2月28日未明、トランプ大統領はイスラエルと共同でイランへの軍事攻撃を開始した。議会の承認を経ない先制攻撃に対し、民主党議員を中心に戦争権限法に基づき提出された決議案の採決を求める声が即座に噴出している。
1973年に成立した戦争権限法(War Powers Resolution)は、大統領の軍事力行使に対する議会の監視権限を定めた法律。大統領は軍隊を敵対行動に投入した場合、48時間以内に議会へ報告する義務を負い、議会の宣戦布告や授権なしには60〜90日以内に部隊を撤収しなければならない。ただし歴代政権は事実上この制約を回避してきた。
先月ランド・ポール上院議員(共和・ケンタッキー州)と共同で「議会承認のないイランに対する敵対行為から米軍を撤退させるよう命じる」決議案(S.J.Res.104)を提出しているティム・ケイン上院議員(民主・バージニア州)は、今回の攻撃を受け、X(旧Twitter)でこう訴えた。
「上院は即座に召集し、私の戦争権限決議の採決を行うべきだ。全議員がイランへのこの危険で不必要かつ愚かな行動について、記録に残る形で立場を表明しなければならない」— Tim Kaine (@SenTimKaine)
同決議案の共同提案者はポール議員を含む13人。ただし昨年(2025年)6月にも同種の決議案が提出されたが、トランプが離反者封じ込めに成功し、ディスチャージ動議(委員会の承認なしで本会議に強制的に進める動議)が47対53で否決。本会議の議題にすら上がらなかった。その際、共和党側でただ一人賛成票を投じたのがポール議員であり、唯一の民主党反対票がペンシルベニア州選出のフェッターマン議員だった。この「ポール対フェッターマン」の構図は今回も繰り返される公算が大きい。
実際、ジョン・フェッターマンは今回の攻撃開始直後、こう投稿した。
「トランプ大統領は地域に真の平和をもたらすために正しく必要な行動を取った。米国と我が軍に神の加護を」— John Fetterman (@SenFettermanPA)
イスラエル・中東がらみになると、民主党は一枚岩とはいかない。フェッターマン議員はその象徴的存在だ。
下院では、ロー・カンナ議員(民主・カリフォルニア州)とトーマス・マッシー議員(共和・ケンタッキー州)が超党派での決議案提出を求め、週内に採決を呼びかけた。
「トランプはイランで違法な政権転覆戦争を始め、米国人の命を危険にさらした。議会は月曜日に召集し、マッシー議員と私のWPR(戦争権限決議)を採決すべきだ」— Ro Khanna (@RoKhanna)
「私はこの戦争に反対する。これは『アメリカ・ファースト』ではない。議会再開後、カンナ議員と共にイランとの戦争について議会の採決を強制するよう動く」— Thomas Massie (@RepThomasMassie)
ただし下院側の決議は「両院一致決議(concurrent resolution)」と呼ばれる形式であり、大統領の署名を必要としないが法的拘束力についても議論がある。さらに上院同様、ニュージャージー州のジョシュ・ゴットハイマー、フロリダ州のジャレッド・モスコウィッツ、オハイオ州のグレッグ・ランズマンといった親イスラエル派民主党議員が難色を示す可能性も指摘されている。
SNS上では法律論争も勃発している。共和党のマイク・ローラー下院議員(ニューヨーク)は「大統領は第2条および最高司令官として行動する権限を持つ。この攻撃が違法だという主張は誤りだ」と宣言し、バイデン・オバマ両政権が議会承認なしに複数の攻撃を行った実績も引き合いに出した。これに対し、クリス・マーフィー上院議員(民主・コネチカット)が即座に切り返した。
「マイク、あなたは明らかに戦争権限法を読んでいない。あなたが書いたことはすべて間違いだ。同法は事前の議会承認または米国への攻撃への応答がない限り、軍事行動を明確に禁じている」— Chris Murphy (@ChrisMurphyCT)
戦争権限法の特則では、単純過半数があれば委員会の承認なしに本会議で審議・採決できる。上院では最速で来週火曜日にも手続き的採決が行われる見通しだという。ただし昨年の前例(47対53で否決)を踏まえると、共和党からの造反票を十分に集められる可能性は低い。下院は共和党が218対214という薄氷の多数だが、親イスラエル派民主党議員の反対が見込まれる中、可決へのハードルは一層高い。
仮に両院で決議が可決されても、トランプ大統領が拒否権を行使する可能性が高く、覆すために必要な3分の2の賛成票を確保するのはほぼ不可能とみられる。
それでも採決には意味がある。今回の投票は「誰がトランプの軍事行動に白紙委任を与えたか」を公的記録として残す。中間選挙を控えた議員にとって、この記録は対立候補の攻撃材料になりうる。また、トランプの党内影響力、議会の親イスラエル姿勢の変化を測る一つの目安にもなる。
どの議員がどちらに票を投じるか──その記録が、2026年秋の選挙戦で繰り返し参照される素材になる。

