水曜日, 6月 10, 2026
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トランプ一族の関わるフィンテック、上場廃止の危機——アクセスは成功につながらない

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©MashupReporter

トランプ一族の関わる企業が、NASDAQ上場廃止の危機に直面している。トランプブランドへのアクセスを手に入れても、成功は別問題——そんなことを教えてくれる好例かもしれない。

CNBCによると、NASDAQで取引されるALT5 Sigma(4月にAI Financialに改名)の株価は、約半月の間1ドルを下回っている。NASDAQでは30日間連続で1ドルを下回ると上場廃止となる可能性がある。

フィンテックの看板、実態はトレジャリー企業

同社は1970年代にミネソタ州でリサイクル業をスタートした。2019年にバイオテック事業に進出し、2024年にフィンテックに鞍替え。ALT5 Sigma Corporationに改称し、NASDAQで取引を開始した。ホームページでは、デジタル資産のグローバルな決済・取引インフラの提供を謳い、累計暗号資産取引処理実績は80億ドル以上に達するとしている。 しかし財務諸表が映し出す実態は異なる。

同社の財務開示によると、2026年第1四半期(13週)の事業収益はわずか$4.7M。前年同期の$4.8Mからほぼ横ばいで、後述する$15億ディール後も事業規模に変化はない。同期の純損失は$271.5Mに達したが、その主因は保有する暗号資産の時価評価損$348.3Mだ。税効果による一部相殺を経てもなお$271.5Mの損失が残った。フィンテック事業そのものの損益は、この数字の前では誤差の範囲に過ぎない。

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バランスシートを見ると、総資産$959.7Mのうち73.6%にあたる$706.4Mが暗号資産として計上されている。CNBCの報道等によれば、その実態はWLFIガバナンストークンだ。決済事業の実態は年間売上約$19M規模の小企業であり、会社の命運はトークン価格という外部変数が握っている。 これはフィンテック企業ではなく、トレジャリー企業——より正確には、「換金できない単一トークンを抱えたまま事業収益で延命を試みる器」と読める。

タイムズスクエアのベルは鳴ったが、株価は鳴らなかった

ALT5 Sigmaとトランプ一族ビジネスの接続が公になったのは昨年8月だ。NASDAQ公式は8月13日、World Liberty Financial(以下WLFI)とALT5 Sigmaが「$15億規模の資金調達完了とWLFIトレジャリー戦略の採用を記念し」タイムズスクエアのNASDAQマーケットサイトを訪問したと伝えた。オープニングベルを鳴らしたのは、WLFIのCEOで新たにALT5取締役会長に就任したザック・ウィトコフ、取締役に就任したエリック・トランプ、そしてオブザーバーとしてトランプ・ジュニアらだった。

WLFIは、エリックとジュニア、トランプ大統領の中東交渉特使スティーブ・ウィトコフの息子ザックらが立ち上げた分散型金融プロトコルだ。

ディールの中身は2段構えだった。ALT5は自社の株式・ワラントをWLFIに渡し、その対価としてWLFI 73億枚を受け取った。同時に一般投資家から$7.50/株で7.5億ドルを調達し、その現金をWLFIに支払って追加トークンを取得した。取得価格は1トークンあたり$0.20。 WLFIのプレセールは2024年10月に$0.015でスタートし、2025年1月に$0.05の第2弾を追加販売していた。ALT5の取得価格はプレセール最終価格の4倍に相当する。

売りたくても売れない

なぜ売らないのか。実は、売りたくても売れない構造になっている。 ALT5が保有するWLFIトークンは、8月の契約条件によってロックアップされており、売却できない。

2025年9月1日のTGE(トークン生成イベント)で流通が開始されたWLFIは、直後に$0.343の高値をつけたものの、そこから一方的な下落が続いた。10月に$0.10、2026年6月現在は$0.057前後。ATHからの下落率は約78%だ。ALT5は保有資産が$706.4Mまで目減りするのを見ながら、手を打てないでいる。

さらに2026年1月、ALT5はWLFIから$15Mを借り入れ、その資金で自社株の市場買い付けを行ったが、株価の回復には至らなかった。

カネの流れ——75%は一族へ、93%の損失は一般投資家へ

CNBCの報道によれば、WLFIトークンの売却収益はトランプ家に75%が配分される契約になっている。今回のディールにおける直接利益は、費用控除後で約$5億と推定される。 一方、ALT5の株式を$7.50で購入した一般投資家はどうなったか。2026年6月時点の株価は66セントで、93%の下落だ。

機関投資家も例外ではなかった。報道によれば、ニューヨーク・メッツのオーナーとして知られるSteven A. Cohen率いるPoint72は$3,650万を投じて年内に全株売却。ExodusPointは$4,400万の投資に対して3月末時点で$1,400万超の含み損を抱えていた。香港のSoul Ventures Holdings($8,500万投資)は10月に全株を売却し、$5,600〜5,800万の損失を出した可能性がある。 トランプ家が最大の受益者である一方、一般投資家は93%の下落を被った。

アクセスは手に入るが、成功は別問題

投資家らは、トランプ暗号資産ビジネスへの間接的なエクスポージャーを好機と考えたかもしれない。しかし「トランプ関連」というブランドは、リターンを保証しない。ALT5のデジタル決済インフラ事業の売上は$15億ディールの前後で変わらず、株価は90%超下落した。 加えてもうひとつの問いがある。「分散型」を標榜するプロトコルが、自らが人的・資本的に支配できる上場企業を通じてガバナンストークンを大量保有させる——この構造は、DeFiが本来約束した権力の分散と整合しているのだろうか。

なお、トランプ・オーガニゼーションの広報担当は「エリックもドン・ジュニアも、ALT5への関与は一切なく、リーダーシップチームも知らず、事業にも関与したことがない」と述べている(CNBC報道より)。ホワイトハウスも「利益相反はない」としている。