交通違反取り締まり中の警官をライブ配信する権利 憲法が保護、米裁判所

354

ノースカロライナ州の男性が、警官が交通違反の取調べの際にライブ配信を禁じたのは、言論の自由を保障する憲法修正第1条の違反にあたるとして、警官らと警察署を訴えた裁判で、第4巡回区控訴裁判所は7日、下級審の判決を覆し、ライブ配信を禁止する方針は、憲法違反にあたるとの判決を下した。

訴状によると、問題が起きたのは2018年9月。ウィンタービル警察の警官が、原告のディジョン・シャーぺ氏が乗った車に停止を命じた。助手席に乗っていたシャーペ氏は携帯電話を取り出してのはを始めた。

シャーペ氏は以前にノースカロライナ州の別の町で、同乗していた車が交通違反の取り締まりを受けた際、テーザー銃を打たれ、強く打たれるなど暴行された経験があった。それ以来市民活動家となり、警察の責任強化を求める活動などを行っていたという。

取り調べのためにパトカーから出てきた警官のマイヤーズ・ヘルムス氏は、助手席のシャーぺ氏に「フェイスブック・ライブか?」と尋ねると、窓越しに手を伸ばしてシートーベルトとTシャツを引っ張りながら、携帯電話を取り上げようとしたという。この際、「フェイスブックライブはやらせない。警官の安全に関わる問題だからだ」などと説明した。さらに、運転手に違反切符を切っていたもう一人の警官、ウィリアム・エリス氏も「フェイスブックのライブは、君たちのフォロワー全員に居場所を知らせることになるから、やらせないことにしている」と話した。エリス氏は、録画であれば問題ないとしつつ「今後フェイスブック・ライブをやっていたら電話が取り上げられることになる。手放したくないならば、刑務所に行くことになる」と警告した。

シャーペ氏が「それは法律か?」と尋ねると、エリス氏は「警官の安全上の問題だ」と答えたほか、公務の妨害にあたる可能性を示唆したという。

Advertisement

シャーペ氏は裁判で、ウィンタービル警察局とエリス氏を警官の立場として訴え、さらに携帯を奪おうとしたヘルムス氏に対しては、警官と個人両方の立場として訴訟を提起していた。

The Hillによると、連邦地方裁判所は、ライブ配信を禁じる方針は修正第1条の違反にあたらないとするとともに、ヘルムズ氏は免責によって保護されるとして、個人に対する訴えも棄却した。

一方、上級審は7日の判決で、ライブ配信を禁止する方針がある場合、憲法違反にあたると判断。「警察との遭遇を記録することは、行政に関する議論に貢献する情報を作成する。ライブ配信もまた、その情報を広めるものであり、しばしばそれ自身の記録を作成するものだ」と、ライブ配信と録画に同様の性格がある点を指摘。「したがって、警察の交通停止をライブ配信することは、憲法修正第1条によって保護される言論であると判断する」とした。

ワシントンポスト紙は、警官が交通停止中の乗客に対して録画を阻止できるか、または、ライブ配信と単なる録画が異なるかについて、控訴裁判所が下した初めての判決だと指摘している。

今回の判決により訴訟が進められることになるが、控訴裁判所は、シャーペ氏は今後、行政側にライブストリーミングを禁止する方針が存在しているかについて、証明する必要があるとした。ヘルムズ氏個人については、地裁の判決を支持。憲法上の権利を明らかに侵害しない限り、警官個人は責任追求を免れる権利があるとして、訴えを退けた。