映画『ダークナイト』はZ世代に刺さらない?SNSで論争勃発

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クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008年)が、SNSで突如論争の的になっている。

きっかけは、X(旧Twitter)に投稿されたあるユーザーのこんなコメント

「『ダークナイト』は、一部の映画ファン、特にZ世代やもっと若い世代の人気が下がっている。ミレニアル世代の感覚からすると信じがたい話。2008年にIMAXで公開されたとき、まるで神を見たかのように感じた。時代とともに趣向が変わるっていう興味深い指標だね」。

投稿主は続ける。

「ノーランがバットマンをより現実に近い世界観に落とし込んだこと、舞台をシカゴに設定したり、バットマンのスーツや格闘スタイルをリアルにしたりしたことで、今では敬虔なコミック的美学を捨てたものと見なされている。近年のコミック映画の変化も、こうした視点の変化に影響を与えていると思う。」

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投稿はさらにこう続く。

「ノーランのバットマン映画を『骨太』で『ダーク』だと評するのは誤り。実際は不条理で堂々と馬鹿げていて、とてつもなく楽しい映画だ。マーベル・シネマティック・ユニバースやザック・スナイダー監督作品とは異なる意味で、とてもコミック的。むしろ『ザ・バットマン』の方が暗くて重いよ。」

ノーラン監督の作風の変化にも言及。

「特に『インターステラー』以降のノーラン作品の作風の変化も、この現象に影響しているのではないか。もし『インターステラー』がノーランの最高傑作とするなら、初期の作品はやや古臭く感じられるかもしれない。愛されるコミック映画の監督が、その後も高い評価を得続けるのは稀なことだ」と締めくくった。

要するに、ノーラン監督が新たな試みとしてコミックヒーロー映画にリアリズムを持ち込んだことが、逆に若い世代を遠ざけている。また、より抽象的で壮大な人間ドラマへと向かう後年の作風の発展によって、過去の作品が古臭く見えるようになった、といったところだろうか。

この投稿にはさまざまな反応が寄せられた。

あるユーザーは「Z世代は映画の歴史的文脈を知らないからだ」と指摘。「『バットマン・ビギンズ』が素晴らしくて、愛されたのは、それ以前のバットマン映画が酷かったから。Z世代はビギンズ以前のコミック映画がどれほどひどかったかを知らない」と、世代間の視聴体験の差が原因だと主張した。

別のユーザーは、「あまりにも広く、長期間人気を博したから、高評価するとダサいと思われるカテゴリーになったのでは」とコメント。「一定期間の“嫌悪”を経て、再び伝説的な地位に戻るだろう」と予想した。

さらに、「ニルヴァーナと同じ扱いだ。スターの死によって、実際には到達できない高みに押し上げられている」と、故カート・コバーン率いるロックバンドとの比較を挙げる声や、「映画はテンポや構成にやや難がある。私はX世代だが、なかなか良い映画だがそれ以上ではない」といった意見など、幅広い世代のユーザーが議論に参加している。

とはいえ、『ダークナイト』は、史上最高の映画の一つとされ、ロッテントマトでは批評家・観客ともに94%という非常に高い評価を得ている。公開前に亡くなったジョーカー役のヒース・レジャーの演技は絶賛され、2009年のアカデミー賞で助演男優賞を受賞した。そもそもZ世代に不人気といった主張の当否も定かでない。

オリジナルの投稿はすでに約9,800回シェアされ、2,900件以上のコメントが付いている。Z世代にとって“神”ではないとしても、『ダークナイト』が今なお人々の記憶と議論を呼び起こすパワーを持っているのは間違いない。