中国人留学生狙った「サイバー誘拐」とは、FBIが警告

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米連邦捜査局(FBI)は3日、米国に滞在中の中国人を標的とした犯罪行為「サイバー誘拐」に関して、法執行機関を名乗る人物などからの連絡に注意を呼びかける警告を発した。

今回被害にあったのは、ユタ州の高校に留学中のカイ・ジュアンくん(17)とその家族。リバーデール市警察の発表によると、犯人はジュアン君を脅し、自主的にテントで隔離するよう命じた後、家族に身代金を要求。中国にいる両親から、8万ドルを(約1,440万円)を騙し取った。

犯行はすべて「遠隔」で行われた。犯人は、テントで隔離中のジュアン君をFaceTimeやSkypeで撮影し、あたかも側で監禁しているような写真を両親に送りつけていた。

警察は、本人が脅迫を受けた時期は不明だとしている。ただし先月20日、プロボ市の警察が、キャンプに出かけるジュアン君を呼び止めた記録が残されていることから、すでにこの時「サイバー誘拐犯に操られていた」可能性があるとみている。

警察は31日、ブリガムシティ近くの山中でテントの中にいたジュアン君を発見。「凍え、怯えて」いたという。テントの中には、電気毛布や寝袋、食料、水、「サイバー誘拐を実行するために使用されたと思われる」複数の携帯電話が見つかった。けがなどはなかった。

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「サイバー詐欺」の手口とは

FBIは、犯罪者は中国の警察などと名乗り、米国に滞在中の中国人コミュニティや留学生に詐欺をはたらいていると説明。犯人の手口を公表し、防止策を紹介した。

  • (第1フェーズ)犯人は、米国企業または中国大使館・領事館から発信されたことを偽る「なりすまし」の電話番号を用いて、被害者にコンタクトする。
  • (第2フェーズ)次に、犯人は中国の法執行機関を装い、被害者の容疑に関する詳細を文書などで知らせる。裁判のために帰国するよう促したり、逮捕すると脅したりする。
  • (第3フェーズ)捜査の機密性を保持し、無実を証明するためなどとして、ビデオや音声で24時間監視することや、事件を口外しないことに同意させる。
  • (第4フェーズ)犯人は被害者に、送金を要求したり保釈金の支払いを命じたりする。家族や友人に追加の金銭を送るよう指示したり、他の留学生に対する犯罪を命じるケースもある。

FBIは、サイバー誘拐犯からアプローチを受けた場合は、接触を停止し、金銭を渡してはならないと警告。ビデオやオーディオによる24時間の監視の求めに同意しないよう求めた。

政府機関と名乗る人物から連絡を受けた場合、(1)公的なリソース (電話帳やインターネット)で該当する機関の連絡先を確認し、(2)直接電話をすることで、「正当性」を確認することとしている。

さらに、国内で合法的に法執行活動を行う外国政府当局者は、「当局と連携して行動しなければならない」と説明。中国当局を名乗る人物から連絡を受けた場合、最寄りのFBIの事務所に連絡するよう呼びかけた。

NBCニュースによると、ジュアンさんの事件は、米国で初めて公に伝えられたケースとしつつ、オーストラリアのニューサウスウェールズやアデレード、メルボルンでも類似した事件が報告されているという。トロント(カナダ)の中国総領事館や、英国と日本の中国大使館でも、中国人留学生を狙ったサイバー誘拐に関する警告が呼び掛けられている。