

シュクレリ氏の懐疑は、AIインフラにも及んだ。AIの設備投資で何を懸念するかと問われると、「宇宙を考えるのは狂気だ。原子力を考えるのも狂気だ」と述べ、「もっと速いコンピューターを作れるのに、地球をコンピューターで覆うのがなぜまともな考えなのか」と疑問を投げかけた。同氏が期待するのは光で計算するフォトニクスで、米マイクロソフトが2025年に英科学誌ネイチャーで発表したアナログ光コンピューターの研究にも触れた。

同氏は特定の企業名を挙げていないが、宇宙での計算を成長の柱に掲げる代表例がSpaceX(SPCX)だ。同社は2026年1月30日、軌道上のAIデータセンターとして機能させるべく、太陽光発電を行う最大100万基の衛星を地球軌道に打ち上げる計画について、連邦通信委員会(FCC)に申請を行った。上場時の目論見書では、「商業的に成り立たない可能性がある」としつつ、「早ければ2028年にも、軌道上AIコンピューティング用衛星の展開を開始する予定」としている。

もっとも、シュクレリ氏はAIそのものに弱気なわけではない。「今は半導体をロングしている」とも語っている。