ホーム ポリティクス トランプ、国防生産法で除草...

トランプ、国防生産法で除草剤生産を優先 MAGA連合に軋轢

9
Lucas Parker/shutterstock

トランプ大統領は2月17日、元素リンと除草剤グリホサートの国内生産を拡大するための大統領令に署名した。グリホサートは発がん性をめぐる大規模訴訟の対象となってきた化学物質で、トランプ支持連合の一角をなすMAHA運動内からも反発の声が上がっている。影響は農業にとどまらず、司法・規制・選挙にも及ぶ可能性がある。

大統領令は「国防に必要な供給確保」を目的に、1950年制定の国防生産法(Defense Production Act)を発動。元素リンとグリホサートを米農業の生産性と食料安全保障を支える基盤的資材と位置づけ、供給不足は国家安全保障に重大な脅威をもたらすと認定した。

ホワイトハウスによると、現在米国内の生産者は1社のみで、年間需要を満たせず、元素リンは600万キログラム以上を輸入に依存しているという。大統領令は農務長官に対し、国防長官と協議の上で優先順位付けや生産命令を含む措置を講じる権限を付与。また、国内生産者の企業存続を損なわないよう配慮することも明記された。

グリホサートは除草剤「ラウンドアップ」の有効成分で、バイエル(モンサントが開発、2018年に買収)が製造・販売する。大豆、トウモロコシ、小麦、アーモンド、綿花など幅広い作物に使用されている。

健康リスクの議論は分かれる。ニューヨークタイムズによると、多くの専門家がグリホサートの一般人へのリスクは低いとしているが、2015年、国際がん研究機関(IARC)は「おそらく発がん性がある」と分類。一方、米環境保護庁(EPA)はグリホサートが「ヒトに対して発がん性がある可能性は低い」と判断している。政府は2026年10月1日までに再評価を行う予定。

Advertisement

訴訟と最高裁の行方

バイエルは、ラウンドアップが非ホジキンリンパ腫を引き起こしたとする十数万件規模の訴訟を抱えている。

大統領令と同じ日に、同社は関連する集団訴訟について約72億5000万ドルを支払う和解案を提案したと発表した。

ニューヨーク・タイムズによると、この和解案の背景には、連邦法が州法上の警告義務訴訟を排除するかどうかをめぐり、最高裁で審理が控えている点がある。バイエルは、連邦の表示基準に従っている以上、一部の州法訴訟は排除されるべきだと主張している。

原告側弁護士は、最高裁で同社が勝訴すれば、多くの訴訟が却下または縮小される可能性があるとの見方を示している。一方、今回の和解案は、承認された場合、最高裁の判断とは独立して効力を持つとされる。

業界ロビーと規制当局

バイエルはトランプ大統領の就任式に100万ドルを寄付し、ビッグファーマのトップドナーに名を連ねた。(CNBC)

一方、規制当局であるEPAの農薬部門には、業界ロビイスト出身者が相次いで登用されている。カイル・カンクラーは大豆業界のトップロビイストから転じて農薬政策責任者に就任。さらに米化学工業協会出身ら複数の元業界幹部が要職に就いている。

今月初め、EPAは除草剤ジカンバを遺伝子組み換え大豆と綿花に使用することを再承認。アメリカ大豆協会から歓迎を受けた。関係者からは、元ロビイストや業界出身者が規制当局の幹部を占める現状について「信じられない」といった声が上がっている。

MAHA vs. MAGA

MAHA(Make America Healthy Again)運動の旗振り役、ロバート・ケネディ・ジュニアは、2018年にモンサントに対して2億8900万ドルの陪審評決を勝ち取った弁護団に加わっていた。農薬に強硬姿勢を示してきた張本人で、彼が委員長を務めた慢性疾患の原因を調査する委員会は昨年、グリホサートとアトラジンを特に子供に有害な可能性があると指摘していた。

しかし今回、ケネディは「国家安全保障と食料供給を優先する」として大統領令を支持する姿勢を示した。この対応に対し、MAHA支持層の一部からは失望や批判の声が上がっている。

「うんざりだ。文字通り、吐き気がする。グリホサートの入手を確保するためのこの大統領令は、人々を病気にする以上の結果をもたらすだろう」(MAHA運動のインフルエンサー@zenhoneycutt