トランプ最大の敵は“退屈”?専門家らが示す深刻な懸念

7
noamgalai/shutterstock

元共和党の戦略家リック・ウィルソン氏によると、トランプ大統領は「久しぶりに楽しめていない」という。

ウィルソン氏は5日、ニュースレター配信サイト「Substack」に投稿したコラムで、「彼の支持率とMAGA運動の崩壊がすでに進行している。政権内では大小さまざまなスキャンダルが勃発し、情報漏洩はまるで網戸を通る水のように止まらない」と指摘した。「ひどい出来栄えのショー」に加え「視聴率の低迷」にも直面するリアリティ番組の元スターであるトランプ氏は、いまや楽しめていない。「悲惨な一年」の終わりを迎え、彼は再び“独自の快楽原則”に立ち戻るだろうとの見通しを示した。

ウィルソン氏の見立てでは、トランプ氏が最も快楽を感じる対象は、富でも女性でも注目でもない。「屈辱」だ。とりわけ「側近や追従者への屈辱」を好み、「解雇を、自らの力と残酷さを完璧に誇示する方法と考えている」という。トランプ氏にとって、「You are fired!」の決め台詞で人気を博した番組『アプレンティス』はまだ終わっていない。「混乱と恐怖、そして指を鳴らして生放送でキャリアを断ち切る力」を、再び誇示する日も近いとした。

『怒りと炎』をはじめ、トランプ関連書を4冊執筆してきた作家マイケル・ウォルフ氏も、トランプの変化に注目している。

ウォルフ氏はデイリービーストのポッドキャスト番組で、居眠り疑惑が持たれた2日の閣議に言及。これは単なる高齢の症状とは言い切れず、「ホワイトハウス内部で深刻な懸念が浮上している」と述べ、その懸念とは「大統領が退屈しているのではないか」という点だと語った。

Advertisement

ウォルフ氏によれば、トランプを動かす燃料は「称賛」と「怒り」。しかし「称賛」の側面では側近らの努力がすでに限界に達し、「どれほどおべっかを使っても効き目が薄れ、まるで薬物への耐性のように飽きが来ている」という。

さらに「おべっかが行き過ぎると苛立ち始める」のも典型的な傾向で、現在その苛立ちはヘグセス国防長官、ボンディ司法長官、マルコ国務長官らに向かっている。

また、トランプにとって「怒り」の対象も不可欠で、2日の閣議でソマリア系移民を「ごみ」呼ばわりしたのは、常に敵を必要とする彼の性格を映しているとした。出席者らは「もうそこまで来たのか」と呆れたという。

ウォルフ氏の分析では、エプスタイン事件、11月の選挙、そしてロシアとウクライナの和平交渉の行きづまりなど、政治の流れが明らかに「鈍化」している。どの政権も避け難い停滞期ではあるが、「いま、この瞬間の刺激」にしか関心を持たないトランプが、それに耐えられるかは未知数だという。「退屈」はトランプにとって存在論的な問題でもあり、「称賛も怒りも失った“本来の彼ではないトランプ”──その場にいながらも『不在の大統領』が現れるかもしれない」と語った。