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テスラとSpaceX、合併検討の特別委員会設置 マスク氏「良い考え、でも確実視は言い過ぎ」

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EV and Rocket
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米スペースX(SpaceX、SPCX)とテスラ(Tesla、TSLA)を率いるイーロン・マスク氏は10月20日(米国時間)、SpaceXの7〜9月期決算説明会で、両社が合併の可能性を話し合うため、それぞれ独立取締役による特別委員会を設けたと明らかにした。株主の要請を受けたものだという。

マスク氏は合併を「良い考えだ」としつつ、「確実だと考えるのは言い過ぎだ」と述べた。特別委員会は取引の条件でまだ合意しておらず、テスラ側では全株式の過半数の賛成が必要になるという。両社とも、委員会についての開示書類はまだ出していない。

合併をめぐっては、両社の大株主であるARKインベストメント(ARK Invest)が19日のリポートで「5年以内に起こり得る」と予測したばかり。ただし、株式交換を前提とする場合、テスラ株主が得る利益は限られるとの見方もある。テスラは21日(日本時間22日朝)に7〜9月期決算を発表する予定。

マスク氏「私は利益相反の当事者で、協議には加われない」

発言は、ドイツ銀行のアナリスト、エジソン・ユー(Edison Yu)氏の質問に答えたものだ。同氏は、合併の利点と欠点をどう考えるか、実現の障害はあるかを尋ねた。

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マスク氏は「地雷原でタップダンスを踊っているような質問だ」と前置きしたうえで、両社が「株主の要請を受けて」特別委員会を設けたと説明した。委員会は独立取締役で構成され、自身は「利益相反の当事者なので、委員会の協議には加われない」という。「2つのグループが話し合い、私はその場にいられない。奇妙な歌舞伎の踊りのようなものだ」とも表現した。

そのうえで、合併が決まったわけではないと繰り返した。

  • 「SpaceXとテスラの合併は確実だと考えている人もいるが、それは言い過ぎだ」
  • 「良い考えだと思うかと聞かれれば、思う。だが最終的には、株主が支持しなければならない。特にテスラでは、投票した株主だけでなく、全株式の50%の賛成が必要になる。かなり高いハードルだ」
  • 「現時点で、特別委員会はどの取引の条件にも合意していない。合意する保証もない」

一方で、合併の利点は大きいとも語った。「私たちはほぼ超知能のシンギュラリティにいる」として、超知能のソフトウエアの開発、チップの設計、半導体工場「Terafab」、ロボット、衛星群を使った軌道への大量輸送、通信で協力できると挙げた。ただし、決めるのは「両社の特別委員会」で、委員会が案をまとめたうえで株主の投票にかける必要があると結んだ。

Fortuneによると、両社の時価総額は20日の終値で合計約3.5兆ドル(SpaceX約2兆ドル、テスラ約1.5兆ドル)で、合併すればマスク氏は新会社の約3分の1を持つ計算になる。テスラが19日に提出した株主総会の参考書類には、合併の議案は入っていない。

SpaceXの7〜9月期は、売上が前年同期比161%増の145億7,500万ドル、純利益が44億400万ドルで、上場後初の四半期黒字だった(SpaceX(SPCX)7〜9月期決算:売上161%増で黒字転換 来年1〜3月期は最大370億ドルの見通し)。

ARKは「5年以内に合併」、テスラ単独でも2031年に4,400ドル

ARKは19日に公開したテスラの株価予測モデルで、合併が「今後5年以内に起こり得る」と書いた。テスラのロボタクシーが生む現金でSpaceXの軌道上データセンター構想を支え、SpaceXのAIモデルが人型ロボット「Optimus」の頭脳役を担う、という組み合わせだ。両社合計の2031年の売上は3.8兆ドル、EBIT(金利・税引き前利益)は2.7兆ドルと試算し、SpaceXが売上の約62%、EBITの約69%を占めるとした。

ただし、モデルの中心はテスラ単独の評価で、合併は数字に入っていない。2031年の1株あたり期待値は約4,400ドルで、19日の終値368.06ドルの約12倍にあたる。ARKは、企業価値の約8割をロボタクシー事業が占めるとみている。

2031年の予測2025年(実績)弱気基本強気
株価(ドル)4503,3004,4005,000
総売上(億ドル)9501兆2,0201兆4,4901兆6,220
配車(ロボタクシー)の純売上(億ドル)05,2607,5308,990
ロボタクシー台数(万台)—4808101,000
Optimusの売上(億ドル)01,6102,1202,540
EVの売上(億ドル、排出枠除く)6802,8003,2003,550
時価総額(兆ドル)1.813.417.520.4

出典:ARK「ARK’s Expected Share Price For Tesla In 2031」。弱気・強気は、モンテカルロ法で出した結果の下位25%と上位25%の位置にあたる。

前回(2024年)のモデルは、2029年に2,600ドル、ロボタクシーの比率を約90%としていた。今回、ロボタクシーの比率が下がったのは、Optimusを外部への販売で稼ぐ事業として新たに組み込んだためだ。前回は社内の約3万体でコストを約35億ドル減らすという扱いだったが、今回は約100万体を外部に販売し、約2,120億ドルを稼ぐとみている。合わせて、半導体工場Terafabを含むAIインフラへの投資を、2031年末に累計約2,250億ドルと想定した。

ロボタクシーの無人走行は、テスラのAI担当副社長アショク・エルスワミー(Ashok Elluswamy)氏が9月3日のCybercabのイベントで、累計100万マイルに達したと発表している。7月の決算説明会の時点では38万マイル超で、その後の約6週間で約62万マイルを上乗せした計算になる。ARKはこの100万マイルを、ウェイモ(Waymo)が最初の100万マイルにかけた期間の約4分の1で達成したと評価している。

ARKは合併の両当事者の大株主

ARK自身が、テスラとSpaceXの両方の大株主だ。ARKが公開しているETFの保有一覧(10月16日時点)をMashup Reporterが集計したところ、ETF4本でテスラ株を約309万株(約11.2億ドル)、SpaceX株を約538万株(約8.0億ドル)持っていた。テスラは旗艦のARKK、ARKQ、ARKWで組み入れ比率1位、SpaceXはARKXで1位、ARKKとARKQで2位だ。合併が実現すれば、ARKは買う側と買われる側の両方の株主として影響を受ける。

*評価額は16日の終値(テスラ362.44ドル、SpaceX 148.62ドル)による。ARKG(ゲノム)とARKF(フィンテック)は、どちらも保有していない。

ARKは予測の免責事項で、自社のモデルには「良い結果に偏る傾向がある」と自ら認めている。市場で一般に使われる「目標株価」とは性格が違い、保有する銘柄について、長期の前向きな見方を数字にしたものだ。

「合併してもテスラ株主の得は限られる」 ブラック氏

合併観測は、10月15日にテスラがSpaceXのスラスターを積んだ新型「Roadster」を発表してから勢いを増した。ガーバー・カワサキのロス・ガーバー(Ross Gerber)氏や、テスラの強気派アナリストとして知られるダン・アイブス(Dan Ives)氏も、合併は近いとの見方を示していた。

これに対し、合併してもテスラ株主の得は限られると指摘していたのが、米運用会社フューチャー・ファンド(The Future Fund)のマネージングパートナー、ゲイリー・ブラック(Gary Black)氏だ。ブラック氏はテスラの強気派として知られる投資家で、マスク氏の発言の前日の19日、Xに投稿した。

ブラック氏は、マスク氏がSpaceXの株式の48%(転換後ベース)とテスラの株式の10.5%を握っていることから、合併は「必然」だとみる。マスク氏自身が「確実視は言い過ぎ」としたのとは、見方が分かれる。そのうえで「取引はどんな形でもSpaceX株とテスラ株の交換になるため、大規模な希薄化と株式だけの取引という条件を考えると、X上で多くの人が思っているほど魅力的な取引にはならない」と書いた。

提示額は、テスラ株1株あたり「420ドル前後」と予想する。20日の寄り付き前の株価367.06ドルより約14%高い水準だ。ただし、発表から完了までに6〜12か月ほどかかるため、この上乗せ分は「裁定取引で縮む可能性が高い」という。

根拠は、両社の株価の評価の差だ。ブラック氏によると、2027年度の予想EBITDAに対する企業価値の倍率(EV/EBITDA)は、テスラが72.6倍、SpaceXが29.4倍だ。合併後の会社は買い手のSpaceXの倍率で評価されるとみて、「テスラ株主に大きな思わぬ利益は生まれない」と結論づけた。一方で、合併の発表そのものはテスラ株に「プラスになる」とも付け加えた。

ブラック氏は別の投稿でも、「なぜテスラの投資家は、合併を価値を生む材料として注目し続けるのか」と問いかけた。SpaceXが15〜20%の上乗せをしてテスラを買ったとしても、SpaceXの倍率が比較的低いため「価値はあまり増えない」という。

ARKは合併を両社の事業を強める動きととらえ、ブラック氏はテスラ株主から見た取引条件に焦点を当てる。マスク氏が示した通り、条件を決めるのは両社の特別委員会で、その条件がテスラの全株式の過半数の賛成を得られるかが焦点になる。

テスラの業績と今後の注目点

テスラの直近の業績は、ARKの描く2031年からはまだ遠い。4〜6月期(Q2)の売上は前年同期比26%増の282億3,600万ドルと過去最高だったが、調整後の1株利益は0.33ドルで市場予想(0.51〜0.55ドル)を下回った。営業利益率は1.4%(前年同期は4.1%)に下がり、設備投資が57億9,000万ドルに増えたため、フリーキャッシュフローは10億9,000万ドルの赤字になった。

市場の見方も慎重だ。24/7 Wall St.によると、20日時点でアナリスト44人のうち21人が「中立」で、平均の目標株価は397.83ドル。ARKの4,400ドルの10分の1にも届かない。

21日(日本時間22日朝)のテスラの決算では、次の点が焦点になる。

  1. 合併への言及: テスラ側の説明会でも、特別委員会の構成や日程について質問が出る可能性が高い。会社としての開示があるかも注目される。
  2. ロボタクシー: 9月に100万マイルに達した無人走行の距離が、どこまで伸びたか。カギとされる「FSD V15」の展開時期も。
  3. 営業利益率とOptimus: 1.4%まで下がった利益率がどこまで戻るか。Optimusの生産台数や外部販売の時期に新しい説明があるか。
日付(米国東部時間)日本時間予定
10月21日(水)引け後10月22日 6:30(説明会)テスラの7〜9月期決算
10月22日(木)—SpaceX株の大型ロックアップ解除(約13億株)
11月下旬(感謝祭の前)—スターシップ15回目の飛行(マスク氏の見通し)

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。