米スペースX(SpaceX、SPCX)は米国時間10月20日、2026年7〜9月期(Q3)の決算を発表した。売上高は前年同期比161%増の145.75億ドル、最終損益は44.04億ドルの黒字となり、上場後初めて四半期の黒字を計上した。AIを担う部門(今期から「SI」に改称)の売上が初めて全体の過半を占めた。会社は2027年1〜3月期の売上を330億〜370億ドルと見込み、今期の2倍以上に伸ばす見通しを示した。株価は20日の通常取引を0.11%安の147.79ドルで終えたが、決算を受けた時間外取引では4.80%高の154.88ドルまで上がった(日本時間21日午前6時43分時点)。
ポイント
- 決算:売上高145.75億ドル(前年同期比+161%)、純利益44.04億ドル(前年同期は10.54億ドルの赤字)、調整後EBITDA 88.09億ドル(+306%)。
- 主役交代:SI(旧AI)部門の売上が75.60億ドルと全体の52%を占め、営業損益も黒字に転じた。
- 見通し:2027年1〜3月期の売上は330億〜370億ドル。年末の計算能力は2.5〜3GW、10〜12月期の設備投資は350億〜400億ドルに膨らむ。
- イーロン・マスク(Elon Musk)CEO:2027年末の年換算売上は「5,000億〜1兆ドル」と発言。テスラとの合併は「確実とみるのは言い過ぎ」とした。
- 注意点:純利益は受取利息など営業外の利益が押し上げた。1〜9月の累計ではなお4.13億ドルの赤字。
- 株価:20日の終値は147.79ドル(−0.11%)。決算発表後の時間外取引では154.88ドル(+4.80%)に上昇した(日本時間21日午前6時43分時点)。
7〜9月期決算の概要
売上高は前期(4〜6月期)の78.14億ドルからも87%増え、ほぼ倍増した。本業の利益を示す営業損益も27.91億ドルの黒字に転じた。
| 項目 | 7〜9月期 | 前年同期 | 4〜6月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 145.75億ドル | 55.76億ドル | 78.14億ドル |
| 営業損益 | +27.91億ドル | −2.73億ドル | −1.43億ドル |
| 純損益 | +44.04億ドル | −10.54億ドル | −5.41億ドル |
| 調整後EBITDA | 88.09億ドル | 21.69億ドル | 35.38億ドル |
| 設備投資 | 195.93億ドル | 68.80億ドル | 183.69億ドル |
| 1株利益(希薄化後) | 0.35ドル | −0.36ドル | — |
純利益44.04億ドルは、営業利益27.91億ドルに営業外の損益が加わった数字だ。受取利息8.73億ドルとその他の収益10.25億ドルが加わり、支払利息6.75億ドルを差し引いた。さらに法人税等が3.90億ドルのマイナス(税負担ではなく利益)となり、純利益を押し上げた。1〜9月の累計では、純損益は4.13億ドルの赤字にとどまる。
出典:SpaceX 投資家向けサイト(7〜9月期決算発表)
部門別の業績
3部門すべてで売上が伸び、宇宙部門の営業損益もほぼ収支均衡まで改善した。前回の稼ぎ頭はStarlinkだったが、今期はSI部門が売上・調整後EBITDAとも最大になった。
| 事業部門 | 売上高 | 前年同期比 | 営業損益 | 調整後EBITDA | 設備投資 |
|---|---|---|---|---|---|
| SI(Grok、X、計算サービス、Cursor) | 75.60億ドル | +830% | +4.31億ドル | 49.53億ドル | 164.44億ドル |
| Connectivity(Starlink) | 52.48億ドル | +69% | +23.67億ドル | 34.99億ドル | 15.43億ドル |
| Space(ロケット打ち上げ) | 17.67億ドル | +6% | −0.07億ドル | 3.57億ドル | 16.06億ドル |
| 合計 | 145.75億ドル | +161% | +27.91億ドル | 88.09億ドル | 195.93億ドル |
SI部門は、これまで「AI」と呼んでいた部門を今期から改称したもの。営業利益4.31億ドルには、Cursor買収に伴う株式報酬12.17億ドルの費用が含まれる。
注目の数字
SI:計算サービスとCursorで売上3倍
SI部門の売上は前期の25.61億ドルから約3倍に増えた。柱は、データセンターの計算能力を他社に貸し出すクラウドサービスだ。8月14日に買収を完了したCursorは、9月末までに6.08億ドルを売上に上乗せした。データセンターの計算能力は9月末で1.7GWとなり、6月末の1.4GWから増えた。
最高財務責任者(CFO)のブレット・ジョンセン(Bret Johnsen)氏によると、計算能力の貸し出し価格は前回示した「1ワットあたり30〜50ドル」の上限をやや上回る。新たな設備投資は1年以内に回収できているという。
Starlink:加入者1,360万人、単価は上昇に転じる
消費者向けの加入者は9月末で1,360万人となり、前期から160万人増えた(前期の増加は170万人)。1契約あたりの月間売上(ARPU)は69ドルで、前期の66ドルから5%上がった。企業・政府向けの売上は前年同期比91%増。Starlinkを載せた航空機は3,800機を超えた。
通信部門の粗利率は55%だったが、ジョンセンCFOはこれに関税の還付による一時的な押し上げ約3ポイントが含まれると説明した。
Space:スターシップ初の軌道飛行、打ち上げ回数は減少
スターシップの14回目の飛行で、初めて地球を回る軌道に到達し、次世代のStarlink V3衛星26基を投入した。会社によると、Falcon 9によるStarlink打ち上げ1回の約10倍の通信容量にあたる。一方、打ち上げ回数は35回で、前期の38回、前年同期の44回を下回った。
財務:手元資金は約900億ドル、のれんは4倍に
9月末の現預金と有価証券の合計は約899億ドルで、6月末の約1,000億ドルから減った。Cursorの買収で、のれんは昨年末の118.09億ドルから484.23億ドルに膨らんだ。1〜9月の累計では、営業キャッシュフロー130.97億ドルに対し、設備投資に480.69億ドルを使っている。
Cursorの買収に伴い、買収対価(425億ドル)とは別に、社員の引き留めなどを目的とした株式報酬を約234億ドル分付与した。ジョンセン氏は電話会見で、今後約3年かけて費用に計上すると説明した。均等に割ると四半期あたり約20億ドルとなり、来期以降の営業利益(調整後EBITDAには影響しない)を押し下げる要因になる(編集部試算)。
会社の見通し:売上・計算能力・投資とも前回から引き上げ
ジョンセン氏は電話会見で、2027年1〜3月期の売上を330億〜370億ドルと見込むと述べた。中央値の350億ドルは今期の約2.4倍で、年換算では1,320億〜1,480億ドルとなる。前回掲げた「12月に年換算1,000億ドル超」を上回るペースだ。
| 項目 | 前回(4〜6月期決算時) | 今回 |
|---|---|---|
| 売上 | 12月に年換算1,000億ドル超 | 2027年1〜3月期に330億〜370億ドル |
| 年末の計算能力 | 2GW超 | 2.5〜3GW(10月末に約2.2GW) |
| 下期の設備投資 | 各四半期とも4〜6月期並み(約180億ドル) | 10〜12月期に350億〜400億ドル |
| 10〜12月期の粗利率 | — | 4〜6月期並みに低下 |
粗利率は、決算資料から計算すると7〜9月期が約62%、4〜6月期が約55%だった。ジョンセン氏は、7〜9月期にあった一時的な利益や顧客構成の影響がなくなり、10〜12月期の粗利率は4〜6月期に近い水準になるとの見通しを示した。4〜6月期並みとすれば、7ポイント前後下がる計算になる。
膨らむ投資の資金について、ジョンセン氏は営業キャッシュフローを柱に、投資適格の格付けを生かした借り入れ、取引先や顧客との提携でまかなうと説明した。新株の発行には触れなかった。
電話会見での主な発言
マスク氏:年換算売上「5,000億〜1兆ドル」、テスラとの合併は「確実とみるのは言い過ぎ」
- 売上:2027年末の年換算売上は5,000億〜1兆ドルになると述べた。直後に「CFOに心臓発作を起こさせたくない」と冗談を言っており、会社の正式な予想ではない。前回は、年間売上1兆ドルの到達を2030年と説明していた。
- 計算能力:2027年末の計算能力が13GWを下回れば「驚く」とした。前回は「5GWより10GWに近い」と述べており、引き上げた形だ。ロケットエンジン用の鋳造技術でガスタービンの翼を作り、他社より12〜18カ月早く電力を確保できるという。
- テスラとの合併:両社が株主の要請を受け、独立取締役による特別委員会を設けたと説明した。条件はまだ合意しておらず、合併を確実とみるのは「言い過ぎ」だという。マスク氏によると、テスラ側では全株式の50%の賛成が必要で、「かなり高いハードル」になる。本人は合併を「良い考え」とした。
- スターシップ:11月予定の15回目の飛行で、ブースターと船体の両方の回収に挑む。打ち上げの頻度は2027年前半に週1回、後半に週2回以上を見込む。前回は「1年後には少なくとも1日1回」と述べており、ペースの見通しは控えめになった。
- 半導体工場「TerraFab」:2027年5〜6月ごろに最初の試作チップを動かし、2028年7〜9月期ごろの量産をめざす。「大きな誤差を含む社内目標」と断った。
- 計算能力の需給:不足は長く続くとみて契約を短期にしており、更新のたびに単価が上がっているという。
グウィン・ショットウェル(Gwynne Shotwell)社長
- モバイル:Starlinkの携帯サービスの月間利用者は9月末で2,200万人と、前期比37%増えた。取得した周波数を使うサービスの開始は2028年初めになる。前回は2027年末としていた。
- Grok Bot:8月に始めたAIエージェントの有料週間利用者は、今月上旬に80万人。直近1カ月で2倍超に増えた。
- V3衛星:利用者が通信速度の向上を実感できるのは数百基に達してからで、2027年半ばの見込みだという。
※発言は電話会見の音声を基に編集部が翻訳・要約した。
今後の注目点
- テスラの決算:日本時間10月22日(木)午前6時30分から電話会見がある。合併について、テスラ側が何を語るかが焦点になる。
- ロックアップの解除:目論見書によると、7〜9月期の決算発表の2営業日後(10月22日)に、最大13億株の売却制限が解ける予定だ(関連記事)。
- スターシップ15回目の飛行:感謝祭(11月26日)の前に予定され、ブースターと船体の両方の回収に挑む(関連記事)。
- Starlinkの戦略説明:マスク氏は、通信事業で年数千億ドルの売上をめざす道筋を、別の機会に詳しく説明すると述べた。
前回の記事:SpaceX(SPCX)決算はいつ?日本時間10月21日早朝、株価10%安で迎える5つの論点




