キャシー・ウッド(Cathie Wood)率いるARK Investは今週、暗号資産関連のエクスポージャーを組み替えた。週初には自社のビットコイン現物ETFを約1,700万ドル売り、週を通じてサークル(CRCL)、ロビンフッド(HOOD)、コインベース(COIN)の株を計約2,950万ドル買った。
買いの一部は、暗号資産交換所Binance(バイナンス)から約63億ドル相当の暗号資産が不正に引き出されたとされる事件を受け、関連株が軒並み急落した10月30日に入っている。一方、同じ日に交換所運営のBullish(BLSH)は小幅に売った。(金額は、売買株数に各取引日の終値を掛けた概算)
ビットコインETFを減らし、関連株へ
ARKネクスト・ジェネレーション・インターネットETF(ARKW)とARKブロックチェーン&フィンテック・イノベーションETF(ARKF)は、10月26日と28日に「ARK 21シェアーズ・ビットコインETF(ARKB)」を計64万3,392株(約1,710万ドル)売った。ARKBはARKがスイスの21Sharesと組んで運用する、自社のビットコイン現物ETFだ。
ARKWでは26日の1日でファンドの0.76%分を売り、保有株数は週初から約2割減った。ARKWとARKFの2本合計でも約17%減っている。ARKは、ビットコイン全体へのエクスポージャーを圧縮しながら、下落した暗号資産関連の個別株に資金を振り向けた可能性がある。ただし、売買の理由は公表していない。
その一方で、サークル株を26日、27日、30日の3日間で計17万5,912株(約1,360万ドル)、ロビンフッド株を28日と30日に計11万3,175株(約1,030万ドル)、コインベース株を30日に3万9,418株(約570万ドル)買った。
暗号資産関連に限ると、今週は買いが約2,950万ドル、売りが約2,280万ドルで、差し引き約670万ドルの買い越しとなる。ビットコイン(BTC)は週初の8万ドル台から30日には7万7,320ドルまで下げ、週間で約3.5%下落した。ARKBも同期間に5.5%下げている。
Binanceから約63億ドル流出、過去最大規模
相場を冷やしたのは、世界最大の暗号資産交換所Binanceをめぐる大規模なセキュリティー事故だ。米CNBCなどによると、10月29日に同社のウォレットから約63億ドル相当の暗号資産が不正に引き出された。2025年2月にBybitで起きた約15億ドルの流出を大きく上回り、暗号資産の盗難としては過去最大規模とされる。
ブロックチェーン分析のTRM Labsは、約63.6億ドルが10のブロックチェーンにまたがって移されたと分析し、北朝鮮系のハッカー集団「TraderTraitor」の犯行と「高い確度で」判断した。Binance自身は、特定の個人や組織による犯行とはまだ断定していない。
Binanceは出金を一時停止した。預入は影響を受けていないとしている。共同CEOのリチャード・テン(Richard Teng)氏は損失を全額、会社の資金で補填すると表明した。31日には盗まれた資産の9割を補充したと説明し、11月1日に出金を再開する予定としている。
流出した資産のうち約30億ドルは凍結された。米ドル連動のステーブルコインを発行するテザーは15億6,700万ドル超のUSDTを、サークルは約8億ドルのUSDCを、法執行機関と連携して凍結したと報じられている。
決算と流出事件が重なったコインベース
コインベースは29日の取引終了後に7~9月期決算を発表した。売上高は前年同期比35%減の12億1,560万ドルだった。純利益は7億1,870万ドルと黒字となったが、その大半は保有する暗号資産の評価益によるものだった(関連記事「【決算ウォッチ】コインベース、売上35%減でも純利益7億ドル 大半は暗号資産の評価益」)。
決算と流出事件が重なった30日、コインベース株は10.6%安の143.54ドルで引けた。同社は、Binanceの事件の影響は受けていないとしている。ARKがARKイノベーションETF(ARKK)、ARKW、ARKFの3本で買ったのもこの日だ。同じ30日には、サークル株も9.3%、ロビンフッド株も7.2%下落している。
サークル株は今週、週初から下げていた。26日には米みずほ証券が投資判断「Underperform」を維持し、目標株価を45ドルから43ドルに下げたと報じられ、株価は7.1%下げた。ARKWはこの日も買っている。サークル株の週間下落率は15.6%に達した。
ARKKの10月30日付の保有資料(29日の終値で評価)によると、サークルはARKKの資産の4.65%を占め、テスラ(10.77%)とSpaceX(6.15%)に次ぐ3番目の組み入れ銘柄だ。ARKK、ARKW、ARKFの3本では29日時点で約585万株を持ち、30日の買いを加えると約592万株になる。
Bullishは4%だけ売却
交換所を運営し、米暗号資産メディアCoinDeskも傘下に持つBullishは、30日に16.1%下げて23.90ドルで引けた。ARKはこの日、ARKK、ARKW、ARKFの3本で計23万8,373株(約570万ドル)を売った。
ただし、3本の保有株は約600万株あり、売ったのはその約4%にとどまる。売却後も約577万株(30日の終値で約1億3,800万ドル)を持ち続けている。ARKは2026年に入り、コインベース株を売ってBullish株を買う入れ替えを進めてきたが、今週の売買はその流れの逆となった。
その他のハイライト
ARK自律技術&ロボティクスETF(ARKQ)とARK宇宙・防衛イノベーションETF(ARKX)では、26~28日の3日間でAMD(AMD)と台湾TSMC(TSM)を売り、防衛ドローンのエアロバイロンメント(AVAV)、クラトス・ディフェンス(KTOS)、eVTOL(電動垂直離着陸機)のアーチャー(ACHR)とジョビー(JOBY)を買った。ARKXでは売りがファンドの約2.6%、買いが約2.6%と、ほぼ同じ規模での入れ替えだった。ARKQは、自動運転トラックのKodiak AI(KDK)を4日連続で買っている。
28日には、前日に決算を発表した半導体検査装置のテラダイン(TER)を3本で計7万4,691株買った。テラダインは前週に売っていた銘柄だ。AI半導体のセレブラス(CBRS)も28~29日に買い増した。
ARKKは30日、イーライリリー(LLY)をファンドの0.39%分売り、遺伝子解析のイルミナ(ILMN)を買った。ARKゲノム革命ETF(ARKG)は、遺伝子編集のビーム・セラピューティクス(BEAM)を4日連続で買った。
今後の注目点
サークルは11月4日に7~9月期決算を発表する。USDCの流通量と、金利低下が準備金の運用収入に与える影響が焦点になる。欧州では11月12日から、USDCの準備金の監督を欧州銀行監督機構(EBA)が担い、銀行預金で持つべき比率が上がる。(関連記事「EU、USDCを初の「重要ステーブルコイン」に指定――信認か、Circleの新たなコストか」)
Binanceについては、出金の再開が予定どおり進むかと、凍結されていない約30億ドルの行方が、暗号資産市場の不安が和らぐかどうかを左右しそうだ。




