ロシア疑惑捜査開始に政治バイアスなし 米司法省監察官が報告書

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マイケル・ホロウィッツ司法省監察官は、9日に公表したロシア捜査の発端に関する調査報告書で、FISA令状の申請を巡って深刻な誤りがあったとしつつ、捜査は政治的動機に基づいたものではないと報告した。

ホロウィッツ監察官は百万件の資料と100人以上の証人とインタビューを行なったとし、トランプ陣営関係者とロシア側とのつながりの捜査について「政治的偏見または不適切な動機」が、ビル・プリースタップ氏(FBI防諜部門アシスタント・ディレクター)による捜査開始の決定に影響を与えたという「資料または証言証拠はなかった」と結論を述べた。

一方で、トランプ陣営のカーター・ペイジ元外交顧問に対する外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく捜査令状申請に際し、「重大な不正確と不作為」があったと述べた。

フュージョンGPSの依頼で、ロシアとトランプ陣営のつながりについて元英国情報部員のクリストファー・スティール氏がまとめた資料(スティール文書)については、捜査開始にいかなる役割も果たさなかったと指摘。また同文書の受け取りや使用はFBIのポリシーに違反しないと、文書使用の正当性を認めた。一方、文書はFISA令状申請の決断に「中心的かつ重大な役割」を果たしたとし、FBIは申請に関わる弁護士との共有や捜査が文書に依存することに対する再評価を怠ったと述べるなど、問題があったと指摘した。

トランプ氏や一部の共和党議員はこれまで、スティール文書の使用を始め、ロシア捜査は不適切かつ政治的偏見に基づくものだと主張。捜査を「魔女狩り」と呼ぶなど、正当性を否定してきた。

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一方、ウィリアム・バー司法長官は報告書について「FBIが、極めて薄い疑惑に基づいて大統領キャンペーンの出すぎた捜査をしたことは明らか」と述べ、捜査を「正当化するには不十分」と監察官の見解に異を唱えた。また、現職または前FBI職員の少数グループによる「不正行為と職権乱用」は「FISA手続きの明らかな乱用」と批判した。

監察官の調査と並行し、バー司法長官はコネチカット州のジョン・ダーラム連邦検事を責任者に任命し、ロシア捜査の適法性を巡る調査を進めている。

ダーラム氏は監察官の報告について「我々の捜査は司法省の構成部分から得られる情報に限られたものではない」と範囲の違いを強調。「これまでに収集した証拠」に基づいて、報告書の結論に部分的に同意しないことを監察官に伝えていると発表した。