月曜日, 5月 11, 2026
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議員の財布:続くリスクオフ──半導体売りとディフェンシブ買い、今週のSTOCK法開示から

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米議会議員の株取引開示(STOCK法)は、取引から45日以内の報告が義務づけられている。今週の開示をざっくりと要約すると、流れは明確だった。

半導体は売り。
生活必需品・保険・決済などのディフェンシブ銘柄は買い。
そして一部では、債券選好も続いている。

先週は「NVIDIAや住宅関連を売り、地方債や住宅債へ移す動き」が目立ったが、そこに「ディフェンシブ株への着地」が加わった。リスクオフの流れが続いている。

テイラー議員、半導体を売りP&Gへ
もっとも象徴的だったのが、テイラー議員(共和・オハイオ)の取引だ。
5月7日付の報告書では、ブロードコム(AVGO)とラムリサーチ(LRCX)をそれぞれ2件売却。一方で、P&G(PG)、プログレッシブ(PGR)、ビザ(V)を購入していた。取引日はすべて4月27日。半導体を整理し、内需・生活防衛型の銘柄へ資金を移した構図に見える。

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キャピト議員もブロードコムを売却
キャピト議員(共和・ウェストバージニア)も、配偶者名義でブロードコム(AVGO)、アップル(AAPL)、コンステレーション・エナジー(CEG)を売却していた。取引日はAVGOが4月13日、AAPLとCEGが4月17日。テクノロジーとエネルギーの双方で利益確定を進めた形だ。

ブーズマン議員、逆にエネルギーを買い増し
一方で、ブーズマン議員(共和・アーカンソー)は逆方向に動いた。
4月2日にコンステレーション・エナジー(CEG)、4月9日にデボン・エナジー(DVN)を購入。同時に、短期国債ETFのTBLLを売却している。短期国債からエネルギー株へ資金を移した格好だ。

興味深いのはタイミングだ。DVNを買い増した4月9日は、停戦発表の直後にあたる。地政学リスク後退が意識される局面でも、あえてエネルギーを積み増したことになる。CEG(原子力)とDVN(原油)の組み合わせを見ると、「停戦してもエネルギー不安は残る」という見方と、「有事後も見据える」という両面の発想が透ける。ただ、同じCEGについては、キャピト議員が4月17日に売却している。同じ銘柄でも、議員によって判断は割れている。

コカ・コーラ、米国債──ディフェンシブ選好は続く

そのほかにも、ディフェンシブ寄りの動きは続いた。

ドゲット議員(民主・テキサス)はコカ・コーラ(KO)を購入
アレン議員(共和・ジョージア)は2031年満期の米国債を購入
ハーン議員(共和・オクラホマ)はゴールドマン系中期債を売却
ワグナー議員(共和・ミズーリ)は地方債2件を売却

ワグナー議員のケースは満期到来に伴う処理とみられるが、全体としては「安全資産を維持しつつ、株式側ではディフェンシブへ寄る」という流れが目立つ。

半導体売りの背景に「MATCH法」?

今週の開示でもう一つ気になるのが、半導体売りと輸出規制議論のタイミングだ。

テイラー議員がラムリサーチとブロードコムを売却した4月27日は、下院外交委員会が輸出規制関連法案「MATCH法」を含む法案群を一括採択した5日後にあたる。

MATCH法は、中国向け半導体製造装置の輸出規制を同盟国にも揃えさせることを狙う超党派法案だ。ラムリサーチは売上高の4割超を中国に依存しているとされ、初期案では同社主力装置の対中全面禁輸も盛り込まれていた。

さらに興味深いのは、キャピト議員がブロードコムを売り始めたのが4月13日と、委員会採択より前だった点だ。

もちろん、STOCK法の開示だけで個別イベントとの因果関係を断定することはできない。報告は最大45日前まで遡るため、偶然の一致である可能性もある。それでも今週の開示は、半導体売り・ディフェンシブ買い・エネルギー判断の分裂・債券選好の継続という複数の流れが同時に現れた週だった。MATCH法の審議、停戦後も続くホルムズ封鎖、14日に迫るトランプ訪中——不確実性が重なる中で、ワシントンのマネーは静かにポジションを変えている。