米大統領選を決するのはこの3州 ペンシルベニア・ノースカロライナ・ジョージア

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米政治ニュースサイト、ポリティコの政治局長、ジョナサン・マーティン氏は、2024年の大統領選について、激戦7州のなかでも最重要州は3つに絞られると説明。ペンシルベニアとノースカロライナ、ジョージアが勝敗を決するとの分析を示した。

選挙人の票数では、激戦州を除いてハリス氏は226票、トランプ氏は219票が固いと見られている。つまり、ハリス氏は44票、トランプ氏の場合は51票を確保すれば勝利する。

マーティン氏は、ハリス氏はペンシルベニア(選挙人 19)を落とした場合、望みは「南部戦略」に託されると指摘。ノースカロライナ(16)またはジョージア(16)のどちらかを獲らなければ、ホワイトハウスへの道は断たれるとした。

現時点でのRealClearPoliticsによる世論調査の平均では、ペンシルベニアはハリス氏が0.7ポイントリードしている。ただし、ハリス氏の側近らは同州の勝利は極めて厳しいとの見解を示しているという。また、今月初めに州内で最もパープル色が強いとされるリーハイバレー地区の世論調査で、ハリス氏がトランプ氏に1ポイント遅れをとったことも懸念に拍車をかけている。

2020年の選挙で、同州が生まれ故郷のバイデン氏はトランプ氏から奪還したが、得票差は8万票(マージン1.17%)の僅差だった。ノースカロライナとジョージアは、2000年代において、民主党は1度しか勝利を収めていない。

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トランプ氏にとっても3州を制するのが最も明白な道で、すべてで勝利すればちょうど270票に到達する。

トランプ氏がペンシルベニアを抑えつつ、ハリス氏の南部ルートを遮断する戦略に出ようとしているのはテレビ広告からも明らかだという。

これまでペンシルベニアとジョージアに最大の広告費を注いでおり、さらに先週になって手薄だったノースカロライナに1,700万ドルを投じている。

鍵を握る二大支持層

マーティン氏によれば、ハリス氏にとっては、たとえペンシルベニアを競り負けても南部2州のどちらかを制すれば望みが残るということだが、接戦を制するには黒人男性と穏健派の共和党員の二大支持層の獲得が鍵を握る。

その点において、今月、共和党のリズ・チェイニー元下院議員がハリス氏への支持表明にあたって、ノースカロライナにあるデューク大学を選んだことには理由があるとした。

壇上で発表を求められたチェイニー氏は、「われわれはノースカロライナにいるのであるから、私がトランプ氏が危険だと話したことだけでなく、彼に票が流れることを阻止する何かが必要だということを人々が理解するのが極めて重要だ」と語るなど、ハリス氏への投票行動を促した。

一方、ハリス氏は先週ペンシルベニアで開催された全米黒人ジャーナリスト協会によるインタビューで、黒人男性の票が自身に当然入るとは考えていないと強調。「黒人男性が誰かの手の内にあるという思い込みで行動しないことが非常に重要だ」と述べ、「黒人男性は他の投票グループと同じだ。彼らの票を獲得しなければならない。だから票を獲得するために努力しており、黒人だから票を得られるとは思っていない」と語った。

黒人男性の有権者は、伝統的に最も一貫して民主党寄りの層とされるが、バイデン政権下で支持が減少傾向にあると指摘されている。全米黒人地位向上協会が今月実施した世論調査では、50歳以下の黒人男性の4分の1が、トランプ氏を支持すると回答した。

米報道機関の各社は、黒人男性の有権者の意見を特集で報じている。

ニューヨークタイムズが保守派になびく黒人男性11人に実施したインタビューでは、民主党には「黒人男性の若者が自動的に被害者になるという思い込みがある」、「傷ついた人々」を助けるといった民主党の態度が「侮辱的に感じる」などの意見があった。トランプ氏について「嫌いなものを好きなふりをしない」「ストリート文化と共通の要素がある」「彼は厳密には政治家ではない。ビジネスマンだ」などの意見が寄せられた。ラップ音楽との親和性を指摘する声もあった。タイムズはまた、セレブな実業家としてのトランプ氏のイメージが、同グループの男性にアピールしているとも指摘している。

PBSの番組に出演した社会正義に関する非営利団体(ミネソタ州)の創設者、ロッド・アダムス氏は、トランプ氏は黒人男性の間で評判が良いようだとした上で、多くの黒人有権者はハリス氏を「コップ」(警官)と呼んでいると指摘した。その中にはカリフォルニア州の大量投獄の推進者と主張する者がいるなど、誤解が含まれているとしつつ、「人々はトラウマを負っている。私の場合、母は刑務所に行き、父も刑務所に行った。兄弟は全員重罪犯となった。私は刑事司法制度の問題にも対処してきた。それはわれわれにとって家庭の問題の一つである」と語った。

ハリス氏は選挙集会において、特に国境問題の文脈で、カリフォルニア州司法長官時代の実績をアピールしている。

ただし、アダムス氏は、今後トランプ氏を目にする機会が増え、ハリス氏に対する人種差別的な攻撃をすればするほど、ハリス氏への支持が回復されるだろうとも見通しを示している。