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AI大手、選挙資金で主導権争い 州規制か統一ルールか

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Koshiro K / Shutterstock.com

中間選挙を控え、AI業界が政治資金を通じて規制の主導権争いを強めている。争点は単なる技術政策ではなく、州と連邦のどちらが規制権限を握るのかという構造的な問題だ。選挙結果は、今後のAI規制の枠組みや企業の事業環境に影響を及ぼす可能性がある。

現在、資金の流れは大きく二つの立場に分かれる。一つは、安全対策を優先し、連邦議会が包括的な法整備を整えるまで各州の規制に委ねるべきだとする立場。もう一つは、州ごとの規制の寄せ集め(パッチワーク)に反対し、連邦の統一規制を推進する立場である。


州規制派の動き

州規制維持の立場をとる団体の一つが、元下院議員ブラッド・カーソン(民主党、オクラホマ州)が設立した「Public First Action」だ。同団体は7,500万ドルの資金調達を目標に掲げ、連邦および州・地方選で30〜50人の候補者支援を計画しているとされる。

同団体は資金提供者の開示義務を負わないが、AI企業アンソロピックが2,000万ドルを拠出する計画を発表している。発表では、AIモデルの透明性確保、連邦法による強固な安全基準が整うまで州法を無効化しないこと、権威主義国家へのAI半導体輸出規制、高リスク分野への重点的規制などを支持するとしている。

カーソンはまた、ピエール・オミダイアの慈善団体「Omidyar Network」や、ダスティン・モスコビッツの「Coefficient Giving」などとの関係も報じられている。モスコビッツは効果的利他主義の支持者として知られる。

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Public First Actionは、ニューヨーク12区の下院選で元パランティアのエンジニア、アレックス・ボアズ(現NY州下院議員 民主党)を支持するほか、テネシー州知事選に出馬しているマーシャ・ブラックバーン上院議員を支援する関連PACを通じ、児童オンライン安全法への取り組みを強調するCMを展開している。


連邦統一派の台頭

一方、州規制の拡大に反対の立場をとるスーパーPAC「Leading the Future」は、設立時に1億ドル超の初期資金を集めたとされる。

支援者には、OpenAIのグレッグ・ブロックマンとその妻、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ、パランティア共同創業者ジョー・ロンズデール、エンジェル投資家ロン・コンウェイらの名前が報じられている。パープレキシティの関与も伝えられている。

Metaも別途、「American Technology Excellence Project」と「Mobilizing Economic Transformation Across (Meta) California」という政治団体にそれぞれ4,500万ドルと2,000万ドルを拠出している。Metaは州レベルでのAI安全規制に反対するロビー活動を展開しているとされる。

Leading the Futureの関連団体は、ニューヨークでアレックス・ボアズに対するネガティブキャンペーンを展開する一方、テキサス州、フロリダ州知事選など複数の選挙で候補者支援を表明している。広告では州ごとの規制がイノベーションを阻害する可能性を強調している。


世論との関係

世論調査では、AI規制の強化を求める声が多い。クイニピアック大学の調査では、回答者の69%が政府のAI規制は不十分だと回答した。ギャラップの調査では、政府はAIの開発速度を犠牲にしても、安全を優先すべきだとの意見が8割を占めた。

もっとも、規制の具体的な設計や州と連邦の権限配分については、国民的な合意が形成されているとは言いがたい。


主導権争いの焦点

カーソンは対抗勢力が資金拡大する背景について、X上の投稿で、「データセンター」と「アルゴリズムバイアス」の問題があると指摘している。メタによる巨額支出は州による反データセンター法案の食い止めが要因であり、連邦議会による権限強化の主張は、アルゴリズムバイアス規制への懸念と無関係ではないとの見方を示した。

各州でデータセンター規制やアルゴリズムバイアス法が広がれば、企業の運用コストやコンプライアンス体制に影響が及ぶ可能性がある。州ごとの制度差が拡大すれば、事業環境の不確実性が高まることも想定される。

中間選挙は、どの陣営がより多くの議席を確保するかによって、今後の規制設計の方向性に影響を与えるとともに、各社の事業戦略を左右しうるテーマとして注目される。