日米首脳の合意、トランプ氏再選なら撤回のリスクも、米当局者が懸念

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10日、バイデン大統領と岸田総理は首脳会談を終え、防衛面の連携強化などで合意したことを共同記者会見で明らかにした。

バイデン氏は、岸田氏の指導力のおかげで両国の関係は「真のグローバルなパートナーシップに変わった」と称賛した上で、米軍と自衛隊の「指揮統制の構造を近代化し、軍隊の相互運用性と計画を増強することで、シームレスかつ効果的に協力できるようにする」と説明。同盟関係の確立以来「最も重要な刷新だ」と強調した。

さらに「日本と米国、オーストラリアが初めて航空、ミサイル、防衛構造のネットワーク化されたシステムを構築することを発表できることを嬉しく思う」としたほか、日米英の三国間軍事演習を立ち上げることを心待ちにしているとした。

また、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」に関して、日本が「AIや自律システムを含む高度なケイパビリティー」にどのように加わることができるのか模索していくと述べた。

ニューヨークタイムズによると、バイデン氏の側近らは事前に、これまでの大統領らが第二次世界大戦の敵国を米国の「太平洋における最大の空母」に変えるものと呼んできた60年安保条約の最大の刷新になると説明していたという。

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ある政権当局者は、11月の大統領選を前に、日本との間にできるかぎり永続性を作り出すことを目標の一つと語ったともいう。

トランプ氏が政権に復帰した場合、バイデン氏とその他の大統領らが推進してきた「国際的な関与」を継続するかについて、日本を含む各国政府は懸念しているといい、別の当局者は、トランプ氏が再選すれば、今回のような発表の撤回に動くという現実的なリスクがあると述べたという。

バイデン氏は経済面でのつながりも「かつてないほど強固」であると強調したが、日本製鉄によるUSスチールの買収について、アメリカ人労働者との約束を守ると述べるなど、これまでの消極的な姿勢を維持する考えを示した。一方の岸田氏は「日米両国にとって良い話し合いになることを期待している」とした上で、「法に基づいて適正に手続きが進められると考えている」と慎重に答えた。

安全保障の専門家からは、これに疑問を呈する声も上がっている。

買収取引をめぐっては、重要な技術が敵国に提供される場合にのみ阻止されるのが通常だという。ハーバード大学名誉教授で、クリントン政権で日本との防衛協力の策定に関わったというジョセフ・S・ナイ・ジュニア氏はタイムズに「最も近い同盟国による企業買収を阻止するという考えは、同盟構築の観点から意味がない」と指摘した。