米政府は、どの企業に、どれだけの資金を流しているのか。公開データベース「USAspending.gov」には、連邦政府が発注した契約がほぼリアルタイムで記録されている。月次データをもとに「政府マネー」の動向を追う。
4月の全体像:契約総額は約$29.6B
2026年4月の米連邦政府契約(Contracts)は、総額約$29.6B(約4.4兆円)、約1万6000件を記録した。省庁別では、エネルギー省(DOE)が約$8.6Bで首位。退役軍人省(VA)、国土安全保障省(DHS)が続いた。上位5省庁だけで全体の約77%を占める。(省庁別・受注企業別ランキング)
4月最大の特徴は、核・エネルギー関連契約が全体の約37%を占めたことだ。DOEを中心に、ロスアラモス、サンディア、オークリッジ、サバンナリバーなど、米国の主要核施設・国立研究所に関する運営、廃炉、廃棄物処理契約が集中した。
これは新規政策というより、複数年契約の更新タイミングが重なった影響が大きい。ただ、その規模は「核インフラ維持」が依然として国家支出の中核であることを示している。
注目企業:政策テーマで見る4月の受注動向
4月の受注上位50社のうち、上場している企業は16社。合計受注額は約$6.1B(20%)に達した。(省庁別・受注企業別ランキング)
Palantir(PLTR):「農業安保」で新たな地平
4月の注目企業のひとつがPalantir(PLTR)だ。受注額は約$191M。その大半を、USDA(農務省)とDHS(国土安全保障省)が占める。
4月22日、同社はUSDAと最大$300M規模のブランケット購入契約を締結したと発表した。米国農地の安全保障と農家向けサービスのデジタル化を目的とした「National Farm Security Action Plan」を支援するもので、農業プログラムの不正・外国資本(中国系含む)による農地買収への対策が背景にある。
Palantirはこれまで、防衛・情報機関向け企業として語られることが多かった。だが現在は、農業・移民管理・医療へと政府事業の幅が広がっている。
Accenture(ACN):DOGE懸念は限定的
4月の受注は$249Mを記録し、FY2026過去7ヶ月の累計(10月〜4月)は$1.5Bに達した。(FY2025通年の政府向け受注は$3.2B)
なお、同社のFY2025 Q4決算では売上高$17.6B(前年比+7%)を達成し、DOGEによる連邦支出削減の影響が限定的であることが数字で示された。連邦政府向け事業は全売上の約8%に留まる。FY2026の業績予想では連邦事業の影響として1%の減収を織り込んだ上で、全社成長率3〜5%を見込んでいる。
GEO Group(GEO):移民政策の受け皿
移民収容・拘置所運営大手が$139Mを受注。トランプ政権の移民取り締まり強化方針のもと、ICEの収容容量拡大が続いており、その直接的な受け皿となっている。
足元では提携モデルの大きな転換が進行中だ。
トランプ政権はICEの収容網を「リースから所有」へ転換する方針を打ち出している。GEO GroupはICEに対して複数施設の売却交渉を進めており、CEO George Zoleyは4月末の決算説明会で「施設の売却と、売却後の長期サービス管理契約の継続について協議中」と明言した。ICEが目指す「ターンキー施設」の購入候補として10施設が俎上に上がっているという。
ただし政策執行には逆風も続く。ICEが整備を進めてきた大型倉庫型施設(11棟購入済み)はいずれも未稼働で、共和党地方議員からの反発・住民訴訟・環境訴訟が相次いでいる。メリーランド州やアリゾナ州では、訴訟による工事中止の事態も起きている。Zoleyは「倉庫プロジェクトは一時停止中で、DHS全体として対応を検討している」と述べており、計画の見直しが示唆されている。
政権の目標は収容容量100,000床。現状の約70,000床からの拡大にはGEO・CoreCivicといった民間業者の協力が不可欠で、施設売却後も「長期管理サービス契約」として継続収益を確保するモデルへの移行が、両社の株価材料として注目される。
Shionogi(塩野義製薬・4507.T):バイオテロ対策の国家備蓄契約
日本企業として唯一上位50社にランクインした塩野義製薬の米子会社(ニュージャージー州)が、4月8日にBARDA(生物医学先端研究開発局)のProject BioShieldプログラムを通じて$119Mを受注した。(契約番号:75A50126C00004)
対象薬剤はFetroja®(セフィデロコル)。世界初のシデロフォア系セファロスポリン抗菌薬で、通常の抗生物質が効かない多剤耐性グラム陰性菌に対して有効な「最後の砦」的薬剤だ。
契約が定める用途は4つ。①米国内のFetroja製造拠点の設立、②Fetrojaの政府備蓄調達、③バイオテロ高優先度病原体(類鼻疽菌=Burkholderia pseudomallei およびペスト菌=Yersinia pestis)への適応拡大研究、④小児患者向けのFDA補足新薬申請(sNDA)。単なる備蓄ではなく、製造・研究・規制申請を一体で手当てする包括的な国家安全保障投資だ。
契約期間は2026年4月〜2036年3月の10年間。今回の$119Mは初期資金で、オプション行使により最大$482Mに拡大する可能性がある。
背景にあるのは米政府の医薬品国内製造回帰政策だ。トランプ政権は2025年5月の大統領令で製造施設の国内設置を促進し、2026年2月にはFDAが審査迅速化パイロットを開始した。塩野義はその流れに乗り、米国内製造拠点の構築費用を政府に負担させながら事業拡大を加速させる形となる。
「消えた」国防総省
通常、月間$40〜50B規模の調達を行う国防総省(DoD)が、今月は29位・$8.95Mにとどまった。
これは主にデータ遅延によるものと考えられる。DoDの契約データは他省庁と異なり、登録・公開まで最大90日の遅延があることが公式に認められている。4月分の防衛調達は今後数ヶ月にわたって順次反映される見通しで、今月のデータはその速報値に過ぎない。
政権発足当初に話題となったDOGEによる契約削減も影響している可能性はあるが、Accenture・Booz Allenなどの受注が維持されていることを踏まえると、全面的な契約停止というよりは選択的な見直しにとどまっているとみられる。
*データについて
本記事に使用したデータは、USAspending.govの「Contracts」のみが対象。補助金(Grants)やローンは対象外。
受注企業は法人単位(UEI)であり、同一企業の複数法人は別カウント。
DoD(国防総省)データは遅延が大きく、実際の契約状況とデータに乖離。

