中国のニューヨーク警察署開設「深い懸念」連邦議員ら政府に説明要求

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中国政府がニューヨークに警察署を開設しているとの報告を受け、米連邦議員が国務省と司法省に書簡で説明を求めた。

書簡を提出したのは、米連邦下院の共和党研究委員会のジム・バンクス委員長、マイケル・ワルツ議員、マイク・ギャラハー議員の3人を筆頭とする同委員会代表の議員21名。ブリンケン国務長官とガーランド司法長官に充てた書簡で、「中国がニューヨーク市に法執行組織を設けたとの報告に深い懸念がある」と危機感を示した。

議員らが書簡で提示したのは、福州市の発表と人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」による調査報告書。福州市は今年2月、「第一弾」として21カ国25都市に30の「福州警察華僑海外サービスステーション」を設立したとしていた。

セーフガード・ディフェンダーズは先月、ロンドンやパリをはじめ世界各地に少なくとも54カ所が設置され、アメリカではニューヨークに設けられていると報告した。報告書によると、中国政府は、「急増する国外に住む中国人による不正行為や通信網を介した詐欺行為」を取り締まる活動により、一年間で23万人を「帰国を説得する」ことに成功したと主張している。同団体は、一連の活動に、共産党中央統一戦線工作部(UFWD)に関係する「中国人海外ホーム協会(Chinese Overseas Home Associations)」が使用されている証拠があるとしているほか、国際法に触れる可能性や人権侵害につながる危険があると指摘している。

書簡では、UFWDについて、中国政府の政策に反対を唱える個人を抑圧する組織を支援していることが、米国務省によって判明していると指摘。2018年には当時の国務長官マイク・ポンペオ氏が、UFWDの不正な活動に関わる当局者や個人のビザ発給を制限している点にも言及した。

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議員らはまた、福州市の「海外警察署」は、免許証の更新といった一定の行政手続きを海外在住者に提供するためと主張しているが、少なくとも一部の国では、「中国法執行機関の機能の遂行」に関与していると報じられていると説明。「帰国を説得した」と主張している点に触れ、「国際協力のメカニズムを迂回し、亡命者の送還に関する人権記録に対する調査を免れている」と主張した。

「中国政府が米国の国土で治外法権を行使するなどあってはならない」としたほか「ニューヨークにある福州市の海外警察署が、米国の関係当局との協調のもとで設立されたか疑わしい」と、不正に設立された可能性を指摘した。

今月21日を期限に、設立の経緯や、トランプ政権下で設けられたビザ発給に関わる規則の変更の有無、外交使節法(FMA)や外国代理人登録法(FARA)といった関連法規が守られているかについて21日までに回答を求めた。

なおニューヨークポスト紙は8日、ニューヨークの非営利組織「米国長楽協会NY(America ChangLe Association NY Inc)」が、中国の警察署を所有・運営していると報じた。同組織は税務当局からブラックリストに指定されており、オフィスは、マンハッタンのロウアーイーストサイドにある中華料理店の入るビルの3階にある。設立は2013年で、慈善活動の目的を「福建省出身者の憩いの場」と掲げている。オフィスの設置には130万ドル(約2億円)を費やしているという。