イラン戦が4週目に入った先週、右派YouTubeの世界では明確な変化が現れ始めている。戦争継続を支持する声よりも、懐疑・批判のナラティブの方が「数字」で優勢になりつつある。
タッカー・カールソンの続伸は際立つ。カールソンのチャンネルはこの1週間で登録者を約4万人増やし、549万人に到達。視聴回数は2350万回と、同ジャンル内でも際立った水準を記録した。この増加は、単なる話題性ではなく、視聴者の関心が特定のナラティブに集中し始めている可能性を示唆する。
FOXニュース時代の同僚であるメーガン・ケリーもこれに続く。登録者数は419万人で横ばいだったが、週間視聴回数は1300万回近くに達した。
両者に共通するのは、反戦・イスラエル批判の立場だ。先々週の放送では、国家対テロセンター長官ジョー・ケントをゲストに招き、イラン戦開戦の背景にイスラエルの圧力があったとする見方を提示している。
カールソンはこのナラティブをさらに押し進めた。「アメリカが外国と一心同体になることを誰が決めたのか」と問いかけ、「この国がかつて行った中でも最も狂気じみた決定」と断じた上で、意思決定者は「罰せられるべきだ」と責任論に踏み込んだ。
ケリーも同様に、責任の所在を追及する姿勢を強めている。バンス副大統領がネタニヤフとの電話で、開戦前にネタニヤフがトランプに売り込んだ「イラン国内での政権転覆が起きやすい」という楽観論が「過剰だった」と指摘したとAxiosが報じた内容に言及し、それを信じて開戦に踏み切った判断の背後にいた人物たちは「責任を問われなければならない」と主張した。
名指しされたのは、ネタニヤフに加え、リンジー・グラハム上院議員、マーク・ティエッソン、ジャック・キーン退役将軍、マーク・レビンら。いずれも「トランプに開戦を促した側」として位置づけられている。
さらにケリーは、「状況が悪化しているだけでなく、大統領の支持率も急落している」と指摘し、説明責任を求めた。
一方で、対照的な動きを見せたのがベン・シャピーロだ。700万人超の登録者を抱えるにもかかわらず、週間視聴回数は約620万回にとどまり、カールソンやケリーを大きく下回った。彼のコンテンツは幅広いトピックを扱っており単純比較はできないものの、フォロワー規模と比較して視聴が伸びていない点は、戦争継続を支持するナラティブが視聴者の関心を十分に引きつけられていない可能性を示している。
番組内(3/27配信)でシャピーロは、早期解決を求める世論を「メディアが作り出したADHD的発想」と批判し、「アメリカ国民には忍耐力がある」と主張。トランプ政権による追加兵力投入や強硬姿勢を「賢明な交渉戦略」と評価し、戦闘継続を後押しした。しかし、少なくともYouTube上の数字は、この立場が主流になっていないことを示している。
さらに注目すべきは、ジョー・ローガンの動きだ。圧倒的なフォロワー数を誇るローガンは、リバタリアンの論客デイブ・スミスとの対談の中で、トランプのMAGAスローガンを「最悪だ」と断じ、コア支持層との距離を取り始めた。
「そいつらの多くは、本当に奇妙で、つまらなくて、頭の悪い連中で、何かにしがみついている。一方で、真の愛国者もたくさんいるのに、みんなひとまとめにされて、バカまで受け入れなきゃいけないのか?ふざけるな」
彼の週間視聴数は845万回、登録者数は前週と同水準の2080万人だった。
責任論という「出口の地ならし」
カールソンとケリーが展開する責任論は、単なる批判にとどまらない。
ネタニヤフやグラハムら「トランプを説得した側」を強調する構図は、結果としてトランプ自身を「誤った情報に基づいて判断した存在」へと位置づける。この読み替えが成立すれば、トランプは支持基盤を大きく損なうことなく、戦争からの撤退を正当化できる。つまり、「責任者を特定せよ」というナラティブは、同時に「トランプの政治的出口」を準備する機能を持ちうる。
先述のバンスによるネタニヤフへの指摘は、政権の外側(カールソン、ケリー)と内側(バンス)が、同じ方向を向き始めていることを示している。
リスク逆転の可能性——今週の観察ポイント
もっとも、この「出口戦略」が機能するかどうかは、実際に出口が実現するかにかかっている。
現在、バンスが交渉に関与しているとされる一方で、イラン側は米国の提案を拒否し、独自案を提示している。交渉の行方は依然として不透明だ。
もし出口が見えないまま戦争が長期化すれば、「他国の判断に依存した最高司令官」という評価はトランプ自身に向けられることになる。その場合、カールソンやケリーの責任論は、逆説的にトランプ批判へと転化する可能性もある。右派YouTubeの数字が示す「非介入優勢」のトレンドは、支持基盤の変質を通じて、政治的コストへと直結しうる局面に入っている。
今週の数字(3月第4週)

カールソンの登録者増加は一時的な反応なのか、それとも構造的なシフトの始まりなのか。トランプ支持層の重心がどこへ向かうのか——その分岐点となる1週間になるかもしれない。

