イスラエルとイランの軍事衝突が激化する中、トランプ大統領は、交渉を重視する慎重姿勢から一転、イスラエルの戦闘機の給油支援またはイランの地下核施設の破壊のための米軍機の派遣など、軍事的関与を真剣に検討している。ニューヨークタイムズが報じた。
トランプ氏の姿勢変化の背景には、イラン側が米国の提案に応じないことへの苛立ちやイスラエルのネタニヤフ首相の要請のほか、保守系メディアからの影響があるという。
イスラエルが攻撃を開始した翌朝、トランプ氏がお気に入りチャンネル『FOXニュース』をつけると、イスラエル軍の軍事的成功を称賛する映像を繰り返し放送していた。これを目にしたトランプ氏は、「自分にもその功績の一端がある」と主張せずにはいられなくなったという。
同紙は「トランプ氏は記者との電話取材で、自身がこの戦争の舞台裏で人々が思っている以上に大きな役割を果たしていたことをほのめかし始めた」と指摘。トランプ氏は一部の側近に、イスラエルの要請に応じて、イランのフォルド核施設を破壊するために米軍がバンカーバスター爆弾を提供するという、「より深刻なエスカレーション」を検討し始めていると告げたともいう。
今月初めには、対イラン強硬派でFOXニュースのトーク番組ホストであるマーク・レヴィン氏がホワイトハウスを訪れ、トランプ氏と面会した。この会合には、イランとの核交渉を担当するスティーブ・ウィトコフ特使も同席していた。レヴィン氏は、イスラエルによるイラン核施設攻撃を許可するよう強く促したとされ、ある顧問はタイムズに「レヴィン氏との会話は大統領に強い印象を与えたようだ」と印象を述べている。
この一方で、ルパート・マードック氏率いるメディア帝国の一角であるニューヨーク・ポスト紙は、ウィトコフ氏を「カタールの代弁者」と呼ぶなど、批判を展開している。ポリティコによれば、トランプ氏の側近の一部は、こうした動きが交渉を妨害するものだとして強い不満を示している。
マードック氏自身もウィトコフ氏の取り組みに対して側近に個人的な不満を漏らしているという。トランプ政権のある幹部は「大統領が望まない決断に追いやろうとしている」と指摘するなど、イランとの戦争を望む者と当初のトランプ氏の立場に近い交渉重視派との間の対立に警戒感を示している。