ベネズエラ攻撃はアメリカ・ファースト? MAGA内論争

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Humberto Matheus/shutterstock

ベネズエラ空爆とマドゥロ大統領の拘束という衝撃的な展開を受け、トランプ支持層に影響力を持つ論客やインフルエンサーの間で、評価が割れている。

トランプ大統領は3日、記者会見を開き、同日未明にベネズエラの首都カラカスで軍事作戦を実施し、ニコラス・マドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス夫人を拘束したと発表した。夫妻はニューヨークに移送され、ニューヨーク南部地区連邦裁判所で裁判を受けるという。

トランプは会見で、「安全かつ適切、賢明な政権移行」が実現するまで、米国がベネズエラを運営すると述べたうえで、自国の石油メジャーを派遣し、数十億ドルを投じて石油インフラを修復すると説明。「ベネズエラのために利益を上げさせる」と語った。また、必要に応じて二度目の大規模攻撃を行う準備があるとも明言した。

南アメリカの国家を事実上運営することが「アメリカ・ファースト」なのかと問われると、トランプは「良い隣国に囲まれたい。安定を保ちたい。エネルギーで囲みたいからだ」と答えた。

保守系論客のベン・シャピーロは、同日公開したYouTube動画で、今回の行動を軍事侵攻ではなく「準宮廷クーデターのようなもの」と位置づけた。国際法上の問題については、「でたらめで嘘で愚かな国際法など気にする必要はない」と断言。国内法に関しては、マドゥロが麻薬密輸組織「カルテル・デ・ロス・ソレス」の首領であり、2020年に米大陪審で起訴されているとした上で、「麻薬船を米国に送り込むのは差し迫った脅威であり、憲法第2条に基づく大統領の執行権限で十分対応可能だ」と擁護した。

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シャピーロはさらに、今回の作戦を、イランの地下核施設攻撃に続く「真に変革的な行動」だと称賛。メキシコの麻薬組織、キューバ、ニカラグア、イランに対して実行力を示したことで、米国の警告のクレディビリティは飛躍的に高まったと評価した。

また、孤立主義者の一部、とりわけタッカー・カールソンが過去に「マドゥロ政権の転覆を望むのはグロボホモだ」と発言していた点に触れ、「それは誤りだ」と反論。退陣を突きつけたのは「保守的な共和党大統領であり、勇気ある大統領だ」と述べ、トランプは国家安全保障、西半球における米国の利益、さらには国際的な利益を守るために決断を下したのだと強調した。こうした行動は、ロシア、中国、イラン、キューバといった敵対国を弱体化させるものだとして、対立を深める論客を牽制した。

カールソンは近年、反介入主義の立場を鮮明にし、イスラエル・イラン戦争への介入に反対するとともに、イスラエルや親イスラエルのロビー団体、シャピーロら親イスラエルの論客に対する批判を繰り返してきた。一方で、こうした姿勢は反対派から、反ユダヤ主義やイスラム過激派への同調だとの非難も招いている。

ベネズエラをめぐっては、同国が同性婚や中絶、性転換を禁止している点を挙げ、「アメリカ大陸で最も保守的な国家だ」と主張。マドゥロ退陣を画策しているのはグロボホモ(極右が使う蔑称で、「グローバリスト」と「同性愛者」を合わせた造語)だとする自身の見方についても、「あながち狂っていない」と語っていた

極右活動家のローラ・ルーマーは、今回のベネズエラ作戦を「米国のエネルギー優位性の確立、イランの政権交代促進、西半球における中国とロシアの権益排除、ヒズボラの活動拠点の弱体化という、より広範な取り組みの一部」だと位置づけた。
さらに、「イスラエルは、ベネズエラに潜伏するヒズボラ分子を標的とするための重要な情報を提供している可能性が高い」と述べ、米国とイスラエルの同盟が「アメリカ・ファースト政策にとっていかに有益かを示す証拠だ」として、トランプの地政学的判断を称賛した。

ルーマーはまた、カールソンにも言及し、「今日、タッカー・カールソンの投稿をチェックした人いる?彼にとっては大変な一日ね」と皮肉った。

前日、トランプのイランへの介入姿勢を「ヒラリーと同じだ」と厳しく批判していたスティーブ・バノンは、政治的な評価には踏み込まず、自身のポッドキャスト番組「ウォー・ルーム」にブラックウォーター共同創業者のエリック・プリンスを招き、米軍の「見事な成果」を称賛するにとどめた。

一方、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州)は、「MAGAの多くは、こうした外国への干渉を終わらせるために投票したのだ」として、トランプ政権に警告を発した。

グリーンはXで、「もし目的が本当に麻薬からアメリカ人の命を救うことなら、なぜメキシコのカルテルに行動を起こさないのか」「麻薬テロリストの訴追が最優先なら、なぜホンジュラスの前大統領フアン・オルランド・エルナンデスを恩赦したのか」と疑問を呈した。そのうえで、今回の作戦は「マドゥロを排除し、ベネズエラの石油供給を掌握することで、次に起こりうるイランでの政権転覆戦争に備えるための明確な動きだ」と主張した。

さらに、「体制転換や外国戦争への資金提供が続く一方で、アメリカ人は生活費、住宅費、医療費の高騰に苦しみ、税金が詐欺や不正に使われる現実を目にしている」と述べ、「終わりのない軍事侵略と外国戦争への支援に国民が嫌悪を抱くのは当然だ」と訴えた。

「その費用を負担するのは私たちだ。共和党も民主党も、ワシントンのミリタリー・マシーンに資金を提供し続けている」と不満を示し、「ベビーブーマー世代が投票権と権力の両面で衰退するにつれ、選挙の未来は、アメリカ経済のポピュリズムとアメリカ国民だけの繁栄を約束する候補者によって決まるだろう」と締めくくった。

なお、部分的に批判の声が上がる一方で、米政治ニュースサイト『Politico』は、MAGAの多数派は依然としてトランプの方針に同調していると報じている。

同サイトの取材に応じた元トランプ政権高官は、「孤立主義者とレーガン派は通常は相容れないが、西半球に関しては一致している」と指摘。「孤立主義者も、自国の裏庭の問題であれば、ある程度の国際主義には目をつぶる。しかし、西半球を超えた地域になると、『それは我々の関与する問題ではない』と考え始める」と語った。