米国の脅威はイスラム過激派かポルノか?タッカー・カールソン発言が波紋

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Maxim Elramsisy/shutterstock

元FOXニュース司会のタッカー・カールソンは27日公開の保守系メディア「The American Conservative」のインタビューで、中東政策をめぐって対立する保守論客らへの批判を改めて展開した。

カールソンは冒頭、西欧文明とそれ以外を分かつ基準は「個人の魂への信仰」にあるとした上で、「集団罰を与えることは許されない」と主張。昨年4月、ジョー・ローガンの番組で広島・長崎への原爆投下を「邪悪だ」と非難し、ベン・シェピーロら親イスラエル派の激しい反発を招いた件にも言及した。

カールソンは当時怒りを買った理由について、「私の結論は、それがガザで起きていることを連想させるからだ」と説明。「イスラエル第一主義の仲間たちは、ネタニヤフ政権が何をしようと、それを守ることが自分たちの役割であり使命だと考えている」と語った。さらに、その背景には自分たちを特別視し、他者を「下等な存在」とみなす差別的な思想があると主張し、そうした考え方を「非西欧的」と批判した。

今月アリゾナ州で開催された保守政治団体「ターニング・ポイントUSA(TPUSA)」の年次集会では、米国が直面する最大の脅威として「イスラム過激派」が選ばれた。この結果について問われたカールソンは、イスラエル政府とその擁護者、さらに「米国の非公式な職員」とも言うべき人々の影響があると指摘した。

「過去24年間で、米国でイスラム過激派に殺された人を私は知らない」と述べ、「大量の米国民を破壊しているのはイスラム過激派ではない」と強調。※実際には、9.11以降もイスラム過激派による殺害事件は複数確認されている。

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その上で、「イスラム過激派はOnlyFansより危険か? 比べ物にならない。大量のアメリカ女性を売春婦に変えている」と、ポルノサイトを引き合いに出して論を展開した。

さらにカールソンは、次のように語っている。

「アメリカはガザという錨に縛りつけられた。なぜビビ(ネタニヤフ)の大量殺戮の責任を負わなければならないのか? だが今、実際に負っている。多くのアメリカ人が繰り返し聞かされてきたからだ。『あなたの運命はイスラエルと結びついている』『イスラエルは最重要の同盟国だ』と。だがイスラエルは重要な同盟国ではないし、同盟国ですらない。負債だ。それでも人々は何度もそう聞かされてきた……」

こうした一連の発言を受け、トランプ支持層に影響力を持つストリーマーや論客の間で賛否が噴出している。

極右活動家のローラ・ルーマーはXで、「9.11以降、イスラムテロによってアメリカ市民が一人も殺されていないと否定しているが、これはとんでもない嘘だ」と非難。「タッカー・カールソンの思考を完全に歪めているイスラムの影響を最初に特定したのは私だ。私は長年この危険性を警告してきた」と、自身の正当性を主張した。

ルーマーは最近、カールソンを「タッカー・カタールソン」と揶揄し、彼を含む多くのインフルエンサーやジャーナリストが「カタールやムスリム同胞団に買収されている」との陰謀論的主張を繰り返している。

また、保守系論客のミーガン・マケインもXで、「あと3か月もすれば、タッカー・カールソンは『イスラム教に改宗しなければ、お前たちは好戦的なネオコンだ』と言い出すだろう」と皮肉り、保守陣営に警戒を呼びかけた。

一方、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州)は、カールソンを擁護する立場を明確にしている。

「大量の“アメリカ・ラスト”のアカウントがタッカーを攻撃しているが、私はタッカー・カールソンの友人であると誇りをもって明言する」と投稿。「彼は信仰に誠実で、家族と祖国を愛している。アメリカ・ファーストは勝利する」と述べた

2024年大統領選では対左派で結束していたMAGA陣営だが、ここにきて外交政策や宗教観、とりわけイスラエルをめぐる立場の違いに基づく亀裂が表面化し、影響力のあるインフルエンサー同士の対立が鮮明になっている。こうした分裂が、翌年の中間選挙や2028年のトランプ後継者の擁立にどのような影響を及ぼすのか、注目が集まっている。