日曜日, 5月 17, 2026

Nvidia、Amazon、そして「くら寿司」株──トランプは何を買っているのか

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トランプ大統領が短期間に極めて高頻度の株式取引を行っていたことが、米政府倫理局(OGE)への財務開示書類から明らかになった。2026年1月から3月末までの3ヶ月間に記録された売買は3,600件超にのぼる。本誌の推計では、購入額は約2億4,800万ドル、売却額は約2億300万ドルに達する。

この水準は、近年の大統領の資産運用としては異例である。

営業日ベースで換算すると、1日あたりの取引件数は約60件となる。個人投資家の運用水準を大きく上回り、執行の形態としては機関投資家の機械的な分割執行を想起させる頻度だ。

もっとも、すべての取引が本人の直接指示によるものとは限らない。開示書類には、ブローカーが裁量権を行使して注文を分割執行したことを示す記載も含まれている。ただし、現行制度の下では、こうした取引も含めてすべて開示対象となる。

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購入は「小口分散」、売却は「大口集中」

取引の規模分布を見ると、購入の約7割が1件1万5,000ドル以下の小口案件だ。これはブローカーが自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引パターンで、個々の取引がレーダーに引っかかりにくくなる副作用もある。

一方、売却では1件あたり500万ドルを超える大口取引が確認された。開示書類の末尾に記録された最大4件——バンガード配当ETF(1月12日)、そしてMeta・Amazon・Microsoft(いずれも2月10日)——はそれぞれ$500万〜$2,500万のレンジに分類されており、合計推定額は最大1億ドルに達する可能性がある。

同時に注目されるのは、2月10日における売買の同時発生である。この日には、大口の売却と同時に、Nvidia、トランスダイム、Axon、Boeing、Synopsysなど多数の銘柄への$100万〜$500万規模の大口購入も実行されている。ポートフォリオの大規模な入れ替えが短期間に実施された可能性がある。

3月下落局面で買い増し

データの中でもとりわけ目を引くのが、3月の取引パターンだ。

2月28日、米国およびイスラエルはイランに対する大規模な攻撃を開始した。この報道を受けてS&P500は3月に入り8%超下落し、月末にかけて底を形成した。ところがトランプ大統領の口座では、その下落局面で購入件数が急増している。3月単月の購入件数は1,500件を超え、1月の約4倍に達した。

購入は特定の日に集中しており、3月2日、4日、17日、23日には100件から200件規模の取引が記録されている。結果として市場はその後反発し、4月末にはS&P500が過去最高値を更新した。これらの取引が結果的に下落局面と重なっている点は注目されるが、事前に底値を正確に予測していたかどうかは、開示情報のみからは判断できない。

最大の保有ポジション:ビッグテックとETF

購入金額の上位を占めるのは、バンガードS&P500 ETFを筆頭に、Microsoft(3月19日)、Apple(3月2日)、Amazon(3月19日)、Nvidiaといった誰もが知る大型株だ。これらはいずれも$100万〜$500万のレンジで購入されており、全体の「コア」を形成している。2月10日の大口売却後、3月の底値局面で買い直すという構図と整合する。

防衛・宇宙関連ではパランティア、RTX(旧レイセオン)、ロッキード・マーティン、トランスダイムなどが名を連ね、エネルギーセクターではコノコフィリップスやエクソン・モービルが含まれる。クリプト関連ではコインベース、Block(旧スクエア)、ロビンフッドへの断続的な購入が記録されている。

異色の一件——なぜ回転寿司チェーンを100万ドル超買ったのか

ビッグテックや防衛株が並ぶリストの中に、やや異質な銘柄が紛れ込んでいた。

Kura Sushi USA(NASDAQ: KRUS)——日本でおなじみの回転寿司大手「くら寿司」の米国子会社として、カリフォルニア州アーバインに本部を置きナスダックに上場する外食チェーンだ。時価総額は約6億ドルのスモールキャップで、S&P500には含まれない。2月2日付けで$100万〜$500万のレンジでの購入が記録されており、規模だけで言えばNvidiaやBoeingと同じ「大口」扱いになる。

この企業は、トランプ関税の影響を受けた側にいた。コスト増に直面しながらも、2026年初頭には客足回復の兆しが報じられていた。第2四半期の決算は売上高$8,000万(前年比+23%)、既存店売上+8.6%と好調を記録した。もっとも、この決算数値が公表されたのは4月であり、当時は回復期待がまだ限定的だった局面とみられる。

強まる倫理上の懸念

米国の現行法は大統領に株取引を禁じていない。議会議員には2012年のSTOCK法によってインサイダー情報を利用した取引が明示的に禁じられているが、大統領はその適用対象外だ。また今回の開示書類は「いつ・何を・どの程度の規模で取引したか」を示すにとどまり、「なぜ」その判断をしたかは記載されない。

それでも、今回のデータが示すタイミングの一致は、倫理学者や市場参加者の間で議論を呼んでいる。大統領は日々、他の市場参加者が知り得ない情報——地政学的緊張の度合い、規制当局の動向、企業への政治的影響——に常時アクセスできる立場にある。そしてなによりも、その判断が市場に大きな影響を与える。

民主党議員グループは現在、現職大統領にも取引制限を適用する法案を提出しているが、共和党主導の議会を通過する見通しは低い。

*開示書類について
OGEの開示様式は取引金額を「上限・下限のレンジ」でのみ記録する。本稿で示した金額はすべて各レンジの中央値を使った推計値であり、実際の取引額とは異なる可能性がある。大統領が自ら取引を指示したのか、受託者が自律的に判断したのかは書類上では判別できない。