トランプ再選、米国によるイラン攻撃、そして米国の敗北——2024年の授業でこの3つを予測し、SNSで話題となった中国系カナダ人の教育者・Jiang Xueqin(江学勤)が、クリスタル・ボールとサーガー・エンジェティが共同ホストを務める独立系政治YouTube番組『Breaking Points』に出演。イラン戦に踏み切った背景と今後の展開について見通しを語った。
Xueqinは、米国の敗戦によって世界秩序が永久に変わると主張してきた。インタビューでは、その根拠をイランが対米・対イスラエルで軍事・経済の両面において優位に立てるからだと説明した。
イランの「20年分の準備」
Xueqinによると、イランは過去20年にわたり多くの「予行演習」を重ねてきた。ヒズボラ・ハマスなどの代理勢力および2025年6月の12日間戦争を通じて、イスラエルと米国の能力や思考パターンをすでに把握しており、今回の戦闘に十分な準備時間もあったという。
その上でイランは今、湾岸諸国の米軍基地を含む重要インフラを標的とした「世界経済全体への攻撃」を行っていると指摘した。
ホルムズ封鎖と「水・食糧」の脅威
Xueqinはインタビュー中でイランがホルムズ海峡を封鎖し、さらに海水淡水化プラントを攻撃する可能性を警告した。
3月2日、イラン革命防衛隊(IRGC)の上級顧問エブラヒム・ジャバリが「海峡は閉鎖された。通過しようとする船はすべて革命防衛隊と正規海軍が炎上させる」と宣言。「石油パイプラインも攻撃し、この地域から1滴の石油も出さない。石油価格は数日以内に200ドルに達する」とも述べた(Al Jazeera、2026年3月2日)。サウジアラビアのラス・タヌーラ製油所もドローン攻撃を受け、QatarEnergyはLNG生産を停止。ガス価格はヨーロッパで約50%、アジアで約40%急騰している。
Xueqinが特に強調するのは、海水淡水化プラントへの攻撃がもたらす壊滅的な影響だ。GCC諸国(湾岸協力会議加盟国)の飲料水供給の大半は海水淡水化に依存しており、仮にリヤドのプラントが破壊されれば、人口1000万人の都市が2週間で深刻な水不足に陥るという。食糧輸入も主要品目の一部がホルムズ海峡経由に大きく依存しており、封鎖が続けばGCC諸国の存続自体が脅かされると説明した。
湾岸経済とアメリカ経済の連鎖
さらにXueqinは、湾岸経済がアメリカ経済の根幹を支えている点が重要だと強調する。
「彼らはペトロダラーを売り、そのペトロダラーを株式市場への投資を通じてアメリカ経済に環流させている。現在、アメリカ経済全体はデータセンターへのAI投資によって支えられており、その多くが湾岸諸国から来ている。湾岸諸国が石油を売れなくなり、アメリカのAI投資を資金援助できなくなれば、AIバブルが崩壊する。それとともに、金融的なポンジ・スキームにすぎないアメリカ経済全体も崩壊するだろう」
「5万ドルのドローン対100万ドルのミサイル」——非対称戦争の罠
軍事面では、長期戦になれば米国に不利だと述べる。米国の軍事力は冷戦対応の設計で、21世紀の戦争には対応できていないというのがその理由だ。
莫大なコストで築かれた米国の「筋肉の誇示」に対して、イランは5万ドルのドローンで100万ドルのミサイルを撃ち落とそうと試みている。このコスト非対称性が米国の長期戦を構造的に不可能にすると指摘したうえで、「今私たちが目にしているのは、過去20年間——特にソ連崩壊以降——アメリカの覇権を支えてきた無敵神話の崩壊だ」と語った。
地上軍投入は不可避か
米国による地上軍投入の可能性も高いとの見方を示した。
「歴史上、空爆だけで体制転換を実現できた前例はない」とし、イランに苦しめられるGCC諸国とイスラエルからの圧力が強まると指摘。ペトロダラーの崩壊を防ぐためにこれらの国々を守らなければならないという政治的・経済的論理が、地上軍投入を促す方向に働くと述べた。
トランプが攻撃に踏み切った3つの理由
世論の反対や軍部の懸念にもかかわらずトランプが攻撃を決断した背景として、Xueqinは3つの理由を挙げる。
第一は「過信」。 ベネズエラのマドゥロ拘束作戦の成功が、米軍に対するトランプの自信を過剰に高めた可能性があるという。「歴史を通じて繰り返されているパターンだ。ヒトラーがなぜスターリンに侵攻したのか?ヨーロッパを実に容易に征服し、自分は無敵だと思ったからだ。その結果、ドイツ軍はソ連で壊滅した」と述べた。
第二はトランプ個人の利益。 サウジアラビアによる娘婿ジャレッド・クシュナーのエクイティファンドへの20億ドル拠出、親イスラエルの富豪、ミリアム・アデルソンらによる多額の政治献金はイラン攻撃の見返りとの見方を示した。
さらに3期目続投への布石の可能性を指摘。 「トランプは3期目を狙っている。選挙では難しいが、戦争が続いていれば選挙の延期も可能で、緊急戦時権限があり、国旗のもとに国民が結集すれば、3期目を実現できる可能性がある」と語った。なおトランプは昨年12月、ハヌカのキャンドル点灯式での演説で、ミリアムから2億5000万ドルの支援の申し出があったことを明かした。この場では、壇上に招かれたミリアムが、ユダヤ系弁護士のアラン・ダーショヴィッツとトランプの3期目の合法性について議論したと語り、会場から「あと4年」という声が上がる場面もあった。
最後にXueqinは、陰謀論的な主張も加えた。「エプスタインファイルから世界が秘密結社により運営されていることは明らか」とし、イエズス会・サバタイ・フランキスト・フリーメイソンのメンバーらが中東での戦争を終末と地上天国の創造に向けた鍵と信じ、地政学的な合理性を超えて世界を動かそうとしていると語った。
Xueqinはハーバード大学教育大学院のGlobal Education Innovation Initiative研究員、英国王立芸術協会(RSA)フェローを務めた人物だが、専門は英文学と教育改革であり、地政学・安全保障は独学の域を出ないとの指摘もある。歴史的類推の手法への批判や、ロシア国営メディア(RT)への出演を踏まえると、一定のバイアスには注意が必要だ。ただし陰謀論的な主張を除く主要な論点には一定の説得力があり、「北京在住の中国系カナダ人」という立ち位置から、主流の欧米メディアとは異なる視座を提供している。







